ある事件を発端として、彼女は、自分の中の7人の人格と、全ての記憶、その時の感触、印象などなど、全てを共有することになったんです!
それは前触れもなく、唐突に訪れました。
恐怖であるのは当然です。
あまりに過酷な経験から逃れる手段として、自分の中に別人格をたて、生贄として捧げてきた、その大きすぎる代償なのですから。
そして、それらを全て知ることは、裕子に絶望しかもたらしませんでした。
なぜなら、共有を果たしてしまった瞬間に、いかに自分が周囲を、自分に都合よく利用し、陵辱し続けてきたか、その全てを知ってしまったからです。
高橋裕子は種々な事情から、自分のアパートを離れ、彼氏の自宅に住居を移動していました。
その彼氏をもあざむき、利用し倒してきた自分が許せませんでした。
大泣きに泣きながら、ひたすら彼氏に謝ったそうです。
それでも彼氏は裕子に「この家にずっと居ろ!」と言ってくれたそうです。
その言葉に、裕子はまた泣きました。
と同時に、その言葉に甘える権利は自分にないとも思いました。
彼女は真剣に死を覚悟しました。
そんな大事件が起こった翌朝、裕子から私の携帯に電話がありました。
パニックを起こしている、と。
来て欲しい、と。
彼氏も「そうしてもらえ」と言っている、と。
即、彼の家に急いだのですが、そこで見聞きした現実を、どのように表現したものかと、私はいまだに悩んでいます。
これを素直に言葉を連ねて、表現することはできる。
しかし、決して真実を伝えることにはならない。
これを読むほとんどの人が、何を夢物語を書いているのだ!と思うだろう。
ただのファンタジー、もしくは、このブログを綴っている私が妄想癖を持つ変人と思うだけだろう。(ただでさえ、そうなのに!)
そう思われてしかたありません。
なので、まだ書かないでおきたいと思います。
しかし、記憶や意識の共有を果たした裕子の姿は、追々、書いていきたいと思っています。
今日も朝から、高橋裕子と一緒に居ました。
今日は、彼女の方から私の住まいまで来てくれました。
これはまた、彼氏が望んだことでもあります。
裕子の彼氏にすれば、私の側にいてくれれば安心して仕事に励めるのですから。
もちろん、私の方から彼氏に「今、裕子ちゃんと落ち合いました」、また「何時のバスで帰宅させます」と、逐次、連絡を入れています。
高橋裕子は、今までの欺瞞(ぎまん)に満ちた自身の姿を心から悔い、二度と周囲を振り回したくないという気持ちで一杯なのです。
なので、私と落ち合えば私から彼氏へ、彼氏宅に帰宅すれば、彼氏から私へと、一々に連絡を取らずにはいられないのです。
しかし、彼女をそういう行動に駆り立てている心理は、彼女に更なる贖罪の行動を求めていました。
それは本当にとんでもない決心でした。
彼女は、来月の23日に、首を吊って死ぬ覚悟を決めていました。
それを教えてくれたのはとある存在なのですが、ここでは触れません。
また23日である理由もあるのですが、重要ではないので触れません。
たまたま裕子にとっては、人生を断ち切るのにはキリのいい日程だったというだけです。
それを打ち明けた直後、裕子は言いました。
チェ!
言っちゃったか...
私は、彼女のこの決心を覆すことは至難の業だと知っています。
今までであれば、その本心を推し量り、言葉巧みに彼女の心理を誘導することも(その実は、私の誘導が成功したかのように見せかけられていただけなのですが)できました。
又は、周囲の注意をひきたいばかりの狂言と捉えることもできました。
しかし、今度ばかりは違います。
全てを知り、ここをスタートラインに新たに生まれ変わって生きることもできるチャンスなんです。
しかし彼女は、ここをスタートラインではなく、デッドラインにすることを決心してしまっていました。
私の中に、そんな高橋裕子にかけられる適切な言葉が見当たりませんでした。
彼女の事を知っていればこそ、ただ「死ぬな」では、その決心を覆すことはないと分かっていました。
なので、裕子の中のサチの部分が持っていた願望を持ち出しました。
たわいもない内容でしたが、私が持ち出せる唯一の説得材料でした。
これでダメなら、日程も分かっていることだし、実力行使か...
とも思っていましたが、それは決してうまくいかないであろう事も分かってしまっていました。
なので、賭けでした。
オイ!
サチをディズニーランドに連れて行けなくてもいいのか?
サチとオレは約束してるんだ。
オレは、サチを幸せにしなけりゃならないんだ。
そんな彼女の夢を、お前は摘んでしまうのか?
たったそれだけの、たわいもないことです。
7才の少女の願望を、そのまま、裕子にぶつけました。
今の裕子にとっては、それが今や自分の願望でもあるからです。
直後、彼女の目が、自身の内面を向いていることを語っていました。
彼ら、彼女らと、一人ずつ話をし、意思を確認しているようです。
中には、自死することを支持する人格(という今や自分)もいました。
しかし、協議の結果打ち出された総合的な結論は、自死しない!というものでした。
とりあえず、目先の問題を一つずつ片付けています。
基本は今までと変わりませんが、まぁこれからもこんなに簡単であるわけない!
これからがますます本番です!
きっと大変なことがあるに違いありません。
一点、確実に実現することになるであろう未来を予見すると...
私はそんなに遠くない未来において、高橋裕子と同じような(それでも裕子ほど苛烈でないレベルの)人間を二人、同時に抱え込むことになります。
いつ、誰がは、問題ではありません。
これは私が選択した結果であり、必然です。
明日も高橋裕子は我が家に来ます。