『レッド・オクトーバーを追え!』(原題:The Hunt for Red October)は、トム・クランシーによる小説『レッド・オクトーバーを追え』を原作として1990年に製作されたアメリカ映画。冷戦終結後の1990年に公開され、アカデミー音響効果賞を受賞した。

2011年3月25日には「スペシャル・コレクターズ・エディション」と題したBlu-ray Disc版がリリースされた。

 

 

 

監督    ジョン・マクティアナン

脚本    ラリー・ファーガスン

ドナルド・スチュワート

原作    トム・クランシー

『レッド・オクトーバーを追え』

製作    メイス・ニューフェルド

製作総指揮    ラリー・デ・ウェイ

ジェリー・シャーロック

出演者    ショーン・コネリー

アレック・ボールドウィン

音楽    ベイジル・ポールドゥリス

撮影    ヤン・デ・ボン

編集    デニス・ヴァークラー

ジョン・ライト

製作会社    ニーナ・サクスン・フィルムデザイン

メイス・ニューフェルド・プロダクションズ

配給    パラマウント映画

公開    米 1990年3月2日

日本 1990年7月13日

上映時間    135分

製作国    アメリカ合衆国

言語    英語

製作費    $30,000,000

興行収入    $200,512,643

配給収入    10億円 (日本)

ストーリー

1984年11月、冷戦時代のソ連。経験豊富なソ連の潜水艦艦長マルコ・ラミウスは、超静音航行システム「キャタピラー・ドライブ」を搭載した新型タイフーン級原子力潜水艦「レッド・オクトーバー(英語版)」の処女航海任務を任された。ラミウスはレッド・オクトーバーを指揮し、かつての教え子であるツポレフ艦長が指揮するアルファ級潜水艦「コノヴァロフ」と一緒に演習を行うためにムルマンスク港を出るが、まもなくラミウスは政治将校のイワン・プーチンを事故に見せかけて殺害し、アメリカ東海岸でミサイル訓練を行うと嘘の命令を艦内に伝える。実はラミウスは1年前の妻の死をきっかけにソ連政府に嫌気が差しており、ボロディン副長以下、信頼する子飼いの部下たちと共にアメリカへの亡命を企てていた。また、ラミウスは退路を断つために、亡命の意志を伝える手紙をソ連政府に送っており、間もなくソ連上層部はレッド・オクトーバーの追跡及び撃沈命令を出すと、演習と称して大西洋上への大部隊の展開を開始した。

同じ頃、ソ連の新型潜水艦の偵察任務を行なっていたアメリカ海軍のロサンゼルス級原子力潜水艦「ダラス」は、レッド・オクトーバーを発見し、情報を受けたアメリカ海軍上層部は潜水艦に精通するCIA分析官で元海兵隊員のジャック・ライアンに、新型潜水艦についての調査を命令する。間もなくライアンはレッド・オクトーバーが未だアメリカも実現できていないキャタピラー・ドライブを搭載していると気づく。しかし、時既に遅く、キャタピラー・ドライブを作動させたレッド・オクトーバーはダラスの前から姿を消し去っていた。

ソ連からの不確かな諜報情報が届く中、レッド・オクトーバーの目的について悩むアメリカ政府上層部であったが、ライアンはラミウスの意図が亡命であると見抜く。海軍上層部はライアンの予想を否定するものの、国家安全保障顧問ジェフリー・ペルトはライアンにその仮説を確認するための3日間の猶予を与える。そしてライアンはかつての事故のトラウマにより苦手な飛行機に乗せられ、大西洋の真ん中にある空母「エンタープライズ」へと派遣される。

一方、レッド・オクトーバーは順調に進んでいるように見えたが、内部にKGBと思われる人員が密かに潜り込んでおり、「キャタピラー・ドライブ」への破壊工作が発生する。やむを得ず通常航行にするが、その航行音によってソ連の哨戒機に発見され、魚雷攻撃を受ける。これは避けるものの、亡命の意図を知らない下士官や乗務員たちの間に不安が広がる。また、遅れながら撃沈命令を知ったツポレフは、ラミウスの航行ルートを正確に予測し、猛追する。同じく、ダラスのソナー技術者であるジョーンズは、水中音響ソフトを使ってレッド・オクトーバーを探知する方法を発見し、その軌跡から航行ルートを予測し、先回りをマンキューソ艦長に進言する。

