ヘルマン・ヘッセの出世作「郷愁」も素晴らしい作品でした。
車輪の下も良かったですが、同様に郷愁も良かったです。
特に最後の方の、身障者ボピーとの出会いの部分は
苦しくもあり美しかったですね.....。
ボピー、美しかった。自分の事よりも他人優先だし。
ボピーを一生懸命、自分が死ぬまで面倒を見た母親にも感動感動。
ヘッセの作品は登場人物一人・一人を取り巻く
心情がとてもよく表現されているんですよね・・・
☆あらすじ☆
狭い故郷を離れて都会に出たアルプスの自然児ペーターは、文筆家として身を立てるが、都会の文明に失望し幻滅を感じるようになる。この彼を救ったのは、美しい少女エリーザべトへの愛と、姿は醜いけれど美しい魂を持った身障者ボピーへの愛の奉仕であった。ボピーの死後、自然に包まれた故郷へ帰った彼はそこに安住の地を見出す...。
あらすじを書くと「そっかー」みたいに思うけど、
読むと全然違いますね。
当たり前か( ̄_ ̄ i)
ペーターはこの小説の中でイタリアの画家や、黒髪のエリーザべトに恋をしてフラれたり、異国の女性に求婚を申し込まれたり色々あるのだけど、ボピーがエリーザべトに会いたがり、これがきっかけでペーターが恋愛感情抜きに、また関わりを持つようになったのは面白い展開だったですね。
「ええっ!」って読者を飽きさせないヘッセの小説。
第一の衝撃は母親が死んだ事。
第二は一番仲良しの友達「リヒャルト」が死んだこと。
第三は、さしもの師の娘アギーの死。
リヒャルトとは、せっかく親友になれたのに・・・
ボピーとの出会いから始まる部分は特に感動しました・・・・。
さしもの師の娘は病気がちでついに死んでしまった。
これも衝撃的だった。
さしもの師の件で「それってあり?」と思ったのは、
奥さんの親類のボピーを引き取った後、物も言わずにずっと無視してたこと。
ボピーの御母さんが死んだから身寄りがないボピーが、さしもの師の家に来たんだよね。うっとおしがられるボピーをペーターが心から愛し、
世話をする部分、美しかった・・・。
ペーターのその後が気になる。
ついつい、日頃、不満に思いがちで「当たり前」に思ってしまうけど、
弱いな~自分の心って。と気付けた作品でした。
いろいろと印象に残った文章はこれ。
「人間には不動の限界などは存在しない事、ささやかな人間、下積みの人間、貧しい人間の間でも生活は同様に多彩であるばかりでなく、むしろたいていは、恵まれた人々や輝かしい人々の生活より、よりあたたかく真実で模範的だということを段々よく知るようになった」
ボピーを一人残して出掛けた事を後悔するペーターがボピーに謝罪して、
これから友達になろう、そばにいられることが嬉しいと伝えると
「小さい身障者は大きな頭を私の方に向けて、
私の顔を見、「どうもありがとう」と、それだけだった。
しかし、この頭を向ける事は彼には骨が折れる事で、
健康なものが10ぺん抱擁するくらいの値打ちがあった。
彼のまなざしはたいそう明るく子供らしく美しかったので、
私は恥かしさに血が顔に上ってくるのを感じた」
恵まれている事は素晴らしいと思うし、
頭が良い人はやっぱり違うって思うし。
能力がある事はこれまた素晴らしいって思うし。
人の運命、親子・夫婦・兄弟姉妹、
人それぞれ違うなーと、思いふけってみたり。