『評決』


先週【ポール・ニューマン】(1925.1.26)の生誕日に、大好きな作品を久々に鑑賞しました。

落ちぶれたアル中弁護士は、、
全てを敵に回しながらも、正義を貫けるのか?

今回は、再々見になります。


[THE VERDICT](アメリカ)
◇ 1982年作品(20世紀フォックス)
監督 : シドニー・ルメット
脚本 : デビッド・マメット
原作 : バリー・リード
撮影 : アンジェイ・バートコゥイアク
音楽 : ジョニー・マンデル
出演 : ポール・ニューマン、シャーロット・ランプリング、ジャック・ウォルデン、ジェームズ・メイスン、ミロ・オシア、ジェームズ・ハンディ、ロクサーヌ・ハート、リンゼイ・クルーズ、ウェズリー・アディ、ジョー・セネカ


〈簡単なあらすじ〉


フランク・ギャルビン(ポール・ニューマン)
グラスを持つ手が震える程のアルコール依存症の中年弁護士…‥
近年の実績は3年で僅か4案件、それも全て敗訴に終わっている。。

一流大学をトップ2の実力で卒業し、法曹界では超一流のスターンズ&ハリントン法律事務所に勤務後、そのボスの娘と結婚するというエリートコースを歩んできたが、ある事件で上司のスターンズが陪審員を買収した事が発覚し、その疑惑の濡れ衣を着せられたフランクは、不起訴とはなったものの、辞職を余儀なくされ妻とも離婚する羽目となってしまった……

それ以降、彼は転落した人生を歩み、、
専ら新聞の事故死欄の記事を頼りに簡単な仕事にありつく為に、葬式回りをするのが日課で、毎晩、酒を呑んでは泥酔して、八つ当りする自堕落な日々を送っていた。


長年の仕事仲間で弁護士のミッキー(ジャック・ウォルデン)は、法廷での争いが苦手になってしまったフランクにとって、確実に示談に持ち込める有利な案件を仲介したのだが、依頼者に会おうともしていないフランクに、ミッキーからも愛想をつかされてしまう。。

ようやく我に帰り、依頼人に会う事になったフランク……


この案件は、ボストンの教会系列の聖キャサリン病院で、出産の為に入院したデボラ・アン・ケイが麻酔後、酸素マスクの中に嘔吐してしまい一時的な窒息死から脳死状態に至ってしまった、麻酔処置の医療ミス疑惑が焦点となる事件で、被害者であるデボラの姉夫婦(ジェームス・ハンディ、ロクサーヌ・ハート)が病院と医師を訴えたのであった。


ミッキーの根回しにより、ミスを指摘した州立病院の麻酔科の権威・グルーバー博士が原告側の証言台に立つと了承した事で、勝訴に持ち込める可能性が高まった。

「正義の為に」と語った、グルーバー博士の言葉に勇気が湧いたフランク、、



そして、デボラの病室を訪ねポラロイドで彼女を撮った時、多くの管に繋がれたまま微動だにしない、あまりにも無惨な彼女を見たフランクは、正義の為、そして自分の為にと一念発起する。


その後、
病院の経営者であるブロフィ司教(エドワード・ビンズ) から21万ドルの示談金を提示されるが、フランクはそれを蹴ってまで、法廷で決着をつける覚悟を決めた。



しかし、
病院側の被告弁護人は、勝つためには手段を選ばないヤリ手のコンキャノン(ジェームズ・メイスン)で、原告側が勝つ確率が高い裁判とは言え、非常にリスキーな選択であり、当裁判の判事であるホイル(ミロ・オシア)からも示談を勧められるが、フランクは一向に応じようとしなかった。。


時を同じくして、
フランクの行きつけの酒場で、部屋探しをする女性客・ローラ(シャーロット・ランプリング)と出会い、程無くして二人は結ばれるのであった……


和解したミッキーと恋人ローラの協力を得て、フランクは勇躍、法廷に立つ筈であったが……


………‥………………(★ネタバレしますm(__)m)



