※このお話はドラマ「ランチの女王」の登場人物による創作です。この先をお読みになる方はあらかじめご了承ください。











「あぁ、お腹いっぱい!もう食べられない〜」と背もたれに身体を投げ出すなつみ。


「そりゃそうだよ、なつみさん。みんなの倍ぐらい食べたんじゃない?」純三郎は苦笑いしながら片付けをする。「だって、お肉もお魚もぜーんぶ美味しかったんだもん。大!満!足!です!」となつみは終始にこにこしている。


本当に可愛いなぁ。自然とにやける純三郎に、「ねぇねぇ純兄。顔、デレデレだよ。」と光四郎がツッコむ。「ばっ!ばかやろう!そんなことないから!」机を拭く純三郎の動きが無駄に速くなる。


「お前たち、そんな油売ってないできちんと片付けしてくれよ。そんなんじゃいつまで経っても寝れないぞ。」バーベキューコンロの片付けをしている勇二郎が喝を入れる。「ほら、麦田さんもいい加減手伝ってくれよ。」と手を止め、なつみの方をちらっと見る。なつみは「はい!たくさん食べたことだし、片付けも頑張ります!」と、バッとソファから立ち上がり、勇二郎に向かって敬礼をする。


勇二郎は一瞬フリーズしたが、「分かったんならいい。早くやってくれ。」とささっとコンロの方に向き直ったかと思うと、ご機嫌に床掃除を始めたなつみをちらちらと横目で何度も確認している。


「あーあ、うちのお兄様たちはどうしてあんなに初心(うぶ)なのかね。戦いにくいったらありゃしないよ、まったく。」光四郎は一連の流れを見てため息をつく。


後ろの方ではトマトとミノルが小声で「パーテーション動かせるからひとつに繋げて一緒に寝ようよ。」「え、そんなの…ここでですか?」「いいじゃん、うちではいつも一緒に寝てるじゃん。」「なんだか恥ずかしいですよ…」などとこそこそ話し合っている。






気付けばすべての掃除が終わり、時間は22時。特にやることはなくこの後は自由時間となっているが、出発が早朝だったため全員が眠気を感じていた。それを感じた勇二郎が「みんな朝から疲れただろう。そして、明日は帰ったら次の日の仕込みが待っている。各自自由時間だが、心身ともに休めることも忘れるなよ。それでは解散!」と号令をかける。


寝る場所は話し合いの結果、リビングを囲むようにして作られた6つの区画の、入り口から見て右側の奥から勇二郎、純三郎、光四郎、リビングを挟んだ左側の奥からミノル、トマト、なつみの順となった。


誰がなつみの近くで寝るか3兄弟間での牽制(けんせい)合戦が始まり揉めに揉めたため、関係のないミノルとトマトがなつみの近くに割り振られる結果となった。ちなみにトマトとミノルの区画はひとつの大きな部屋になるようにパーテーションが配置され直している。「恋人だから良いでしょ?」とトマトは開き直っている。


「なっちゃん、遠いよー。リビングが無駄に広くて、寝息どころか話し声さえも聞こえないかも。なっちゃん、俺のところで一緒に寝ない?」と光四郎がイケメンスマイルで優しく声をかけるも、「寝ません!光四郎くんこそ、こっち来ないでね。来たら…」なつみの目がスッと細くなり、靴を脱ぎ出す仕草をする。光四郎は慌ててこくこくと頷く。それを見ていた後の2人も、昔もらったキックの痛みを思い出し苦い顔をする。


じゃぁ電気消すぞー、と勇二郎の声が聞こえて室内の電気がふっと暗くなると、部屋に差し込む月明かりがうすぼんやりと部屋を照らしてくれる。それ以外には、各パーテーション下部に設置されているON/OFF式の小さな豆電球の灯りで足元を照らせる仕組みになっている。


なつみは今まではしゃいだ分疲労も感じており、床につくと今日の楽しかった記憶を反芻(はんすう)する間もなくすっと眠ってしまった。