『十三人の刺客』(じゅうさんにんのしかく)は、2010年の日本の時代劇映画。1963年の映画『十三人の刺客』を三池崇史の監督によりリメイクした作品。PG12指定。テレビ朝日・東宝提携作品。

 

 

監督    三池崇史

脚本    天願大介

製作    「十三人の刺客」製作委員会

製作総指揮    中沢敏明

ジェレミー・トーマス

平城隆司

出演者    役所広司

松方弘樹

山田孝之

伊勢谷友介

沢村一樹

古田新太

高岡蒼甫

六角精児

波岡一喜

近藤公園

石垣佑磨

窪田正孝

伊原剛志

光石研

吹石一恵

谷村美月

斎藤工

阿部進之介

内野聖陽

岸部一徳

平幹二朗

松本幸四郎

稲垣吾郎

市村正親

音楽    遠藤浩二

撮影    北信康

編集    山下健治

製作会社    セディックインターナショナル

配給    東宝

米 マグノリア・ピクチャーズ

英 Artificial Eye

公開    2010年9月25日

米 2011年4月29日

英 2011年5月6日

上映時間    日 141分(オリジナル)

海外 126分(海外公開版)

製作国   日本 イギリス

製作費    $6,000,000(見積値)

興行収入    日本の旗 16.0億円

米、加  $802,778

全世界 $18,689,058

「斬って、斬って、斬りまくれ!!」

 

ストーリー

時は江戸時代後期の弘化元年(1844年)。将軍の異母弟にあたる明石藩主松平斉韶は暴虐・無法の振舞い多く、明石藩江戸家老間宮図書は老中土井大炊頭屋敷前にて切腹、憤死した。幕閣では大炊頭を中心に善後策を検討したが、将軍の意により、斉韶にはお咎めなしとなった。斉韶の老中就任が来春に内定していることを知る大炊頭は、やむなく暗黙のうちに斉韶を討ち取ることを決意し、御目付役の島田新左衛門を呼び出した。

新左衛門は大炊頭の意を受け、斉韶を討つべく仲間を集める。新左衛門に恩のある浪人の平山九十郎。友人である御徒目付組頭の倉永左平太とその配下である三橋軍次郎。三橋の配下である樋口源内、堀井弥八、日置八十吉、大竹茂助。長年、島田家に仕えている一族の石塚利平。以上8名が集まった。

一方、斉韶の配下である明石藩御用人千石鬼頭半兵衛は大炊頭の不審な動きを察知し、明石藩近習頭浅川十太夫と共に嘗ての同門でもある新左衛門の動きを探る。その過程で浅川は明石藩近習出口源四郎らを嗾け、八十吉を拉致して情報を手に入れようとするが駆け付けた九十郎によって出口らは切り捨てられ、それによって半兵衛は新左衛門の企みを理解する。

新左衛門の元には九十郎の門弟である小倉庄次郎、金二百両との引き換えに参加を申し出た浪人の佐原平蔵、新左衛門の甥である島田新六郎が新たに加わる。

12人となった一行は嘗て息子とその妻を斉韶に戯れで惨殺された尾張家木曽上松陣屋詰牧野靭負の協力を得て、参勤交代帰国途上の中山道落合宿にて斉韶を討つことにした。

落合宿に向かう道中の山中で出合った山の民である木賀小弥太を仲間に加え、13人となった一行は落合宿を大金で宿場ごと買い取り、様々な罠を仕掛け、斉韶一行を待ち構える。

半兵衛は200人以上の護衛を用意して対抗。落合宿にやってきた斉韶一行と新左衛門ら十三人の刺客が激突する。

死闘の末、斉韶の護衛は半兵衛を含めた3人にまで減り、刺客側は新左衛門と新六郎の2人以外は力尽きる。

半兵衛は新左衛門に1対1の決闘を挑むも敗死。新六郎が残った2人の護衛と戦っている間に新左衛門はお飾りと罵られて激昂した斉韶と相打ちになる。 斉韶は受けた傷に苦しみながらも「今日という日が今までで最も楽しかった」と新左衛門に礼を述べた後に首を刎ねられて死に、新左衛門も力尽きる。