レッド・オクトーバーを捕捉できず、業を煮やしたソ連政府は外交ルートを通じてアメリカに、ラミウスが錯乱し、アメリカにミサイル攻撃を行おうとしていると嘘をつき、アメリカ軍からも撃沈させるように仕向ける。猶予が無い中、ライアンはラミウスの亡命計画の中身を予測し、彼らと接触するために、荒れた海の中をレッド・オクトーバーを追跡中のダラスへと乗り込む。ライアンは、ソ連の嘘の情報を信じるマンキューソを説得すると、発見したレッド・オクトーバーに古典的なモールス信号を使って亡命の意図を察知していることや、それに協力する意志があることを伝える。内心で喜ぶラミウスは、当初の計画通り、原子力事故による放射能汚染が艦内に起きたように見せかけて、亡命計画を知らない下士官や一般兵たちを避難させるという形で海上へ出て艦外へと追い出す。そこにアメリカのペリー級ミサイルフリゲート「ルーベン・ジェームズ」がやってくると、ラミウスと彼の子飼いの士官たちは放射能汚染されていることになっている艦内に戻り、自分たちで迎撃すると嘘をつき、潜航する。

ライアン、マンキューソ、ジョーンズの3人は連絡艇を使ってレッド・オクトーバーに乗り込む。ラミウスと部下たちは彼らを快く迎え入れ、正式に亡命の意志を伝える。そこに追いついたコノヴァロフが魚雷攻撃をしてくる。更には例のKGBの人員がまだ艦内に残っており、銃撃によってボロディン副長が死亡し、さらにはレッド・オクトーバーを破壊するためミサイル庫を爆破しようとしている。同じく負傷したラミウスを残し、ライアンは単身でKGBの工作員を追い詰め、危機を救う。また、コノヴァロフの攻撃も加勢してきたダラスの副長らの攪乱作戦やラミウスの代わりにレッド・オクトーバーを指揮していたマンキューソの手腕によって失敗に終わり、逆にコノヴァロフがレッド・オクトーバーによって誘導されてきた魚雷によって撃沈される。このコノヴァロフの撃沈がレッド・オクトーバーが撃沈されたものと誤解されたことによってアメリカとソ連の外交問題は発生せずに済み、ラミウスらの亡命も成功した。

ソ連に探知されないために、ライアンの策によってレッド・オクトーバーは夜半のメイン州ペノブスコット川を俎上する。そこでラミウスは、ライアンに感謝しつつ、ソ連政府がレッド・オクトーバーを使ってアメリカへの無差別核攻撃を計画していること知り、嫌気が指して亡命したと明かす。また、ラミウスがクリストファー・コロンブスの言葉「海は人々に新しい希望をもたらす」を引用すると、ライアンは同意し「新世界へようこそ」と返す。

すべてが終わり、家族が待つ家へと帰る飛行機の中で、満足そうに眠るライアンのシーンで幕を閉じる。

 

ソ連ミサイル原潜(SSBN)「レッド・オクトーバー」

マルコ・ラミウス大佐[注釈 5](艦長) - ショーン・コネリー

ヴァシリー・ボロディン中佐(副長) - サム・ニール

グレゴリー・カマロフ大尉(航海長) - マイケル・ウェルデン

イワン・プーチン上級中尉(政治士官) - ピーター・ファース

ヴィクター・スラヴィン上級中尉 - ボリス・リー・クルトノグ

アナトリー上級中尉 - アナトリー・ダビドフ

アレキサンダー・メレキン機関上級中尉(機関長) - ロナルド・ガットマン

エフゲニー・ペトロフ軍医上級中尉(軍医長) - ティム・カリー

中尉 - イワン・グヴェラ

ユーリ少尉 - アルトゥール・キブルスキー

イゴール・ロギノフ主計兵(烹水員) - トーマス・アラナ

中央情報局(CIA)