原告側のデボラの姉夫婦は、
裁判に持ち込む事には消極的な上、示談を蹴った事すら教えなかったフランクに対する怒りが込み上げ。。夫は、裁判所でフランクを見つけ詰め寄ると、

…‥医者も弁護士も一緒だ…‥「私に任せておけ」しくじるとこう言う…‥「ベストは尽くした、許してくれ」…‥その始末を一生負わされるのは俺達だ…‥

妹を思い、四年間ずっと看病して来た妻を不憫に思った夫からの悲痛な訴えだった。

いよいよ負けられないプレッシャーが、フランクにのし掛かる…‥……

裁判二日前、
重要な証人グルーバー博士との打ち合わせの約束だったが、時間になっても現れず、問い合わせると、彼は一週間の休暇を取り雲隠れしてしまっていた。。

コンキャノンの仕業か?

慌てたフランクは、ホイル判事の元を訪れ審理延期を要求するが、忠告したにも関わらず示談を蹴ったフランクに、助け船を出してくれる筈もなかった。。

病院側へも示談の成立を再度求めたが、当然、受け入れて貰えなかった…‥

事故当日の担当看護師・ルーニーからも全く協力を得られず…‥

八方塞がりとなり、
戦う前から負けるとローラに話すが、、彼を鼓舞する為に、冷たい言葉で突き放すローラ。。

しかし、フランクは、精神状態もズタズタになり、洗面室に一人閉じ籠る…‥
また、無様な男に戻ってしまうのか…


不安を拭えぬまま裁判は始まるが…
慌てて見つけた証人・トンプソン医師(ジョー・セネカ)の発言には影響力も無く、逆に判事の厳しい質問に医師に過失は無かったと認めてしまう失態もあり、初日は完全な敗北に終わった。。

重要な証拠を掴もうと動くが、ことごとくコンキャノン側に情報が漏洩しているが如く先回りされてしまい、裁判では不利に立たされる状況が続く……

窮地に追い込まれ焦燥するフランクだったが…‥

看護師ルーニーが、
当日の問診票の受付をした看護師を庇っていた事が分かった。
事故の真意を知っているであろう看護師は事故後、退職していた事を聞き出し、ルーニーの電話履歴から居処を突き止めたフランクは、直ぐにニューヨークへ飛んだ。。


そんな時、、
ミッキーは、ローラのカバンの中に入っていたコンキャノンからの小切手を見つけてしまった。

またも情報が漏洩しない様にと、フランクを追ってミッキーもニューヨークへ行き、ローラがコンキャノンに雇われたスパイだった事を伝えると、怒りを抑えきれず、フランクは彼女を殴ってしまった。。


フランクへの気持ちが真の愛情に変わり、悩み苦しむローラであったが……
許される訳がない裏切り行為に、修復は不可能か…‥

そして、審判の日、
原告が入院当日に受付をした元看護師のケイトリン・コステロ(リンゼイ・クルーズ)が最後の反証証人として証言台に立った。
コンキャノンは、ローラからの情報が無かった為、事前に阻止が出来なかった。被告側が焦りだす。。


ケイトリンの証言、
問診票には、食事時間の欄にデボラから聞いた通り1時間前と書いたが、当日の麻酔医・タウラー(ウェズリー・アディ)はその問診票を見ずに麻酔処置をしてしまった。
食後一時間で麻酔処置をすれば、嘔吐等の症状が現れる可能性が高く、原因はタウラー医師の完全な医療ミスであったが…‥
それを隠蔽するためにケイトリンに食事時間を「1」時間前から「9」時間前と改ざんさせたのだった。

決定的な証言だったが、、

被告弁護人コンキャノンの恫喝とも取れる、、反論があり、ケイトリンが証拠として持っていたコピーは、被告側の申告により無効となってしまった。またも、判事までが被告側に加勢する最悪の展開となる。。


危機一髪となったフランクから陪審員への最後の言葉は、、

「正義と真実をお示しください」
「この国の制度を疑い、法を疑います」
「あなた方が法です」と良心の呵責に訴えるしかなかった。。

そして
陪審員達の出した『評決』は…



原告デボラ・アン・ケイの訴えを認め、被告側の抗弁を退けた。その上、賠償額の増額まで勝ち取る大勝利だった!

