偶然、パッフベルの「カノン」が流れてきて

「タンゴ・冬の終わりに」を思い出した。

作・清水邦夫 演出・蜷川幸雄

「カノン」が、メインで使われていた音楽だったから。


蜷川さんと、たくさんの舞台を御一緒させて頂いて。

いつも、これでもか。と、私を叱ってくださって

(後にも先にも、私の人生、これほどの人は現れないだろう w)




でも、一番忘れられない舞台は、これかもしれない。


この舞台で、蜷川さんが私に下さった役は、信子。

主役とは、ほど遠い役。

北国の壊れそうな映画館で働いてる

弱視で、口下手で、暗い 掃除係の女の子。

「奥さん。北方から、電話です。」とかセリフは全部で8個くらい。



この舞台の直前に頂いていた役が、

作・井上ひさし 「天保12年のシェイクスピア」の

お冬(オフィーリア)と浮舟太夫(ジュリエット)だった。

英語の新聞に、彼女のオフィーリアで全編 見てみたい

とまで、褒められてた。



だから、劇場のプロデユーサーの方が心配をして

こればかりは、上手に言ってあげるから断った方がいい。って。

野田さんの芝居で相手役をやってた、堤真一は、打ち上げの時

「とんちゃん。頼むから、もうこんな役で出るの やめてよお」と

泣きそうな顔してた。(堤が、この芝居では主役だった)

姐さんも、引き受けると決めるまで、もの凄い葛藤があったのは

言うまでもなく。


蜷川さんの稽古場は、いつも 本番に向かっての衣装をつけて

行われるのだけれど。

姐さんの衣装は、チェンジ チェンジ で

どんどん 悲惨な風体になりw

最終的には、黒長靴・モンペ・瓶底メガネ・三つ編み・すっぴん・ドテラ。

:*:・( ̄∀ ̄)・:*: LOVELY~


「毬谷友子だって、わからなくしたいんだっ!!」とか、衣装さんに言ってた。


実際、公演中も、今だから言うけど、辛かったよ。

少ないセリフと少ない出番で、何を残せるか。

そんなことばっかり 考えてた。



でもね。     


。。。


今は、なぜ蜷川さんが私に、その役を振ったか 少し解るように なってきたよ。


。。。


「そんなことばっかり考える毬谷友子」ていう女優を、変えたかったんだね。

私の長くなるであろう女優人生の、先の先まで見越して、

必要なことだったんだね。


感謝してます。

本当に。


今朝、新聞で、肺炎を患っていることを知り、

思い出は、たくさん ありすぎるのだけれど、

書きました。



私が結婚する時は、バージンロードを一緒に歩いてくれる って

言ってくれたんだからね。(随分 前の話しだけどw)

約束、忘れたら だめだよ。ヘ(゚∀゚*)ノ