※この話はドラマ「ランチの女王」の登場人物による創作です。この先をお読みになる方はあらかじめご了承ください。











走り出したなつみの後ろ姿を勇二郎、純三郎、光四郎の全員が見つめる。


「やっぱり可愛いね、なっちゃん。」と光四郎がぽつりと呟くと、小さくなっていく後ろ姿を見つめながら「そうだな。」と勇二郎が微笑む。


純三郎はバッと勇二郎を振り返り、「やっぱり勇兄、なつみさんのこと諦めてないんじゃん。」と拗ねたような表情になる。


「そうだな。諦められない。…やっぱり好きだ。」勇二郎は光四郎を見た後、純三郎をじっと見つめ、はっきりと言った。




「俺はやっぱり麦田さんが好きだ。」





室内の静寂とは対照的に、外ではなつみとトマトの楽しそうな声が聞こえてくる。



「分かっていたけど、改めて直接言われると…」純三郎はうつむく。勇二郎は光四郎に向き直り、「お前は結局どうなんだ?俺と純は昔から不器用で訳ありの恋ばかり、お前と健一郎は恋多き色男。純が本気なのは分かるけどお前の気持ちはいまいち掴めない。これも良い機会だ、聞いておきたい。」




「お前は麦田さんのこと…本気なのか?




純三郎も顔をあげ光四郎を見つめる。しばらくの沈黙ののち、微動だにしなかった光四郎がアイスから口を離して2人に向かってニコッと笑う。


「好きだよ。2人には悪いけど、今回は本気かな。っていうか、こんなに人を好きになったのは生まれて初めてかも?」いつも通りの軽い口調だが目つきは真剣だ。


「そうか。そうだよな。…それじゃあ、兄弟で真剣な恋のバトルでも始めるか!俺以外の男を選ぶとしたらお前たちのどっちかが良い!お前たちもそうだろ?ん?」と勇二郎は2人を交互に見る。


光四郎が「まぁ、確かに。他の男を選んだとしたら、なっちゃん、うちから出ていっちゃうだろうしね。」と軽く言うと、純三郎が光四郎に向かって「ダメだよ!それだけはダメ!……もう家族なんだから。」と尻すぼみながらも力強く主張する。


「できれば俺を選んで欲しいけど、でも、そうでなくてもうちにはいて欲しい。たとえ…兄弟の奥さんとしてでも。」


「じゃぁ決まりだな!誰が選ばれても恨みっこなしだ!」ハハハ、と勇二郎がぎこちない笑い声を上げる。


「俺、負けるつもりないからね。誰よりもなつみさんを愛してるから。」純三郎が表情固くはっきり言うと、「もちろん俺もだよ。あ、健兄もバトルに加えちゃう?」冗談ぽく光四郎が言う。「健一郎?あいつはいい!健一郎だけにはやらん!」勇二郎は言い放つと、「おい、手伝いに行くぞ。ミノルだけじゃ可哀想だ。」とズンズン出ていった。


「勇兄ってさ、なっちゃんの恋人っていうよりかはお父さんみたい。」光四郎はクスッと笑って勇二郎の後に続く。純三郎の固くなった気持ちも少しほぐれ、思わず笑みがこぼれる。両手で頬をぱちん、と叩いて小さな声でよし、と呟くと、「俺も手伝うよ!」とみんながいる方へ駆け出していく。