さて、ここからは邪馬台国比定地論争の二大諸説である畿内説・北部九州説の主張と弱点を考察を交えながら書いみたいと思います。

 

男性は長幼の別無く、顔と身体に刺青

 

男子無大小皆黥面文身

 

 倭人伝本文にある「黥面」とは、いわゆる顔の入れ墨のこと。

 

 ※黥面について、説明すると長くなるのでWeb上に掲載されている以下のサイトをご参考にご参照下さい。

 

 ➡鯨面文身・絵で見分けるイケメン海人族の顔

 ➡邪馬台国の入墨

 

 また、「文身」は身体に入れる刺青(タトゥー)です。

 

 刺青は、中国と日本に共通する古代海洋系狩猟系民族の文化の一つです。

 

 その後の記述に、

 「今倭水人好沈沒捕魚蛤、文身亦以厭大魚水禽、後稍以為飾。

 「今の倭の海人は水に潜って上手に魚や蛤を採取する。身体の刺青は大魚や水鳥を厭(いと)う=(嫌って避ける)からである。後にやや装飾となった。」とあります。

 wikipedia「入れ墨」に、

 「これら倭人の入れ墨に対して、中国大陸の揚子江沿岸地域にあった呉越地方の住民習俗との近似性を見出し、「断髪文身以避蛟龍之害」と、他の生物を威嚇する効果を期待した性質のもの」と記しています。

 

 古事記や日本書紀に見られる「黥ける利目」(さけるとめ)・「黥利目」(げいりもく)という、顔の中でも特にの周辺に刺青をしたものがあります。

 

 ●大久米命の「黥ける利目」

 古事記の神武天皇段に、神武天皇から三輪の大物主神の娘・伊須気余理比売(いすけよりひめ)への求婚の使者としてやって来た大久米命の「黥ける利目」を見て、伊須気余理比売が不思議に思い次の歌を詠みました。

 

 あめ 鶺鴒(つつ) 千鳥 真鵐(ましとと) など黥(さ)ける利目 (とめ)

 

 アマドリ、セキレイ、チドリ、ホオジロのように、どうして目が裂けて見える入れ墨をしているのですか?

 

 ◆アマドリ(雨鳥)は空想上の鳥とされますが、実はキツツキ目オオガシラ科の鳥のことか。

 

 ◆セキレイ

 

  

 ◆チドリ(コチドリ)

 

 

 ◆ホオジロ

 

 (写真はwikipediaより転載)

 

 いずれも目の周りに隈取のような模様があります。

 

 今風にいうとV系メイクが一番イメージに近い。

 

 

 

 ◆現代好まれるメイク

 

 

 昔もこのようなメイクが日本人には好かれる傾向にあったのかもしれません。

 

 卑弥呼にイメージされるいわゆる狐目メイクもこれ由縁か。

 

 

 「黥ける利目」のイメージ

 

 

 少なくとも魏使達は、倭人の海洋民族たる姿を詳しく考察見解しています。

 

 畿内説、特に奈良県に不利となる大きな要因として、奈良県は海に面していないことが挙げられます。

 当然のことながら、奈良県の弥生遺跡出土物に黥面に由来するものはありません。

 このことから、北部九州説論者は、これは北部九州に上陸した時の倭人についての記述であるとし、奈良県では到底無理があり、北部九州説を主張するものの一つとしています。

 

 そこで畿内論者曰く、ここは「倭人」についての記述なのであって、特に邪馬台国(この場合奈良県)に住んでいる人々について記載しているものではないとしています。

 確かに互いの主張共一理はあります。

 

 しかし、純粋に記していることのみで判断するならば、この場合の畿内論は言い訳に聞こます。

 また、水行先の国々であれば当然海洋に面している訳で、むしろピンポイントで奈良県ではないという根拠にもなり得てしまいます。(ただし”畿内”説なので奈良県でなくともよいとしている)

 

 そして、前回までの考察により、すでに九州島を水行して脱出している確率が非常に高いことから、逆にそのどちらでもない別の国である可能性を浮き彫りにしています。

 

 その理由の一つとして、

 ・古代中国の歴史書における記述の特徴に、時系列に記されていくこと。(編年体

 ・後に新たな情報を得て加筆ある場合においても、やはり時系列項に組み込まれ記されること。

 これらの特徴から、この時点での記述は、「邪馬台国に到着後の記述」となります。

 

 よってまずこの時点では、

 

北部九州説 △

畿内説 限りなく×に近い△

南に水行した先の海に面した国 〇

 

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Now男性は長幼の別無く、顔と身体に刺青

古より、そこの遣使が中国を詣でると皆が大夫を自称

その道程からすれば、会稽の東冶の東にあたる

その風俗は淫乱ではない

男性は皆が頭に何も被らない、木綿を頭に巻いている。衣は横幅があり、互いを結束して連ね、簡単な縫製もない

婦人は髮を曲げて結び、衣は単被に作り、中央に穴を開け、頭を突き出す

水稲、紵麻(カラムシ)の種をまき、養蚕して絹織物を紡ぐ

細い紵(木綿の代用品)、薄絹、綿を産出する

牛・馬・虎・豹・羊・鵲がいない

矛、楯、木弓を用いて戦う。木弓は下が短く上が長い

倭の地は温暖、冬や夏も生野菜を食べ、皆が裸足

朱丹を身体に塗る

飲食は手で食べる

死ねば、棺はあるが槨(かく=墓室)はなく、土で密封して塚を作る

死去から十余日で喪は終わるが、服喪の時は肉を食べず、喪主は哭泣し、他の人々は歌舞や飲酒をする。葬儀が終われば、家人は皆が禊をする

持衰(じさい)がいる

真珠や青玉を産出する

そこの山には丹(丹砂=水銀)がある

樹木には、楠木、栃、樟、櫪、橿、桑、楓

竹には、篠、簳、桃支

生姜、橘、椒、茗荷があるが、滋味なることを知らない

行動に移るときには、骨を焼いて卜占で吉凶を占う。令亀の法の如く、熱で生じた亀裂を観て兆を占う

会同での起居振舞に、父子男女の差別がない。人々の性癖は酒を嗜む。高貴な者への表敬を観ると、拍手を以て膝を着いての拝礼にあてている

一年に四季があることを知らないが、春に耕し、秋に収穫をすることを計って年紀としている

そこの人々は長寿で、あるいは百年、あるいは八、九十年を生きる

尊卑は各々に差別や序列があり、互いに臣服に足りている

租賦を収めている

立派な高楼があり、国には市があり、双方の有無とする物を交易し、大倭にこれを監督させている

女王国より北は、特別に一大率を置き、諸国を検察させており、諸国はこれを畏れ憚っている

伊都国王が使者を洛陽や帯方郡、諸韓国に派遣したり、郡使が倭国に及ぶときは、皆、港に臨んで点検照合し、文書、賜物を女王に詣でて伝送するが、間違いはあり得ない

応答する声は噫(いい)と言い、これで承諾を示す