後半は覚悟と自信からか?法廷で、とにかく冷静に振る舞うフランクの姿が異様な程、カッコ良く、、あたふたする被告側と完全に形勢が逆転して行く。


しかし、この勝訴にも、フランクは大袈裟に喜ぶ事もなかった。
もしも負けていたら?と我に帰り、反省していたのかも知れない。。

事務所に戻り椅子に座りデスクに足を投げ出す、疲労困憊した姿。

そこに、ローラからの電話が鳴る……
何度もコールされる中、出るか?出まいか?悩み、苦悶の表情を浮かべたまま、、

THE END

なんとも渋い終わり方。。

このフランクとローラの心の葛藤を見事に表現した一連のシークエンスに酔いしれました。

勝訴の達成感と言うより、とにかく何とか勝ってホッとしたと言う、安堵感。。

真実がねじ曲げられ、正義が正義で無くなる、裁判制度の現実に立ち向かった男の気概には素直に感動しました。


★★★★

◎○●◎○●◎○●◎○●◎○●◎○●

本作は、
法廷ミステリー劇ではありますが、、
事件自体はとても単純で、ストーリーも分かり易く直ぐにのめり込む事が出来ました。

医療ミスによる被害に、明日は我が身かと思うとリアルに怖い物語でした。。

監督の【シドニー・ルメット】と言えば、、
アル・パチーノ主演の二作『セルピコ』『狼たちの午後』が真っ先に頭に浮かびます。
本作の弁護士然り、刑事や銀行強盗等、其々がエリートになれず、アウトロー的な生き方しか出来ない、どこかマトモでない欠陥を持った男たちだが、決して嫌いになれない人間味を引きだし魅力的に描く…‥個人的にも好きな監督の一人です。


【シャーロット・ランプリング】、超個性的なクール・ビューティー、、フランクも脇が甘甘なのですが、、騙されても已む無しの魔性の女ですね…‥代表作『愛の嵐』のインパクトが強烈でした!


【ジェームズ・メイスン】は、、憎き敏腕弁護士を見事に好演され、本作でアカデミー助演男優賞にノミネートされましたが、、惜しくも受賞を逃し「無冠の名優」のまま、本作から僅か2年後の1984年に惜しまれつつ永眠されました。。


【ジャック・ウォルデン】、フランクを全力でサポートする優しく男気のある相棒役、熟年の安定感が、素晴らしかったです。

ジェームズ・メイスン氏と共演した『天国から来たチャンピオン』での、お二人のコミカルな演技が大好きでした!


そして、
何よりも【ポール・ニューマン】演じる、弁護士フランク・ギャルビンの体たらくぶりが、あまりにも滑稽で同情心が沸き、いつの間にか感情移入してしまう。。私のいつものパターンでもありますが(笑)


オープニングでピンボールを打ちながら横に置いたビールをチビチビ呑み、タバコを吸うシーンが堪りません❗
(★別のシーンで、生卵入りビールを一気飲みしてゲップする所はご愛敬ですね(笑))

当時、本作で「アカデミー主演男優賞」を獲得出来なかった事が、非常に残念でなりませんでした。

相手ありきで運も大きく作用するオスカーなので致し方ないのですが、、それほどに本作は、後期のポール・ニューマン最高の名演だったと今でも信じて疑いません。。

きっと天国のポールも、ピンボールを打ちながらビールを煽り、したり顔で頷いてくれていると思います💧💧

………‥………‥………‥………‥

最後に、
スティーブ・マックィーンの時もやりましたが、ポール・ニューマン勝手にマイベスト5❗で締めさせていただきます(笑) m(__)m

◇第1位『スティング』
◇第2位『明日に向って撃て』
◇第3位『評決』
◇第4位『暴力脱獄』
◇第5位『タワーリング・インフェルノ』

やはり、70年代の少し枯れ出した頃のポールが好きで、この一位と二位の評価はロバート・レッドフォードとは逆で『スティング』ではポール推しでした(笑)

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