スコール | さてと、今夜はどこ行く?

さてと、今夜はどこ行く?

酒場であったあんなこと、こんなこと。そんなことを書いてます。ほとんど、妄想、作話ですが。

結局のところ、古宇利島に行った翌日もまた、レンタカーを借りることになった。
当初は昼から飲めるという牧志第一公設市場界隈にでも行って昼から飲んだくれるか、なんて考えていたのだが、ホテルの外に出てみれば、空が、昨日に比べずっと晴れており、それは俺に、こういう日こそ、沖縄の美しい海を観賞すべきではないか、やっぱり、海に行こう!と考え直させるのに事足りた。
だからといってまた古宇利島まで運転するのは難儀だったし、時間的にも遅すぎた。
ここは一時間以内で行ける近場がいい。
都合のいい海岸はどこかないのか?と問う俺のために、マリイが東京から持参してきた沖縄ガイドブックから見つけてくれたのが、喜屋武岬だった。
ガイドブックに載った写真を見る限り、岩場の下に白い砂浜が広がり、その向こうに果てしなく広がる青い海と、まさに理想的な海岸に思えた。
距離的にもそれほど遠くはない。
俺は、昨日と同じレンタカー屋に行くと、昨日とは別の女性店員の対応を受けた。彼女が用意してくれたのは、またも白色の車だった。
昨日の車と同じか?と思いきや、それはどこか似てはいたものの違うものだった。同じトヨタの車ではあったが、ヴィッツではなくてアクアだった。
だが搭載されているナビゲーターシステムは同じものだった。エンジンの掛け方も同じだった。
俺は案内してくれた女性店員に、昨日覚えた疑問を問いかけてみた。
ナビに入力したあとパネルに触ると、触った場所に勝手に行き先が変更されてしまうのだ。それで、昨日は、何回かリセットし、改めて目的地を入力する羽目になった。
あれを防ぐ手立てはないものか?
それを訊ねた俺に彼女は言った。
「一旦入力したら、あとはナビに触れないでください。」
なるほど。そういうことか。
便利なようで、ナビってのは、けっこう融通は利かないところもあるようだった。
俺は早速運転席に乗り込むとナビに喜屋武岬と入力した。
瞬時にして、ナビはそこまでの道筋を提示してくれた。
「もう、触っちゃだめね。」
そう自分に言い聞かせるように、助手席のマリイに言うと、俺はアクセルを踏んだ。
「次、左折です。」
ナビが早速教えてくれた。

そんなこんなで到着した、喜屋武岬だったが、それは俺の想像したものとは全く違ったものだった。
ガイドブックの写真で砂浜に見えたそれは、実際は白っぽい色の平たい岩石だった。
眼下に広がる海こそはあれ、それはとても深いところにあった。
逆に言うと、我々は高い崖の上から海を見下ろしていた。
確かにそういわれればその通りだった。誰もなだらかな海岸を岬とは呼ばない。
喜屋武岬は見晴らしがよく美しいところではあったが、俺の希望していたものではなかった。
俺は次の候補を見つけるべく、マリイからガイドブックを貸してもらった。
それによると、喜屋武岬から、しばらく行ったところに浜辺に立つ茶屋があるらしい。もちろん浜辺を歩くことも、海に触れることもできる。
それこそが俺の理想の場所だった。
俺は改めてナビにその茶屋の名を入力した。
知られた観光名所なのか、今回もナビは迷うことなくそれを算出し、そこまでの道筋を提示した。
俺はアクセルを踏むと、喜屋武岬を後にした。
思えば、そんな俺の行為がいけなかったのだと思う。
後から知ったが、喜屋武岬は、第二次世界大戦中、アメリカ兵に追われた日本兵が、そこに追い詰められ、海に身を投げた場所でもあった。
あそこは黙祷し、深く手を合わせるべきだったのだ。
だから、喜屋武岬を後にした後、天候がぐんぐん悪くなり、猛雨になったのは、俺の不躾な態度に対する罰や戒めだったのだと、今更ながらに思う。
目的の茶屋に着いたものの、外は激しい雨、おまけに店は満席という始末だった。
折角来たのだから席が空くまで待とう、と待っていたのだが、漸く通された席は、海の見えないテーブル席。我々より後にきたカップルが、見晴らしの良い海を一望できるカウンター席に通された。
まったく、なんだかな・・・踏んだり蹴ったりだ。
おまけに茶を飲み終え、そろそろ行くか、と会計をしていたら、外はみるみる晴れてくるという・・・
やっぱり、あれは罰があたったんだろうな。
でも、ま、念願の海を見られたし、触れたし、結果的には良かったと思う。
その近所の海岸の話は、また次回。
ではまた。



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