ジャック・ライアン(情報分析官) - アレック・ボールドウィン

ジェームズ・グリーア中将(CIA次官) - ジェームズ・アール・ジョーンズ

アメリカ海軍攻撃型原潜(SSN)「ダラス」[編集]

バート・マンキューソ中佐(艦長) - スコット・グレン

フレッド・ダルトン・トンプソン少佐(副長) - アンソニー・ペック

ビル・スタイナー少佐(深海救難艇指揮官) - ティモシー・カーハート

ワトソン上等兵曹(先任伍長) - ラリー・ファーガソン

ロナルド・ジョーンズ二等兵曹(ソナー員) - コートニー・B・ヴァンス

ボーモント水兵(ソナー員) - ネッド・ヴォーン

ソ連攻撃型原潜(SSN) コノヴァロフ

ビクター・ツポレフ中佐(艦長) - ステラン・スカルスガルド

アンドレイ・ボノヴィア大尉(副長) - クリストファー・ヤンチャク

ソ連関係者

アンドレイ・ルイセンコ(ソ連の駐米大使) - ジョス・アクランド

ユーリ・イリイチ・パドーリン提督(赤色艦隊政治局長) - ピーター・ツィンナー

アメリカ関係者

ジェフリー・ペルト(国家安全保障担当大統領補佐官) - リチャード・ジョーダン

スキップ・タイラー(海軍兵学校教官、元潜水艦長) - ジェフリー・ジョーンズ

ジョシュア・ペインター少将(原子力空母 エンタープライズ乗艦 空母戦闘群司令官) - フレッド・トンプソン

 

 

映画版ではラミウスやボロディンらのソ連人役のキャストは映画冒頭ではロシア語を話しているが、政治士官プーチンが艦長室でラミウスの私物の聖書の黙示録を読むシーンの「ハルマゲドン」の単語から英語にスイッチしている(ただ、後の場面でもロシア語で話すシーンが所々にある)。

イギリスのゲーム会社JagexのMMORPG『RuneScape』のクエスト、「Cold war」と続編『The hunt for red raktuber』はこの映画から取られている。

日本語字幕・吹き替えでは扱われない要素だが、レッド・オクトーバーを追跡するダラスの腕利きソナー員であるジョーンズ兵曹の台詞にはクラシック音楽(マクティアナン監督はジュリアード音楽院で学んだ)やオーディオヴィジュアルに関する、平易に理解し難い知識が含まれている。レッド・オクトーバーの推進音を探しながら"S/N比が劣化して(Signal to noise ratio's dropping.)"と呟き、コノヴァロフの魚雷の特徴を米軍の魚雷より「ピッチが高い(pitch is too high.)」と表現する。

映画終盤、魚雷を回避するためダラスが緊急浮上するシーンにおいて副長の指示に「緊急ベル」と字幕が表示されるが、これは「エマージェンシー・ブロー」(Emergency Blow)の誤訳である。

 

 

役名             俳優          

                        ソフト版    TBS版    テレビ朝日版

マルコ・ラミウス       ショーン・コネリー       小林清志    若山弦蔵    坂口芳貞

ジャック・ライアン      アレック・ボールドウィン    富山敬    大塚芳忠    江原正士

バート・マンキューソ     スコット・グレン        納谷六朗    千田光男    田中信夫

ジェームズ・グリーア     ジェームズ・アール・ジョーンズ    加藤正之    藤本譲

ヴァシリー・ボロディン    サム・ニール          西村知道    池田勝    小川真司

アンドレイ・ルイセンコ    ジョス・アクランド       今西正男    亀井三郎    中庸助

ジェフリー・ペルト      リチャード・ジョーダン     吉水慶    有本欽隆    仲野裕

イワン・プーチン       ピーター・ファース       稲葉実    小島敏彦    牛山茂

ペトロフ           ティム・カリー         辻親八    西村知道    後藤哲夫

ロナルド・ジョーンズ     コートニー・B・ヴァンス     荒川太朗    星野充昭    高木渉

ツポレフ           ステラン・スカルスガルド    稲葉実    金尾哲夫    中田和宏

スキップ・タイラー      ジェフリー・ジョーンズ     田原アルノ    津田英三    稲葉実

ビル・スタイナー       ティモシー・カーハート

ジョシュア・ペインター    フレッド・トンプソン

ダヴェンポート        ダニエル・デイヴィス

ボモント           ネッド・ヴォーン

トンプソン          アンソニー・ペック

ファーガソン         ラリー・ファーガソン

メレキン           ロナルド・ガットマン

ロギノフ           トーマス・アラナ   

カマロフ           マイケル・ウェルデン

 

私的にはTBS版の声が良かったかなあ?

