ここ数日は、本当によく寝られる。
午前六時くらいに、一度、目が覚めて朝食をとるのがパターンになってきている。
そして、またお昼ぐらいまで二度寝。
今までは、この二度寝の眠りが浅く、質が悪かった。
ハッキリ言って、辛い眠りだった。
それがここ二週間は、二度寝でも深い眠りがとれるようになってきている。
気持ちが良いのだ。
病状が、いい方向に向かっているのだと捉えよう。
今日は、先日、面会をキャンセルされた栗さんと会ってきた。
私一人で出向くのではなく、いつも車を出してくれる、近所の70代男性と一緒だ。
たぶん、この方と二人で出向いた方が、栗さんも私に会いやすかろうという思いもあった。
一時間ほどの面会で、色々と思う所はあった。
どうも腹の中で、私への怒りがおさまっていない様子であった。
誰にだって、傲慢なところはあると思うんです…
あなたは上から私を見下しています…
誰にだって、臆病なところはありますよ…
感情を、思うがままに表出してもらうのも、大切なことである。
「また言ってらぁ」とは思ったが、黙って、顔色を変えずにうかがった。
彼女は彼女で、言いたいことは言っているのだが、どうも、決定的に私との関係を悪化させたいとは思っていない。
逆に、私との関係が完全に絶たれるような、最悪な展開だけは避けたいという感情も働いているようだった。
そうした言い分をうかがい、感情の動きを拝見した上で、私からはこんなお話をした。
よく自我と言いますが、自我のあり方には、自分の利益に執着する「小我」と、周囲への利益に貢献することで自分の幸せも達成させようとする「大我」の二種類があるのですが、聴いたことがありますか?
この「小我」というものには、臆病の心が基本にあるんです。
自分が、自分の利益のみに執着していることさえ、人には知られたくない。
そのように周囲に悟られることさえも怖い。
そうした臆病の心に、支配されてるのが、「小我」のあり方です。
対して「大我」の基本は、勇気です。
高い志を達成させるためには、ちっぽけな自分、「小我」をも認め、その殻を自ら破り、そうやって更なる力を得ようとさえする。
「大我」の人は、「小我」である自分のあり方さえ、力に変えます。
端的に言わせていただくと、あなたは、自分のワガママに振り回され、その上、自分の臆病ささえ認めたくない、人からも「あなたは臆病な人だ」と指摘されるのも我慢ならない「小我」の人です。
「小我」は、自分を幸せにしないばかりか、周囲をも不幸せにします。
私はあなたに「小我」の殻を破っていただき、「大我」に生きる女性になっていただきたいと思っています。
また、それができる方だと信じています。
それがあなたのためであるし、地域社会のためにもなる道だと、私は信じています。
しかし、あのご家庭の中に、あの状態で留まっている限りは、その挑戦は非常に難しいと思っていました。
今まで幾度も、あなたが自分の「小我」に気づき、「小我」の殻を破るようにと働きかけをしてきましたが、全て徒労に終わりました。
残念なことに、あなたの中には、そうした私の働きかけの記憶さえ、残っていません。
ですから、そうした挑戦をしていただくためには、先ずは、自分の病気と上手につきあう方法を身につけていただく以外にないと思ってきました。
その為に、私も、あなたの入院には、大いに賛成したんです。
そして今、その願いが叶って、あなたは病院という、管理され、安定した環境にいらっしゃいます。
自分と向き合うチャンスを、手に入れたのです。
ぜひこの機会に、自分の病気とチャンとお付き合いできるようになり、また、「小我」の殻をも破っていただきたい。
「大我」に生きる女性になっていただきたい。
その挑戦を行ってください。
さて、あなたは私に不信感を抱いていらっしゃいます。
あなたが私に、そのような不信感を抱くのは当然だと思います。
また私は、このような展開になるだろうことも覚悟して、先日は厳しいことも言わせていただきました。
しかし、不信感を抱いている状態で私と面会をしても、あなたにとっては辛いだけでしょう。
あなたの病気療養に、支障さえきたすかもしれません。
私にも、この状態で面会するのは、あまり意味があるとは思えません。
ですので、しばらく面会は控えさせていただきます。
先ずはしっかりとご自分で考えていただいて、その上で、また私との面会をしたいと思うようになったら、連絡を下さい。
それまで私は、面会にはまいりません。
他にも語ったことはある。
言葉を厳選し、表現に細心の注意を払い、今言うべきことだけを抽出して、伝えたいことのエッセンスだけを語った。
余計なことは、言葉、表現、表情、仕草に至るまで、一切シャットアウトして。
今日の面会では、たぶん、こうしたことを言い渡すことになるだろうと覚悟して、病院を訪問した。
そして、その予想は的中し、予定していたことを申し渡して、帰ってきた。
思いの外、物わかりの良さそうな面も見えたので、話しに一つだけ大切なことも付け加えてきた。
帰る道すがら、同行してくださった70代の男性にお願いをした。
私はしばらく面会を控えますが、それにしても、閉鎖病棟での生活は息が詰まるものなのです。
もしあなたさえよろしければ、ぜひ彼女の面会に行ってあげていただけませんか。
どうも、彼女を相手に自分一人では手に余るとお考えのようだ。
行っていただけそうにはない。