私はハレー彗星のおかげで地上に生まれ落ちた。当時オーストラリアでのハレー彗星観測ツアーに講師として参加した父と、一般参加していた母とが出会い、結婚したおかげで私はこの世に生を受けたのである。ただ、プロポーズの言葉だけは、未だに教えてもらっていない。「星になるまで一緒にいよう」だの「僕と連星になって下さい」だの、天文学者らしい台詞であれば面白いが。
さて、ご存知の方も多いと思うが、とかく学者は稼げない。なので父は、稼げない分講演会をして家族を養う、と結婚するとき母に宣言した。その約束は父が国立天文台の副台長になっても未だに忘れられていない。最近は年間60回以上の講演会を行い、更にメディア出演も多数こなしている。これらに関しては広報の仕事でもあるのだが、にしても凄いバイタリティである。
母は生物学の研究者であったが、父と結婚してからは栄養士免許を生かして料理教室の先生として働いていた。
そんな二人の間に授かられた私は、出産当日中々出てこなかったらしい。最終的に父が私を引っ張り出した。多分私は冬の日に布団から出たくない、そんな気分だったのだろう。今でも冬は寝起きが非常に悪い。
ちなみに 私が産まれた時、天には金星が輝いていた。そこで金星の探査機マリーナ号からつけられた名前がまりなである。