「をちこち」

意味は遠くも近くも

和菓子の名前にも使われている

をちこちが冒頭にくる和歌

三十六歌仙の一人

猿丸大夫のこの歌がある

古今和歌集 29


おちこちの たづきもしらぬ 山中に

おぼつかなくも 呼子鳥かな


恋の歌と思えばこんな意味かも・・・

あちらこちらと

恋に迷ってしまった不安な私を

貴方は鳥のさえずりのように

呼んでくれますか?

かなり飛躍した解釈ですが

恋しい人を思っての歌であれば

私を呼んで欲しいな~

という気持ちは理解できますね



猿丸大夫は百人一首のこの歌が有名


奥山に もみぢ踏み分け 鳴く鹿の

声聞く時ぞ 秋はかなしき


もしこの歌が後に詠まれたとしたら・・・

先程思って歌にした人には

敢えなく撃沈?ですよね



さて現代の日本語には

「を」から始まる名詞はない

すべて「お」に置き換えられる

乙女「をとめ」がその一例

ところが

「をちこち」の「を」を「お」と

間違って使われることが

鎌倉時代にはあったそうだ




猿丸大夫の「をちこち~」

ここでは

「お」の変体仮名の「於」が使われているので

間違った表記と言える

間違いはその後

江戸時代には更に

増えていったそうな








をちこちの夢を見る頃何処へか

待ちて詠めるは憂ふ心よ



貴方に送ります