近年、短時間に強い雨が降る「ゲリラ豪雨」や台風による大雨が増え、川から離れた市街地でも浸水被害が起きています。2026年も8月から9月にかけて各地で記録的な大雨が続き、住宅だけでなく、事業所、店舗、工場などにも被害が広がりました。
浸水対策というと「止水板を置く」「土のうを積む」といった水を防ぐ方法が思い浮かびますが、それだけでは十分とは言えません。この記事では、浸水対策を「調べる」「防ぐ」「知らせる」「復旧する」の流れに沿って、建物の管理者・事業者・家庭のそれぞれが取り組める方法をまとめます。
浸水対策とは?「防ぐ・知らせる・戻す」の3つで考える
浸水対策とは、大雨や川の氾濫による水が建物に入るのを防ぎ、入ってしまった場合でも被害を小さくし、早く元の生活や事業に戻るための取り組みのことです。
大きく分けると、次の3つがあります。
- 防ぐ:止水板、土のう、排水設備、電気設備のかさ上げなど
- 知らせる:浸水が始まったことをすぐに把握し、行動につなげる
- 戻す:浸水後の清掃、設備の点検・復旧、保険や補助金の手続き
多くの対策は「防ぐ」に集中しがちです。しかし、止水板は人が設置しなければ役に立たず、設置が間に合わなければ意味がありません。浸水に気づくのが遅れると、車の移動や電源の遮断、避難といった行動も遅れます。3つをそろえて初めて、浸水対策は機能します。
まず確認:建物の浸水リスクの調べ方
ハザードマップで想定される浸水の深さを見る
最初に行うのは、自分の建物がどのくらい浸水するおそれがあるかを知ることです。市区町村が公開しているハザードマップで、洪水・内水氾濫(下水や水路があふれる浸水)・高潮それぞれの想定浸水深を確認します。
注意したいのは、ハザードマップの「想定最大規模」は非常にまれな大雨を前提にしている点です。ハザードマップの想定最大降雨量は1000年に1回程度の確率を想定しており、住宅の寿命より長いため、それを基準にすると過度な対策になる可能性があると指摘されています。より起こりやすい「計画規模」の想定もあわせて見ると、現実的な対策の目標を決めやすくなります。
過去の浸水履歴と敷地の低い場所を確認する
ハザードマップに加えて、過去にその地域で浸水があったか、敷地の中で水が集まりやすい場所はどこかを確認します。坂の下、地下駐車場の入口、半地下の部屋、電気室などは特に注意が必要です。
建物への水の入り口をふさぐ対策
止水板・土のうを用意する
出入口からの浸水を防ぐ基本は、止水板と土のうです。止水板には、必要なときだけ取り付ける脱着式や、扉自体に止水機能がある型などがあります。
国のガイドラインでも、止水板の設置方法、設置に必要な機材・人員・タイムラインの事前確認や訓練が重要とされています。置き場所、取り付けにかかる時間、誰が取り付けるかを平時に決めておきましょう。
換気口や排水からの逆流にも備える
水は出入口だけでなく、換気口や床下の開口部、排水管からも入ってきます。周囲が浸水すると、下水が逆流してトイレや排水口から水が噴き上がることがあります。逆流防止の弁を付ける、換気口を高い位置にするなど、建物ごとに入り口を一つずつつぶしていくことが大切です。
見落としがちな電気設備の浸水対策
浸水でもっとも生活や事業に影響が大きいのが、電気設備の故障です。受変電設備や分電盤が水につかると、建物全体が停電し、エレベーター、給水ポンプ、照明が止まります。マンションでは水が出なくなり、工場や店舗では営業ができなくなります。
さらに、停電に備えて置いた非常用電源も、設置場所が浸水すれば同じように使えなくなります。電気設備の浸水対策としては、次のような方法があります。
- 受変電設備や非常用電源を、上の階や高い場所へ移す、またはかさ上げする
- 電気室に水を通さない扉(水密扉)を付け、配管や電線の通り道をふさぐ
- 回路を1階と2階、照明と機器などに分け、一部が浸水しても他を使えるようにする
- 上の階に移せないポンプなどは、カバーで水没を防ぐ
電気設備の工事は専門の業者でなければできません。建物を新しく建てるときだけでなく、設備の更新や省エネ工事のタイミングで一緒に見直すのが効率的です。
