『エリック・クラプトン ~ 12小節の人生』

先週の「映画の日」にハシゴで鑑賞しました。

この作品は、、鑑賞するまではいいのですが、
その感想を書く事に、未見時は少し不安がありました。。

【クィーン】の『ボヘミアン・ラプソディー』の様な華やかさと大迫力ライブの再現、ドラマティックな演出等は皆無で、、只々、暗い過去を掘り下げて行くドキュメントに、そもそも比較対象とする様なモノではないのは百も承知でしたが…‥個人的にはクィーン以上に、長い間、影響を受けて来た思い入れの強いミュージシャンだったので、、出来れば悪い事は書きたくないのが本音でした。。

が、☝

これまでの人間【エリック・クラプトン】に対し、モヤモヤしていたモノが一気に晴れる様な素晴らしい作品でした!(ファン目線でm(__)m)

その上、上映館数が少ないとは言え、満席だったのは、嬉しかったです👍

[ERIC CLAPTON/ LIFE IN 12BARS]
◇ 2017年作品
監督 : リリ・フィニー・ザナック
製作  : ジョン・バトセック
音楽 : グスター・ボ・サンタオラヤ
編集 : クリス・キング、ポール・モナハン
出演 : エリック・クラプトン
ゲスト出演 : B.B・キング、ジョージ・ハリスン、パティ・ボイド、デュアン・オールマン、ジミ・ヘンドリックス、ローリング・ストーンズ、チャック・ベリー 他


1945年、英国・リプリーに生まれた【エリック・クラプトン】
実母は16歳で彼を出産するが、祖父母に預けカナダへ移住してしまった為、幼少時から祖父母を両親と思い込み育てられる。、
その後、9歳の時に母親が帰国した時に再会するが、母と呼ぶのを拒絶されたエリックは、それ以降、母に対する強いコンプレックスに苛まれて行く。

少年期よりギターを始め、黒人音楽であるブルースに傾注すると、みるみる上達して行き、若き天才ギタリストとして周囲からも噂となり、彼のキャリアがスタートする。

最初に加入したグループ【ヤードバーズ】では、その風貌と突出したテクニックから、エリックが常に注目の的となるが、ポップス路線に変化して行く音楽性に不満を持ち脱退すると、【ジョン・メイオール】と出会い、ブルースを基調とした彼のバンドに加入するが、その後直ぐに大転機が訪れる。。

1960年代・後に伝説のグループとなる【クリーム】の結成だった。ベースの【ジャック・ブルース】ドラムの【ジンジャー・ベイカー】との三人組は、ブルース、ジャズ、R&B等をベースにした三人の激しいインプロビゼーションの応酬が魅力となりスーパーバンドにのしあがって行った。しかし、このグループもメンバー間の不仲で長続きはせず約二年で解散となる。

クリームの活動中に知り合った【ビートルズ】の【ジョージ・ハリスン】とは名曲『ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス』のレコーディングを機に、急速に関係が密になるが、、同時に彼の妻【パティ・ボイド】との運命の出会いが、エリック自身を苦しめていく…‥

富と名声は勝ち得たが、、
パティへの恋は叶わず、身も心も壊れて行く。

…‥………‥…‥…‥…‥


(この先ネタバレありますm(__)m)⬇⬇

タイトルにある「12小節」とは、【エリック・クラプトン】(以下、EC)が敬愛してきたブルースという音楽ジャンルのスリーコードで進行する基本的パターンの小節数の事ですが、、このタイトルを聞いた時、イチャモンを、つける訳ではありませんが(笑)、「あなたの人生は12小節位で語りきれますか?」と疑問を感じてしまった程、ECには沢山のエピソードがあります。。

勿論60sのロック・ミュージシャンのステータスの如く、ドラッグにハマりその筋の中心に居た様な人物だった為(苦)、よくも、彼はこの「セルフ暴露本」みたいな作品の製作を了承したものだと正直思っていました。。

若き頃から、その卓越したギタープレイ故に偶発的に「神」とまで称されてしまうが。。
そのプレッシャーが重くのし掛かり、、やがてドラッグにのめり込んで行き、弱い自分を誤魔化し忘れようとしていった。。
そして、ジョージ・ハリスンの妻と分かりながらも愛情を抑えられなかったパティとの失恋が大きな衝撃となり、70年代以降は、アルコールとドラッグにまみれた自暴自棄な生活に溺れて行く。

私が何度も観て来た来日コンサート等も、毎回、泥酔~酩酊状態での演奏だったのかと思うと少し残念ではあるが、、個人的には一番影響を受け、一番ECらしいと思える、音楽的に大好きだった「レイドバック」時代を否定する事は私には出来ません…‥
私も若い時分から、ロックは大酒アオッて演るモノ!と悪い先輩達から教わって来ましたが、ECはその限度を超え過ぎていたと言う事が、この映画で解明され…ちょっと複雑でした。。(苦笑)

その後、
ジョージ・ハリスンとパティ・ボイドが正式に離婚するとECとパティは1979年にようやく結ばれるのですが、、ECのアルコール・ドラッグへの依存や浮気等による、いさかいが絶えず、二人は破局を迎えます。。あれだけ恋い焦がれたパティとの破局には流石にショックでした。。

それから時を経て、
1991年、大変な出来事が彼を襲います…‥
イタリア人女優、ロリ・デル・サントとの子供で、まだ四歳だった最愛の息子コナーを不慮の事故で亡くしてしまうのでした。。

