この日は土用の丑の日だった。
昼時の俺のツイッターは、鰻重の写真付き「今、鰻食べてます。」的なツイートで溢れていた。
土用の丑の日が偶さか土曜。
多くの人々は休日なのだろう。
昼から鰻屋に行って、ビールに鰻重。
結構な話だ。
そういう俺は土曜は基本勤務日。
出勤して働いていた。
前にも言ったが、俺は平日、つまり出勤日は夜まで何も飲まず食わずで過ごす。
彼らがツイッターに挙げる鰻重の写真付きのツイートはまさに俺には飯テロだった。
が、ここで昼食をとるわけにはいかなかった。
その日は仕事を終えたら、ナチュラルワインのイタリアンに行く予定だった。
そこでナチュラルワインとイタリアンを思い存分満喫するのだ。
それまでに究極の空腹を用意しておかなければならない。
それに負け惜しみをいうわけではないが、鰻はすでにおよそ二週間前に済ませていた。
自宅で、冷凍の鰻だけど。
メインは鰻だが、最初から鰻では始めない。
物事には順序ってものがあるのだ。
いくつかの前菜を味わった後、漸く主役の鰻重に到達、っていうのが理想の流れだ
この日の前菜其の壱は前日に仕込んでおいた鯛とイサキの昆布締めだった。
前日には寿司を握ったのだが、食べきれなかった刺身を昆布締めにしておいたのだ。
お酒はウイスキーを合わせた。
実は日本酒を切らしていた。
でも、なんだかんだ、俺はウイスキーが酒の中では一番好きかもしれない。
刺身の次は、兵六揚げ。
神保町の名酒場のメニューの一つだ。
自分で作れば、百円とかからない。
納豆と刻み葱とビザ用チーズを混ぜ合わせ、それを半分に切って中を広げた油揚げに詰め、フライパンで胡麻油で焼くだけ。
兵六揚げを食べ終えたら、口直しにさくらんぼの柴漬け。
あくまでも、これはデザートではない。
酒のつまみだ。
そして、漸く真打ち鰻重の出番となる。
何度も言っていることだが、冷凍の鰻はレンチン(※1)した後いったん表面に付いたタレを洗い流す。
それをフライパンで醤油、みりん、酒で蒸すように焼く。
最後、ブランデーでフランベする。
この日はブランデーを切らしていたので、ラム酒で代用した。
出来上がった鰻を、お重に敷かれた硬めに炊かれたご飯に乗せて完成。
鰻重には、やまつ辻田の粉山椒。
非常に香りがよいのだが、色も鮮やかな抹茶色で、振りかけた後の鰻重は、カビが生えたようにも見えなくもない。
だから、写真は振りかける前に撮ることにしている。
この後、やまつ辻田の粉山椒をたっぷりかけて頂いた。
写真はないけど。
※1:電子レンジで温めることをこう呼ぶ。電子レンジの完成音が「チン」であることから、レンジのチン、略してレンチンと呼ばれるようになった。