「浸水が始まった」をすぐ知る:浸水の検知・通知
国や自治体の防災気象情報や避難情報は、主に地域単位で出されます。そのため「この地域で大雨のおそれがある」ことは分かっても、「自分の建物で今、浸水が始まった」ことまでは分かりません。夜間や休日、管理者が現場にいないときは特に気づくのが遅れます。
そこで役立つのが、建物ごとの浸水検知・通知の仕組みです。敷地の出入口、地下駐車場、電気室など浸水しやすい場所に小さな検知機器を置き、水を検知したら管理者や住人、従業員のスマートフォンへすぐに知らせます。
通知に「車を移動する」「電源を切る」「止水板を設置する」「上の階へ避難する」など、すぐ取るべき行動を書き添えておくと、知らせを受けた人が迷わず動けます。普段使っているメッセージアプリで受け取れる仕組みなら、専用アプリを入れる手間もかかりません。
家庭でできる応急の浸水対策
止水板や土のうがない家庭でも、身近な物で浸水を軽くできます。代表的なのが、ゴミ袋を使った簡易水のうです。40リットル程度のゴミ袋を二重にして半分程度まで水を入れ、玄関などに並べるほか、下水の逆流を防ぐためにお風呂場や洗濯機の排水口、トイレに沈めて使う方法が紹介されています。段ボール箱に入れて並べると強度が増します。
ただし、こうした方法は浅い浸水の初期に行うものです。危ないと感じる前に、早めに避難することを最優先にしてください。
浸水してしまった後の復旧
浸水した後は、次の順で進めます。
- 安全を確認する:浸水した電気設備やコンセントには触れず、ブレーカーを落とす
- 排水・片付け・清掃:泥を取り除き、床下までしっかり乾かす
- 電気設備の点検と復旧:受変電設備、分電盤、ポンプ、エレベーターなどを専門業者に点検してもらう
- 手続き:罹災証明書の取得、火災保険の水災補償の請求、補助金の申請
- 再発防止:今回の浸水で分かった弱点をもとに対策を見直す
手続きでは被害状況の写真が必要になることが多いため、片付ける前に撮影しておきましょう。
補助金・助成制度も活用する
多くの自治体が、止水板の設置や雨水をためる設備の設置に補助金を出しています。栃木市では、建物の玄関や勝手口などに止水板を設置する自助行為に対して補助金を交付しています。対象地域や条件、申請の時期は自治体ごとに違うため、工事の前に必ず確認してください。
浸水対策を「一体」で進めるなら
ここまで見てきたように、浸水対策は「調べる・防ぐ・知らせる・復旧する」がつながって初めて効果が出ます。しかし、それぞれ別の業者に頼むと、手間も費用もかかります。
株式会社SDSホールディングス(東証スタンダード:1711)は、2026年10月1日に「浸水検知通知・防災支援サービス」の開始を発表しました。グループ会社の省電舎が、これまで省エネ設備や非常用電源、LPガス災害バルクの提供で培った電気設備工事の知見をいかし、次の3つをまとめて提供します。
- 浸水検知通知:実績のある外部システムを使い、浸水を検知したら取るべき行動とあわせてスマートフォンへ通知
- 浸水対策支援:浸水リスクの診断、止水板の設置、受変電設備・非常用電源のかさ上げや移設、簡易な事業継続計画づくり、補助金や税制の申請支援
- 復旧支援:排水・清掃の初動から電気設備の点検・復電、罹災証明や保険請求の支援、再発防止の提案
対象は、マンションの管理組合・管理会社、工場、倉庫、店舗、医療・福祉施設を持つ事業者、自治体です。浸水検知通知の提供開始時期は、検証と実証実験の結果をふまえて決まります。
詳しくは発表資料をご覧ください。
👉 【浸水対策】検知通知・防災支援サービスの開始に関するお知らせ(PDF)
まとめ
- 浸水対策は「調べる・防ぐ・知らせる・復旧する」の4段階で考える
- まずハザードマップと過去の浸水履歴でリスクを知る
- 止水板・土のうは、設置する人と手順まで決めておく
- 電気設備や非常用電源の浸水対策を忘れない
- 建物ごとの浸水検知・通知で、「今、浸水が始まった」をすぐ行動につなげる
- 浸水後は写真を残し、保険・補助金の手続きと再発防止まで進める
大雨は今後も繰り返されると考えられます。被害が出てからではなく、平時のうちに備えを整えておきましょう。