軍事サスペンスとしてのレベルは高く、ジャック・ライアンのキャラ構築にも成功していて、シリーズでは最高の出来だと思います。ラミウス側の整理がうまくつけられていない点のみ残念であり、ここをうまくやっつけられていれば傑作の部類に入ったかもしれません。

 

『ダイ・ハード』のジョン・マクティアナン監督がメガホンを握った傑作サスペンス。複雑なプロットを分かり易く見せており、ラミウスとライアンが繰り広げる頭脳戦の駆け引きが面白い。また、潜水艦同士の攻防など、手に汗握るアクションシーンも満載だ。「ジャック・ライアン」シリーズでは度々役者が変わっているが、アレック・ボールドウィンは適役だ。シリーズ中では、今作と『今そこにある危機』がお薦め。(MIHOシネマ編集部)

 

監督    ジョン・マクティアナン

1951年生まれ。名門ジュリアード音楽院で学び、ピアース・ブロスナン主演のホラー『ノーマッズ』(1986年)で監督デビュー。『プレデター』(1987年)、『ダイ・ハード』(1988年)そして本作と、キャリア初期には奇跡のような名作を連打し、90年代初期には次世代を担う監督としてジェームズ・キャメロンと並ぶほどの注目を浴びていた。なお、B級映画のマスターピース『コマンドー』(1985年)の監督オファーも受けていたらしい。また、『ダイ・ハード2』(1990年)の監督オファーを受けていたものの、本作とスケジュールが競合して、やむなく降板。

ソニーピクチャーズの期待作『ラスト・アクション・ヒーロー』(1993年)を期待外れの結果に終わらせた当たりからキャリアが怪しくなり、シリーズ復帰作『ダイ・ハード3』(1995年)で持ち直したものの、『13ウォーリアーズ』(1998年)が製作費1億6000万ドルに対して世界興収6,100万ドルという爆死で完全に失速。

2006年にはFBIへの偽証罪で逮捕され、12か月の実刑を受ける。2019年時点での最後の監督作はジョン・トラボルタ主演の『閉ざされた森』(2003年)となっている。

 

感想

ショーン・コネリーの魅力いっぱいの映画だが、私には副長のサム・ニールも捨てがたい存在である。

 

最近では「ジュラシック・パーク」で日本のお茶の間では有名であるが、私的には「オーメン」シリーズしかない。

 

 

北アイルランドのオマー生まれ。父親は英国軍人(但しニュージーランド人)、母親は英国人。幼少期にニュージーランドへ移住する。クライストチャーチの名門校クライスト・カレッジを卒業後、カンタベリー大学にて英文学を専攻する。同時期に演劇と出会い、カンタベリー大学を中途退学、ウェリントンへ移りヴィクトリア大学ウェリントンを卒業する。

『わが青春の輝き』に出演していたニールを見た俳優ジェームズ・メイソンがプロデューサーたちに推薦状を書き送ったところ、そのうちの一通が『オーメン』完結編『オーメン/最後の闘争』の主役を探していたハーヴェイ・バーンハートの元に届き、スクリーンテストを受けて採用され、一躍注目されるようになる。

1980年には、イザベル・アジャーニ主演のカルト作品『ポゼッション』で鬼気迫る演技を見せ、ヨーロッパでも顔が知られるようになった。以降は、サスペンスやSFなどで凛としたエリートや屈折した悪役を演じたり、『ケインとアベル』をはじめとするTV映画でも癖のある主人公を演じている。

1991年に大英帝国勲章、2006年にニュージーランド・メリット勲章を授与されている。

「悪魔」という嫌われ役から入り、大ヒットし、一躍有名となった役者も珍しい。