生き残った新六郎は息を吹き返した小弥太と別れ、一人帰路につくのだった。

 

 

島田新左衛門(御目付七百五十石):役所広司

島田新六郎(新左衛門の甥):山田孝之

倉永左平太(御徒目付組頭):松方弘樹

三橋軍次郎(御小人目付組頭):沢村一樹

樋口源内(御小人目付):石垣佑磨

堀井弥八(御小人目付):近藤公園

日置八十吉(御徒目付):高岡蒼甫

大竹茂助(御徒目付):六角精児

石塚利平(足軽):波岡一喜

平山九十郎(浪人・剣豪):伊原剛志

佐原平蔵(浪人・槍の名手):古田新太

小倉庄次郎(平山九十郎の門弟):窪田正孝

木賀小弥太(山の民):伊勢谷友介

明石藩

松平左兵衛督斉韶:稲垣吾郎

鬼頭半兵衛(明石藩御用人千石):市村正親

間宮図書(明石藩江戸家老):内野聖陽

浅川十太夫(明石藩近習頭):光石研

出口源四郎(明石藩近習):阿部進之介

幕府

土井大炊頭利位(江戸幕府・老中):平幹二朗

尾張藩

牧野靭負(尾張家木曽上松陣屋詰):九代目松本幸四郎

牧野妥女(靭負の息子):斎藤工

牧野千世(妥女の妻):谷村美月

その他

芸妓お艶・山の女ウパシ(2役):吹石一恵

三州屋徳兵衛(落合宿庄屋):岸部一徳

両腕両足の無い女:茂手木桜子

賭場のヤクザ:斎藤歩

上杉祥三・高川裕也・神楽坂恵・峰蘭太郎・笹木俊志・増島愛浩・福本清三ほか

 

2010年5月30日、テレビ朝日系「日曜洋画劇場」冒頭で映像が初公開された。

予告編やテレビCMにイメージソングとしてイーグルスの『デスペラード(ならず者)』が使用された。

2010年7月29日、ヴェネツィア国際映画祭最高賞である金獅子賞などの対象となるコンペティション部門に『ノルウェイの森』とともに出品された。

島田新左衛門役の役所と松平役の稲垣は2004年に『笑の大学』で共演しており、事実上2度目の共演であった。

全国312スクリーンで公開され、2010年9月25,26日初日2日間で興収2億2837万5200円、動員は18万8986になり映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)で初登場第3位となり、更に『THE LAST MESSAGE 海猿』『君に届け』と合わせ東宝作品が上位3位を独占した。また、『ぴあ』初日満足度ランキング(ぴあ映画生活調べ)でも第3位と高評価されている。

第40回ロッテルダム国際映画祭(オランダ)で2011年1月29日に招待上映された。なお、ヴェネツィア国際映画祭などで上映された15分短い海外バージョンではなく、日本公開版が上映された(海外バージョンでは、斉韶が犬食いをするシーンや小弥太と徳兵衛のコミカルなシーンなどが削られている)。

2011年7月1日から14日まで開催される第10回ニューヨーク・アジアン・フィルム・フェスティバル(en:New York Asian Film Festival)にてノーカット版(日本公開版)が上映される予定。

劇中で『伊那、駒ヶ根を通って飯田』と三州街道の宿場を指して話し合っているシーンなど、何度か『駒ヶ根』という地名が出てくるが、『駒ヶ根』は昭和の大合併の際に誕生した地名であり、江戸時代には存在していない。ちなみに、地図では「上穂(うわぶ)宿」と書かれている。また『伊那』は本来は郡名であり、現在の伊那市は江戸時代には「伊那部」と呼ばれていた。

松方弘樹は殺陣の指導にも協力し、エキストラに刀の扱い方や足の運び、立ち回り方などを教えたが、なかなか思い通りにならず、苦労したとインタビューで答えている。

シッチェス・カタロニア国際映画祭(スペイン)

観客賞

最優秀美術賞(林田裕至)

第23回日刊スポーツ映画大賞

監督賞(三池崇史)

助演男優賞(稲垣吾郎)

