寝られん!

緊張か、興奮か。

眠いのに寝られない。



午前中、入院中の男性から電話。

タオルがなくなったので、持ってきて欲しいと。

その声には元気がなく、声の響きを聴いた瞬間、体調に異変でも?と身構えてしまった。

(とは言え私は布団の中だったのだが)

昨日預かって帰った洗濯物が乾いたので、午後、少し遅くなったが持って行く。



午前中に電話をもらった時と、明らかに様子が違う。

三日ほど前から微熱が続いているんだが、平熱に戻り次第、自宅に戻ると言って聞かない。

今日の主治医の回診時、医師から「家に戻れる自信があれば、退院してもいいですよ」と言われたとのこと。

人の意を解さない、無遠慮な言い方をする女医なのだが、その言葉にカチンときたらしい。


熱さえ下がれば、タクシーを呼んで帰ると言う。

私は「とんでもない!」と思ったが、ここでまた私が男性の意に反することを声高に言えば、更に意固地になり、大変な展開になるのは目に見えている。


よくよく男性の様子を観察しながら、一言一句に耳を傾ける。

意地を張り通したい想いは伝わってくるが、その声や目つきには悔しさが滲んでいるだけで、力強さがない。

何より、その様に語る間、体をずっとベッドに横たえたままだ。

身体を起こすことすら、辛いだろうに。

ただただ意地が、悔しさが、男性をしてあらぬ方向に思考を傾けているように見える。


この状態では、私が出来ることなどない。

まして、男性の考えを「無謀だ」と斬って捨てるなどは以ての外。

苦肉の策として、即日退院だけはしないで欲しいと、退院するにしても、準備のために一日や二日の猶予はほしいとお願いし、可能な限りの時間稼ぎを図るぐらいだ。


一晩おいて、少しでも頭を冷やしてくれてればと思う。

また、その様な怒りに人身をまかせることは、弱り切った体に大きな負担となって返ってくるだろう。

症状がまた悪化するのでは。

心配、不安が私の心をよぎった。




男性のことは男性に任せるとして、私が一喜一憂しないことが一番大切だ。

状況がどの様になろうとも、男性をどこまでも信じ、微塵もぶれることなく支え抜くことが大切。


事は男性の一存にかかっているようではあるが、その実は、それでも私が微動だにしないでいられるかどうかが試されているのだ。

私の不動の心が、必ず男性の心に投影されるだろう。

私は、その事を信じるのみだ。


突発的な混乱に、心を惑わされてなるものか。

これは人事ではない。

極めて私の問題である。