あの頃の出来事をトラウマのように思い出す、確かに当時は少し、いや、かなりぽっちゃりしていたが、コホン、断じて太っていたわけではない、とあるキャラなら僕はぽっちゃり系だ!と怒る場面だ、まあそんなわけでありきたりな事だ、当時好きだった女の子にデブだのキモいどの言われこっぴどくフラれたわけだ、それからというものその頃のトラウマが原因で女の子に対して苦手意識を持ち今に至る。


「あれから何年も経ってるんだからいい加減しっかりしないと」


だが一つ言っておく、今の俺は当時の面影は欠片も無いほど痩せて周りの女の子にモテモテの人生だ。


「っても、彼女怖くて作れないんだよな」


悲しみが胸を支配する。


「はあ、学校行こ」


このまま何もしない訳にはいかないので着替えて学校に向かう事にした。


「今月やばいな、バイト増やすかな?っても親に頼む訳にもいかないし、まああの両親ならくれそうだが、親バカだからなwww」


そんなこんなで学校に着いた俺は自分のクラスがある教室へと入って行った。


「ふあ〜ねむい」


着いた途端に思わずあくびが出る、うとっとして気が付いたら眠りに落ちていた、すると寝ている俺にそっと誰かが近づいて来た。


「ふーん、この人がお姉ちゃんに無様にフラれた男か、聞いていたより超カッコいいじゃん、いや、カッコよくなったじゃん、あの頃よりも、まああの頃は丸っとして可愛かったんだけど、コホン、とりあえず、やっと、みーつけた❤」


しばらくしてふと目が覚める、ちょうど授業が始まる少し前だった。


「やべ、寝落ちしてた、疲れてんのかな?やっぱバイト増やすの無理か、うぅ〜」


そんなこんなで授業が始まる。


午前中の授業も終わりお昼休みを迎える。


「しまった、お昼買うの忘れてた、かと言って食べに行く金なんて余裕ないし、はぁ、もー最悪、うぅ」


一人悲しみにへこんでうなだれていると


「良かったら食べますか?」


「え?」


そう声を掛けられ見上げるとそこには


「う!」


とてつもない一人の美少女が立っていた。


「なに見惚れているんですか?気持ち悪い」


「うぐ、そこまで言わなくても」


「私が可愛すぎるからってエロい目してこの子とヤリたいって顔で見ないでくれますか?」


「そそ、そんな事思ってないよ、君、自意識過剰なんじゃ?」


「あ?」


殺意!とてつもない殺意が周りを支配する。


「すいません」


ひらりと素直に謝った。


「んで?食べるの?食べないの?どっち?早く決めて殺すわよ?」


「あ、はい、頂きます、ありがとうございます」


そう言い彼女から食べ物を受け取る。


すると用も済んだハズなのに彼女は俺の隣に腰掛けた。


「え?あ、あの〜?」


「なにか?」


これ以上何か聞いたら殺す!そんな空気を纏っていた。


「い、いえ、なんでもないです」


(な、なんなんだよ〜こえーよ、女の子超こえーよ)


これ以上聞くのもアレなんで貰った食べ物へと口を付ける。


「君、見ない顔だけど、転入生なのかな?」


「んあ?」


「ちょ、そんな顔しないでよ、話くらいいいじゃないか、怖いよ、君さ」


「んっ、失礼」


「いや、いいけど、何かあったんじゃないの?男なんて!とかさ」


「ん?まあ、男は嫌いです!この世で一番みっともない人種です!顔を見てるだけで吐き気します」


「そ、そんな風に言わなくても、はぁ」


とへこんでいると


「あ、でも何故か、あなたは大丈夫ですね、逆に安心します」


「え!ほんと?」


「勘違いしないでくれます?殺しますよ?」


「はい、そういう意味じゃないですよね」


(くそ〜この子黙ってれば超絶美少女なのに、口は悪魔並みにやべーよ)


