2ありて3なし? | さてと、今夜はどこ行く?

さてと、今夜はどこ行く?

酒場であったあんなこと、こんなこと。そんなことを書いてます。ほとんど、妄想、作話ですが。

「ねえねえ、オマイさん。辛くって美味しい麻婆出してくれるのって2号店だったけ、3号店だったっけ?」
そう訊ねてきた妻に俺は、さも当然だろうという感じに迷う事無く答えた。
「3号店。」

さてと、今夜はどこ行く?

しかし、俺が3号店だと思っていた店は2号店で、妻が予約した店は3号店だった。

さてと、今夜はどこ行く?

同じ名前なら料理も同じと思いがちだが、考えてもみよ。
他に調理場があって、そこで作られたものが、各店に運ばれて行くというシステムでも無い限り、各店で出される料理が同じ料理人によって作られたものである事など、有り得ない。
かけ離れた店に同時に同じ料理人が存在するという事など物理的に不可能なのだ。
2号店と3号店のメニューは同じかもしれないが、その料理は似て非なるものなのだ。

さてと、今夜はどこ行く?

生ビールや

さてと、今夜はどこ行く?

お通しに関しては、違いがよくわからないにしても、

さてと、今夜はどこ行く?

これは、わかる。気付かざるを得ない。
一目瞭然ならぬ、一舐瞭然だ。
あれだけ、花椒たっぷりでお願いします、と頼んでも、日本語が通じていないのだから仕方ない。
我々が中国語を話せないのだから仕方が無い。
「花椒、もっと加えたいんだけど。」
そういいながら、俺は、麻婆豆腐に何かを振りかけるようなゼスチャーを彼に示した。
それを理解したらしく彼が持って来てくれたものは果たして、別皿に盛られた花椒だった。
小皿に用意された花椒を、全て振りかけた我々に、店の兄さんは何か言って苦笑された。
それは恐らく、
「辛いの好きなら、そう言ってくれればよかったのに。」
という内容だと思うのだが、残念ながら、我々にはその言葉が、我々が最初に彼に頼んだお願いが彼に理解されなかった以上に、わからなかった。
もしかしたら、ただ単に「花椒おいしいですよね。私も好きです。」と言っていたのかもしれない。
いずれにせよ、花椒持って来てが通じたのは幸いだった。
我々は、まあ、一応満足して、その辛旨を堪能する事が出来た。
しかし、それでも、記憶にある2号店の旨さとはかけ離れたものであった。

さてと、今夜はどこ行く?

我々は、もう一度、麻婆豆腐をお願いした。
花椒の入っていた皿を指差し、これを沢山入れてね!とゼスチャーでお願いした。
彼は、分かったOKというように、指でリングを作って笑った。

さてと、今夜はどこ行く?

しかし、

さてと、今夜はどこ行く?

しかし、

さてと、今夜はどこ行く?

再度届いた麻婆豆腐は、先ほどと同様の程度のものだった。
今回は最初から山盛りの花椒の粉が入った小皿が添えられて来たのを別にすれば。

さてと、今夜はどこ行く?

がっかり顔を隠せない我々に、お店のお母さんがやってきて、笑いながら言った。
「お客さん、辛いの好きみたいね。こんど頼む時はこう言って頼んでね。」
そして、なにか中国語を教えてくれた。
おそらく、「激辛でお願いします。」という意味か、「花椒たっぷりでお願いします。」という意味の中国語だったのだろうと思う。
その時はお母さんに続いて復唱した俺だったが、すっかりその言葉を忘れてしまった。

さてと、今夜はどこ行く?

ま、いっか。
また行って訊けば。

さてと、今夜はどこ行く?

「え、オマイさん、次回も2号店じゃなくて3号店に来るのかい?」

さてと、今夜はどこ行く?

まあな。
多分、次回来る頃には、また2号店と3号店どっちだったか混乱していると思うし、
それに、

さてと、今夜はどこ行く?

ここの、汁無し担々麺は、とても美味しかったからなあ・・・

さてと、今夜はどこ行く?

それより、なにより、

さてと、今夜はどこ行く?

二回経験したくらいで、全てを分かったつもりになるのは、ちと、早とちりすぎやしないかい?