男は昔からある夢を見ていた。
モノクロの世界だが、はっきりと分かる。
雨の中、透き通るような白い肌で、黒く艶やかな長い髪の女が、涼やかな笑みを浮かべ、こちらを見下ろしている姿を。
その夢を見始めた頃はその女が恐ろしくて恐ろしくてたまらなかった。
しかし、だんだん見慣れ始めるとその女がとても美しいことに気づき、次第にこの女は自分の運命の女性ではないかと思いはじめるようになった。
男は女を捜しはじめた。
あの女は実在していて、今も自分を待っていてくれるに違いないと信じて。
女は飢えていた。
何に飢えているのかは分からなかった。
ただ、漠然と自分には何かが足りないと思っていた。
その『何か』を埋めるため、女は男を求めた。
男が『何か』を埋めることはなかったが、男といるときは足りないことを忘れられたのだ。
また、女は雨が好きだった。
雨に打たれていると、その満たされない『何か』を考えなくてよかったからだ。
ある日、女は当時付き合ってた男と喧嘩した。
きっかけは些細なことだったが、その日で彼とは永遠に別れてしまった。
悲しかったが、女はその日、足りない『何か』を見つけられたような気がした。
奇しくもその日は雨だった。
その日は男にとって運命的な日になった。
朝から、不景気だの、連続通り魔事件だの、アザラシがまた川にやってきただの、いつも通りのニュースがやっていて、いつもどおりの日常を男は今日も送ろうとしていたが、その日常は不意に終わった。
いや、男にとってはこれから自分が送るべき日常を見つけたのかもしれない。
女を見つけたのだ。
男は彼女の元へ走った。
待たせてごめん。これからはずっと一緒だと。
女は言った。
あら、ようやく見つけたわと。
男は思った。
やはり彼女も僕のことを探していたんだと。
二人は言った。
「\$#%&>L`{#%%'&(>PK`R%&'(=)(%&$~=(('%&'R=)'J」
えっ………?
男がそう思った瞬間、目の前では雨が降っていた。
紅い、紅い雨が。
薄れゆく意識の中、男は思った。
ああ…やはり綺麗だな…と。
…10月××日未明、○○さんが血まみれで路上に倒れているのを、付近住民が通報した。警察は手口から一連の連続殺人事件だとし、最初の被害者である△△さんの交際相手であった□□さんの行方を今も追っている。続いては…