「ん?」


「いえ、何でも!」


「と、とと、とにかく食べ物ありがとう、助かったよ、何も食べれない所だった」


「何かあったんですか?」


「いや、ただ貧乏なだけだよ、俺は→ボソ」


「え?」


「あははは、なんでもない、なんでも」


「そう、ですか、まあ、あなたがどうなろうと知った事ではないですけど」


「ちょ、酷くない?なんて子だ」


そんなこんなで波乱のお昼は終わりを迎えた、そして午後の授業を受け帰宅時間を迎える。


「んーあー、バイト頑張るぞ!おー!」


周りに誰もいないと思っていたら


「何やってるんですか?ダサっ!」


「うお!き、君か、お願いだからビックリさせないでよ」


「変態に声掛ける趣味なんてないですから」


「君はホントに口が悪いね、そんなに可愛いのに残念だよ、ふぅ」


「カワイイ?僕が?アハハハハハハハ」


「な、何がおかしいのかね?まったく、ん?僕?まさかのボクっ娘キターー!」


「うわ!マジでキモイわ、マジで死んで欲しい」


ジト目で俺を見る彼女


「もー、何か、悲しいかな慣れた、昔はかなり言われると堪えてたんだけどな」


ほんとこの子と出会ってから何かが変わり始めていたんだと思う。


それからしばらくは穏やかな日々が過ぎていった、俺がバイトしている服屋に彼女がバイトとしてやって来るまでは。


「えー、今日からこの店でバイトしてもらう事になった三代紅音くんだ、みんな仲良くするように、んー、カワイイね〜紅音くん❤はいみんなに自己紹介して❤」


(何をデレデレしてんだ、このオッサンは)


「初めまして!三代朱音です、今日からこのお店でバイトする事になりました、よろしくお願いしますね」


そのあまりの可愛さに周りの男たちがメロメロになっている。


(気持ちは分かるけど、本性知ったらみんなへこむだろうなwww)


「キミ」


「はい?」


「朱音くんに色々と教えてあげなさい、朱音くん、何かあったら私に言いなさいね❤」


「はーい」


そう言うと店長は満足そうに去って行った。


「マジでキモ、あのオヤジ、うわ、吐き気我慢するんの大変だったわ、オエー」


「君という子は、はぁ」


するとギュッと朱音が俺の腕に抱きついてきた。


「よろしくお願いしますね❤」


「う!やめなさいよ!」


(いい匂い、やっぱ超カワイイ❤)


「今変な事思ったよね?殺していい?」


「ごめんなさい」


こうして俺の安全な日々は終わりを告げた。


しばらくそれから経ったある日、学校にて朱音が告られてる場面を目撃した。


(うわ〜マジかよ、まあ朱音だしな、そらモテモテだわな、お!)


「こんな所に呼び出してゴメン、君が好きなんだ、俺と付き合ってくれ!」


そういい男は手を差し出す。


「・・・・・・」


朱音は何とも言えない、いや、あからさまに嫌な顔をしている。


(あいつ!)


「はぁ、ありがとう、嬉しい!でもゴメンなさい、僕他に好きな人がいるの」


「え?」


男は振られるとは思っていなかったのか驚いた顔で朱音を見つめていた。


「あはははは、ごめん、よく聞こえなかった、もう一度言ってくれる?」


そんなみっともない男に朱音は


「はぁー」


あからさまに男に聞こえるような大きなため息を吐いた。


「聞こえてんだろ?振られるわけないって思ってたんだろ?どっからその自信が来るんだよ?逆に尊敬、ってか軽蔑」


「え?」


紅音のあまり態度の変化にびっくりして言葉が出ない男、だが、滅茶苦茶に言われすぎて、さすがにカチンと来たみたいだ。


「なんでそこまで言われなきゃならないんだ?付き合ってくれってんだよ!」


「あなた、いい噂聞かないよ?この学校の女の子を取っかえ引っ変えしてるんだって?うわー、サイテー、キモいー、うざいウザイー、いっその事死ねばいいのに」


そう言われた男は我慢の限界に達し


「この!!!!」


朱音の胸ぐらを掴み殴りかかろうとしていた。


「キャー、怖い、ごめんなさい、許して、もう二度と言わないから」


弱々しい態度で男に悲願する。


「今さら遅せぇーんだよ、舐めやがって、いっそこのまま犯してやろうか?あ?」


(くっ!)


朱音を助けなきゃ、そう思った時


「やはりクズか、だから男は嫌いなんだよ!」


朱音とは思えないほど低い声ドスの効いた声でそう言った。


「あ?」


「離せよ」


ボブっ!朱音の拳が男の腹にめり込む。


「ぐはっ!く、ぐぅ、ぐ」


男はたまらずしゃがみ込む。


(へ?)


マヌケな声が出そうになる。


(うっそーん、ななな、なんなんだー、あの子は!!!)


