正解 | さてと、今夜はどこ行く?

さてと、今夜はどこ行く?

酒場であったあんなこと、こんなこと。そんなことを書いてます。ほとんど、妄想、作話ですが。

俺の記憶が正しければ、映画館に行ってはじめて観た映画はスティーブン・スピルバーグ監督の「JAWS」だ。
人食い巨大鮫がテーマのあの名作だ。
しかし、まだ小学一年生の俺にとって、それは恐怖映画でしかなかった。
映画が終わった後も足が震えてまともに歩けなかったのを覚えている。
「坊主が上手に屏風にジョーズの絵を書いた。」なんて早口言葉も、顎が震え、なんども自分の舌を噛む事になった。
子供の頃から俺ってまったく成長しねえなあ。いつまでたっても精神年齢は小学生のままだ。と自負してはいたが、今、改めてJAWSを観ても、全然怖くは無いから、意外に自分で気付かないところで、成長していたのかもしれない。
昔、スキューバーダイビングをやっていたとき、結構、間近で鮫をみたときは、さすがにヒヤっとしたが、自然の鮫は何もせず、優雅に目の前を通り過ぎ、深い青の彼方に消えて行った。
だから鮫が怖くないというと嘘になるが、少なくとも地上に上がれば、こっちが優位だ。
逆に、彼らが我々に食われるくらいだ。
まあ、臭みが強いらしく、生ではあまり好んでは食べられないようだけど。
人気があるのは卵だが、あれは鮫は鮫でもチョウザメ、種類が違う。

「おもしろいものあるけど、食うかい?」
そういって大将がニヤリと出してきたものは、なにかの刺身のようだった。
一見レバ刺しを髣髴させる。
「なにこれ、レバ刺しっすか?」
そう訊ねる我々に、大将は思わせぶりな笑みを浮かべ、まずは食べてみろという。
口にしたそれは、こりこりとした歯ざわりで、淡白な味わい、大蒜がよく合った。
馬のレバーか?
しかし、そう口に出すより早く、大将が言った。
「鮫の心臓。」




というわけで、正解は、鮫の心臓のお刺身でした。