一丁目のソーキ | さてと、今夜はどこ行く?

さてと、今夜はどこ行く?

酒場であったあんなこと、こんなこと。そんなことを書いてます。ほとんど、妄想、作話ですが。

もう少し先に行けば、以前沖縄に来た時に入った、美味しい沖縄そばの店があることを知っていたが、そして、そこで食べるのが無難だということもわかってはいたのだが、そこに向かってはいたものの、途中引き返し、その手前にあるまだ一度も入ったことのない沖縄そばの店に入ってみようという気になったのは、店頭に掲げられたメニューに載った値段が安かったこともあるが、なにより、店の窓ガラス越しに見えるカウンターに、一人佇む美人の横姿が目に入ったからに他ならない。

しかし、俺はそんなことはおくびにもださずに、

「まあ、何事も経験だからさ。今回は、こっちの沖縄そばの店、試してみようぜ。」

とだけ、脇を歩く妻にいい、

「本当にここ美味しいの?美味しいってわかってるほうに入ったほうがいいんじゃないの?」

と怪訝がる彼女に耳を貸さず、初めての店のドアを押し開けた。

 

 

麺は生麺と普通麺が選べ、値段は変わらないが、生めんのほうが出来上がりまでに時間がかかるということだった。

特に急いでいるわけでもない。我々はどちらも生麺を選択した。

 

 

注文から5,6分ほどして届いたソーキソバは、麺はしこしこして美味しかったが、申し訳ないがスープはちょっと先にある前に行ったことのある店のほうに軍配が上がった。

我々が食べ終えるころには、先にカウンターで食べていた女性はすでに店から消えていた。

「やっぱ、あっち行っとけばよかったかな。」

小さい声で、そうつぶやいた俺に妻がピシリと言った。

「お見通しよ!」