「弱っわ」


そう言い朱音は男を見下ろす。


「他の女の子がどうなろうが知った事じゃないし僕には関係ない、でも女の子を泣かせて悲しませて楽しんでるようなクズを見てると吐き気するんだよ!僕は男は嫌いなんだ、だ・か・ら、消えて?今度僕の目の前に入ったらマジで殺すからね?」


そう朱音に言われた男は静かに去って行った。


「出ておいでよ、僕が気付いていないと思ってたの?」


「う!」


俺は静かに姿を見せる。


「趣味が悪いな〜覗き見だなんて、あ!それとも僕が心配だったの?取られちゃうかも知れないって思ったの?オッケーって返事しちゃったらその後パコパコしちゃうって興奮しちゃってアソコを大きくしちゃったの?」


「やめんかーーー!!朱音さん、君はどこかおかしいよ、普通じゃない!俺は君が分からないし、怖いよ」


悲しみのようなそんな俺の表情に紅音はフッと笑うと静かに近付いて来た。


「おかしいかな?僕は素直なだけだよ?本当に男は死ぬほど嫌いだし」


「だったら俺もだろ?男だ!」


「アハハハハ、君は別だよ、君だけは特別なんだ、僕はね、君が欲しいんだ、君の全てを奪いたいんだ、なんなら今ここでする?いいよ❤後ろかろヤッてみる?初めてあげてもいいよ❤」


そう言い妖艶な顔で俺を見つめる。


「やめろ!!!」


俺は静かに朱音を引き離した、呼吸が乱れる、心臓が止まりそうだ。


「ねえ?君って切ない心でせつなって読むんでしょ?切ない?たまらない?本当は僕をめちゃくちゃに犯して汚してみたいんでしょ?」


朱音のその瞳はユラユラと淫欲に彩られていた、ジーッと覗き込めば引き返せなくなりそうだった。


「付き合ってられないよ」


そう言い俺はその場を後にしようとした、すると朱音に女の子とは思えない力で引き留められた。


「逃げるんだ?情けない、そんなだからお姉ちゃんにフラれたんだよ」


「え?」


「気付いてなかったの?僕、お姉ちゃんに似てるでしょ?あ、分からないか、じゃあこうしたら」


「え?」


そう言い朱音は長い髪を束ねた、するとそこにはあの時の女の子に瓜二つな女の子が居た。


「な、なんで、そんな」


「ふふ、驚いた?お姉ちゃん言ってたよ?身の程知らずが告ってきてキモかったってwww」


「やめてくれ、あの頃の事、思い出させないでくれ!!俺は変わったんだ!!!」


「ホントかな?ふふ、あははは」


目の前で笑う朱音、あの時の女の子と重なり何とも言えない感情に支配された。


「うぐ」


言葉に詰まる、身動きが取れない、すると朱音は


「なーんだ、やっぱりお姉ちゃんの言う通りだ、はぁ、なーさけな、同じなんだね、君も他の男と」


俺を見下すような朱音の瞳に今思えば我を忘れてたんだと思う。


「この!!」


ガっと朱音の腕を掴む、そして気が付いた時には朱音の唇にむしゃぶりつくようにキスをしていたんだ。


「んっ!?!」


一瞬驚いたような顔をしていたけどすぐに蕩けたような顔になっていた。


「んっ、ふふふ、んっチュッ❤ちゅるちゅる❤チュッチュッ❤チュルチュッ❤️」


朱音は舌を絡めてくる、さらに自らも求めるようにキスをしてくる。


「んッぐ!!」


「ふふふ、んッレロ❤チュルチュル❤チュッチュッ❤チュッチュルン❤」


いったいどれほどキスをしていたんだろうか?ふと我に返った俺はとっさに


「んむ!!!んっーー!!」


朱音の体を強く引き離した。


「んっ!チュルン❤」


「ハァハァハァ」


息が乱れる。


「ふふ、レロン❤ごちそうさま❤️チュ❤」


そう言うと朱音は自分の唇を舐めた。


「君は、君はいったい、なんなんだ!!」


そんな困り果てた俺に朱音は


「ふははは、教えてあげない❤」


目の前にいるのはとびきりの美少女なんかじゃない、小悪魔だ!俺の心を弄ぶのを楽しんでいる小悪魔だ。


「キスってこんな感じか、ま、初めてにしては満足かな、次はエッチしようね❤️」


悪びれる様子もなくそう言う朱音に俺は


「いやだ!!断る!!!もう知らん!」


そう言い残し俺はその場を足早に去って行った。


「あらら、残念、でもさ、やっと見つけたんだ、今さらお姉ちゃんや他の女になんかに取られてたまるか、君は僕のモノなんだから♥️あ〜、えっちする日が楽しみだな〜❤」


そんな事を思っていたなんてこの時は想像すらしていなかったんだ、しかもこれが朱音との出会いだったなんて今となっては消し去りたい過去でしかなかったんだ。