土佐日記(ひろめ市場外) | さてと、今夜はどこ行く?

さてと、今夜はどこ行く?

酒場であったあんなこと、こんなこと。そんなことを書いてます。ほとんど、妄想、作話ですが。

訪れた時間帯がいけなかったのか、はたまた世間は俺を含めGWの酣にあったという影響か、もしかしたら高知ではこれが当たり前のことなのか、
「高知に行ったら、是非とも行ってみて!」
と勧められていた多種多様の飲み屋が集結していて、朝から飲めるという市場は、まだ午前9時を回った頃だというのに、とても混雑、市場中央の広場に設置されたテーブル席はもちろん、場内の通路すら、其処彼処、歩行に戸惑うほどの人で溢れていた。
それから、これはそこを利用できなかった俺の負け惜しみもあるのだろうけど、どことなく、テーマパーク臭のするその雰囲気が、俺には合わなかった。
市場で飲むことは諦め、俺はそこを出ると、市場外をブラブラ彷徨った。
途中、いい感じの喫茶店が目に入り、入ってみた。昭和の雰囲気の残る、おそらくその時代から今まで変わらず営業しているであろう店に違いなかった。
店に入ると、外観から想像したのとほぼ変わらない内装で、期待を裏切らなかった。
もとは白かったであろう、いい感じにすすけたクリーム色の壁紙、暖色系の光を放つランプ型の壁付け照明、木目調のテーブル、カウンターの下にならぶマガジンラック、壁に貼られた地元行事のポスター、何てことのない内装だが、スタバあたりのカフェじゃみられない光景だ。
チョッキ姿の、どことなく俳優の柳生博さんを彷彿させる歳を召されたマスターが、またいい演出を店の様子に加えていた。
お得なモーニングセットがメニューにあったが、こういう店で俺が頼むのは、たいてい決まっている。
クリームソーダだ。
緑色の炭酸水に白く丸いアイスクリームが浮かび、ちょこんとチェリーが添えられている。
このチェリーは毒々しいくらいに真っ赤に着色されているのが俺個人としては望ましい。
緑、白、赤、この色合いが俺は好きなのだ。
だから味的には似たようなものとされる、コーラフロートや、グリーンではないブルーやピンクのシロップを使ったクリームソーダとなると、俺は受け付けなくなる。
幸い、この店のクリームソーダは、ショーウインドウに飾られていた蝋サンプルの通りであれば、グリーンのはずだった。
果たして、届いたクリームソーダは期待通り緑色をしていた。
しかし、付属のチェリーが色違いどころか、それ自体欠損していたのは、俺を若干気落ちさせた。
まあ、仕方ない。
俺は、クリームソーダを5秒で吸い上げると、上に乗せられていたアイスクリームには手をつけず、店をでた。
それから、市場近傍の肉屋で、出来立てのコロッケとメンチを買うと、ホテルに戻り、昨夜飲むつもりでコンビニで買い込んできたものの、結局、飲む前に寝てしまい、飲まれることのなかった冷蔵庫に保管されていた、普段はあまり飲むことのないちょっといい瓶詰めのビールとともに、それらを食べた。
肉屋の惣菜って、総じてうまいな!
そう思い、一人大きく頷いた。

続く。