100g | さてと、今夜はどこ行く?

さてと、今夜はどこ行く?

酒場であったあんなこと、こんなこと。そんなことを書いてます。ほとんど、妄想、作話ですが。

教えてもらった店に向かおうとしたものの、俺としたことが、店の名前をすっかり忘れてしまっていた。
店の名前と地図を書いた紙も、ポケットに入れたはずが入ってなかった。
なんだったっけ?
なんでも、モツ&肉で、世界各国の美味しいワインが飲める店とのことだった。
ビストロなんとかだったよな、たしか・・・
しかし、この飲食店街においてはちょっと歩いただけでもビストロと名のつく店は星の数ほど見受けられた。
たしか英語でいう音波みたいな名前だったんだよなあ。
聞いた瞬間、ああ音波のことね!って思ったくらいだから・・・
しかし、今度は英語で音波をなんていうんだか忘れっちまってるんだから、俺としたことが、まったく・・・
なんだっけな?
しかし、宛ても解らずぐるぐる彷徨っているだけでは埒が明かなかった。
約束の時間は、もうとうに過ぎている。
だめだ、人に聞こう。
辺りを見渡すと、偶然にも向こうからこちらに向かってくる、若かりし頃の女優「中島ゆたか」にそっくりの美人が、俺の目に入った。
実は、ココだけの話、俺は美人が大好きなのだ。
美人をみると、なにかと理由をつけて話しかけたくなる。
俺は早速彼女にかけよると
「すみません、ちょっといいですか?」
と訊ねていた。
変な軟派野郎と、無視されたって別に構いやしない。
どうせ、彼女は、いくら美人とはいえ、俺が主役のこのストーリーにおいては、飲食店街を歩く通行人Aに過ぎないのだから。
しかし中島ゆたか似の通行人Aはそんな俺を無視することなく、ちょっと戸惑った表情をしながらも立ち止まり
「なにか?」
と、俺を見つめ返してくれた。
彼女の役が、通行人Aから、ケイコ(主人公からの質問に答える女)に格上げになった。
ちなみにケイコっていうのは、俺が直感的に思いついた役名で、本名は知らない。
俺は言った。
「すみません、あの、音波って、英語でなんていうんでしたっけ?」
そんな俺を、彼女は一瞬口を半開きにして、「は?」と見つめ返し固まると、「ソノグラムだけど・・・」と呟くように言ったかとおもったら、次の瞬間豹変し叫んだ。
「バカかオマイは!」
その豹変振りに、今度は俺が固まる番だった。
「そこは、『名前を忘れちゃったんだけど、この辺りにモツと肉で世界各国のおいしいワインを飲めるビストロ、ご存知ありませんか?』でしょ!?話終わらせてどうすんのよ。主演女優のアタシを、通行人Bのアンタがここで終わらせちゃダメじゃん?!」
「すいません。」
俺は小さくなって彼女に頭を下げた。
「ったくちゃんと台本読んできたの?出番が一回だからって、ナメてんじゃないわよ。」
「はい・・・」
「アタシの足、ひっぱるんじゃないわよ。」
そう言ってフーっとため息をつくと、ケイコは気を取り直すように言った。
「もうっ!、ちょっと休憩!」
そして、通行人Bの手をとるとツカツカと歩き出した。
通行人Bは、まるでしかられた犬のようにしょんぼり肩を落とし、小さくなって彼女の後に続いた。
そしてケイコが向かったのは・・・・

さてと、今夜はどこ行く?

さてと、今夜はどこ行く?

さてと、今夜はどこ行く?

さてと、今夜はどこ行く?

さてと、今夜はどこ行く?

さてと、今夜はどこ行く?

さてと、今夜はどこ行く?

さてと、今夜はどこ行く?

さてと、今夜はどこ行く?

さてと、今夜はどこ行く?

さてと、今夜はどこ行く?

「ねえ、ソングラムの意味、知ってて?」
耳元でケイコがそっと囁く。
「いや。」
「cent grammes・・・100gって意味よ。100g・・・唇二つ分のお・も・さ。」
そしてくすっと微笑むと、俺の唇に自分のそれをそっと重ねてきた。


fin



主演 ケイコ;ケイコ   


俺(後半);大徳寺慎太郎

酒場の仲間たち;

小高姐;小高姐(友情出演)
 
zenbu;zenbu(友情出演)
 
rioca;rioca(友情出演) 

とらや;とらや(友情出演)

ムー;ムー(友情出演)

店員:ビストロ100グラムの店員さんたち

客:ビストロ100グラムのお客さんたち

路上を歩いてた野良猫:とら


俺(前半)&通行人B;まりる



※フィクションです。実在する人名団体名等とはいっさい関係がありません。