第32回ヨコハマ映画祭

2010年日本映画ベストテン第1位

2010年日本映画個人賞

作品賞

監督賞(三池崇史)

脚本賞(天願大介)

第34回日本アカデミー賞

優秀作品賞

優秀監督賞(三池崇史)

優秀脚本賞(天願大介)

優秀主演男優賞(役所広司)

優秀音楽賞(遠藤浩二)

優秀撮影賞および最優秀撮影賞(北信康)

優秀照明賞および最優秀照明賞(渡部嘉)

優秀美術賞および最優秀美術賞(林田裕至)

優秀録音賞および最優秀録音賞(中村淳)

優秀編集賞(山下健治)

第65回毎日映画コンクール

監督賞(三池崇史)

男優助演賞(稲垣吾郎)

録音賞(中村淳)

日本シナリオ作家協会「菊島隆三賞」

天願大介

おおさかシネマフェスティバル

監督賞(三池崇史)

助演女優賞(谷村美月) ※『おにいちゃんのハナビ』『ボックス!』での助演も含む。

第15回日本インターネット映画大賞

主演男優賞(役所広司)

助演男優賞(稲垣吾郎)

作品賞(ベストテン)第3位

第5回アジア・フィルム・アワード

最優秀美術賞(林田裕至)

ファンタジア・フェスティバル(Fantasia International Film Festival、2011年7月14日から8月7日までカナダ・モントリオールで開催)

観客賞部門 長編アジア映画 金賞(『冷たい熱帯魚』と同率1位)

 

評価、感想

なんと言っても松平左兵衛督斉韶役の稲垣吾郎が光る。

いや、もちろん役所広司が逸品には変わりはないのだが。

そして恥ずかしながら市村正親を知ったのも、伊勢谷友介を知ったのもこの映画が最初。

伊勢谷友介についてはあんなことがなかったら?と残念でならない。

「るろうに剣心」でも良い役所だが、オーバーリアクションでその辺りは沢口靖子に見習わせたいところ。

いくら体が頑丈とは言え、あれだけやられて不死身はちょっと?

落合宿の岸部一徳も良い感じ。

ただ、木賀小弥太(伊勢谷)が落合宿でもう抱く女がなくなった時、三州屋徳兵衛(落合宿庄屋)(岸部)の"ケツ"を試すシーンだけはいただけなかった。

両腕両足の無い女(茂手木桜子)の演技、登場が印象的。

(修正済み)

 

 何かとラスト50分のバトルばかりに注目が集まりがちだが、本作の真価はそこではない。確かに13人対300人という荒唐無稽に思える集団抗争は、単なる斬り合いを超え、仕掛けあり肉弾戦ありで娯楽マインドが炸裂する。あくまでも今風の芝居を貫く役所広司や山田孝之。東映時代劇の型を継承し流麗な殺陣で魅せる松方弘樹。脚本担当の天願大介の父・今村昌平作品を彷彿とさせる土着性を感じさせ、侍という特権階級を対象化する“山の民”伊勢谷友介。多様なキャラクターが入り乱れ、カオス状態によってこそ三池ワールドは生彩を放つ。惜しむらくは13人のうち5、6人の彫り込みは浅く、長丁場を一気に運ぶ生理も希薄だが、名誉の戦は阿鼻叫喚の図に到り、武士の矜恃に向ける冷ややかな視線は興味深い。

 

 では肝は何か。傑作の誉れ高いオリジナル版を蘇生させ、凄絶な命懸けの戦いにリアリティを与えたもの、それは「悪」の造形に他ならない。稲垣吾郎扮する権力者は、現代の病が結晶化した姿だ。庶民を捕まえては無表情に繰り返す陵辱と殺戮。誰でもよかったと言わんばかりに残虐非道の限りを尽くし、太平の世に生の証しを求める。虚無の果てに到達する狂気。討たねばならぬ存在として、国民的アイドルのメンバーの一員を抜擢したことは快挙といえる。これは決して“時代劇版「クローズZERO」”ではない。原作ファンやティーンへの媚びへつらいが常態化した日本映画の製作環境にあって、仄かな希望を抱かせる事件をゆめゆめ見逃してはならない。