揺れ動く日本語「~まみれ(2)」(受難表現の前向き用法) | MARK AKIYAMAのブログ

揺れ動く日本語「~まみれ(2)」(受難表現の前向き用法)

 

 金田一春彦の動詞分類にあてはめると、「まみれる」は第3種「瞬間動詞型」に属すると思われる。まみれた後の状態の継続、つまり

「まみれている」の形の方が多用され、「まみれる」はもっぱら連体形として使われることが多い。

 

どの辞書でも、「(血、汗、泥、ほこりなど)汚いもの物が一面に付く」(*)というように、体に何か歓迎せざるものが付着するイメージである。名詞化された「まみれ」は付着した後の状態を表す。

 

 ×往年の名選手のお宅はトロフィーまみれだった。 

というような言い方はしないはずだった。

 

 ところが近年、冒頭の「ねこまみれ」をはじめとして「京都まみれ」(書籍)、「チョコまみれ」のような前向きな使い方が定着しだした。

何かを歓迎すると同時に、人体に直接何かが付着するわけではないところが新しい。「ねこまみれ」は精神的な満足感のニュアンスだが、「チョコまみれ」は物理的付着のまま被害ととらえずに商品の付加価値としていることが新しい。