自堕落な生活を繰り返して来たECは、大切な愛息を失い、遂に彼は本当に改心して行きます。

その後の彼は、、
アルコール、ドラッグ依存症患者の治療センターの役員を勤めたり、自ら施設へ寄付や募金を募る主旨の「クロスロード・ギターフェスティバル」の開催等の慈善事業を続けています。

…‥…‥…‥…‥…‥

彼は、神様なんかではなく、強く痛みを感じる生身の人間です。時にプレイに関して、色々と揶揄されたりもしますが…‥調子が悪ければミスるし、気分が乗らなければ投げやりになり、怒れば攻撃的に吠える。。 だからこそ気持ちがストレートに伝わる人間的過ぎる彼のギターに、そして何より、そのギターを弾いている時の立ち姿に、私は心酔し敬愛しました。。

そして、彼の為にどれだけの友人達が救いの手を差しのべて来ただろうか?
多くの愛に育まれて来た【エリック・クラプトン】は「孤高のギタリスト」ではなかった。

70年代に泥酔状態のステージでぶちまけた「人種差別発言」等、紆余曲折ありながらも、ラストでは、ECが子供の頃からリスペクトして来た一人である、ブルースの帝王・BBキングが、逆に彼を讃えるスピーチをするシーン、
ECは黒人音楽であったブルースを世界に知らしめた男として、古豪ブルースマン達ににとっても彼の偉業をリスペクトしていた事が伺えます。

いい音楽は人種の壁を超えて、全ての人のモノであると言う事に、深く感動しました( ;∀;)

とにかく、感情移入し過ぎて、後半からラストまで、涙が止まらずでした💧💧

本作は、やはりECファンには、かなり響く作品であると思いますが、、あまり知らない方に評価されるのは難しいかも知れません。

しかし、音楽界に多大な影響を与えたレジェンドが、もがき苦しみ続けた生き様に少しでも興味がある方には是非観ていただきたい作品です。。m(__)m

★★★☆

♪🎵♪🎵♪🎵♪🎵♪🎵♪


クリーム時代のハードロックのルーツとも言われた代表曲『サンシャイン・ラブ』『ホワイトルーム』や、ギターの名演として今も尚、語り継がれる『クロスロード』、、ブラインド・フェイス時代の胸に沁みるバラード『プレゼンス・オブ・ザ・ロード』、、パティへの片思いの心情を綴ったデレク&ザ・ドミノス時代の『いとしのレイラ』、パティとの幸せに満ちたラブソング『ワンダフル・トゥナイト』、そして、亡くなった愛息に捧げた『ティアーズ・イン・ヘブン』等々、、名曲は数えきれない程ですが、、

今回も「天の邪鬼」企画として(笑)、彼の作品の中から、本作には挿入されていなかった曲を勝手にセレクトしました。。

少しでも興味を抱いていただき、聴いていただければ幸いですm(__)m

◇『POLITICIAN』by 「Live Cream Vol. 2」(1968)より
邦題『政治家』…‥とにかくECの絶好調フレーズが随所に聴けるベストテイク!まだハムバッキング系のギターでムニムニグイグイ(?)言わしてる頃で、三人のインタープレイも聞き処満載です!

◇『WHY DOES LOVE GOT TO BE SO SAD』by 「Derek & The Dominos in Concert」(1970)より
邦題『恋は悲しきもの』⬆と同様にライブ盤ベストテイク!テーマの疾走感からサビでのメロウ感が気持ちいい❗個人的にも影響を受けた曲です👍長い曲でスミマセンm(__)m

◇『CAN´T FIND MY WAY HOME』by 「EC Was Here」(1975)より
【ブラインド・フェイス】時代の作品ですが、ソロライブでのテイクです。流麗なアルペジオに優しく語りかける様なボーカルが素晴らしい名曲です👍

◇『BEAUTIFUL THING』by 「No Reason To Cry」(1976)より 
【ザ・バンド】のメンバーも参加したアルバムより一曲☝とにかくこのゆったりマッタリとした空気感を堪能して欲しいGOOD MUSIC👍

◇『LAY DOWN SALLY』by 「SLOWHAND」(1977)より
「レイドバック」期のECでは有名な曲!カントリー・ツービートの軽快なリズムが心地よい👍

◇『HOLD ON I´M COMING』by 「Riding with The King」(2000)より
R&B最強のデュオ【サム&デイブ】のヒット曲を【BB.キング】と共演した作品!二人のバトルに興奮しました👍

◇『DON´T LET ME BE LONELEY TONIGHT』by 「Reptile」(2001)より
【ジェームス・テイラー】の作品、『アイズレー・ブラザース』『オリータ・アダムス』『マイケル・ブレッカー』etc. 数多くのミュージシャンにカバーされた名曲!を、ECが熱く歌い、泣きのギターも健在です👍

後期のECは、年齢を重ねながらも確実にレイドバック期よりリフレッシュされた様な、パワフルで粋の良い演奏をしています!

他にも、沢山ありますが、、
キリが無いので今回はココマデ✋m(__)m

……‥…‥…‥…‥

最後に余談☝

最近ロックに首ったけ(古)の息子もこの映画を、観に行きたかった様なのですが…‥
スマンこの映画は一人で観させてくれ、、
きっと涙が止まらず親の威厳を保てないだろうから( ;∀;)と心で謝り一人で鑑賞しに行きました…‥
その代わりに帰ってから、ECばりのブルースフレーズを二つ三つ教えてあげました …‥f(^_^;

以上ですm(__)m