黄楊

寝ている先輩の肩に頭をちょんと乗せて目をつむった
ただそれだけで胸がドキドキしたわ
それ以上の事なんか思ったこともない
そうよ、傍にいれたら嬉しかった

「清純な女なのよ」

待って、何か違うわ
そうじゃない
私は夢の為には手段を選ばない女でもあるの

「そうよ、禁欲的に生きてきたんだわ」

あの時だって先輩が隣で寝ている私の頭を抱き寄せて
キスをしようとしたらきっと拒まなかったに決まっている
結果的には、何もなかったけれど

「でも、キスがしたいとかそんなものじゃなくて」

体の奥底で何かが蠢いた気がした
小さく縮こまっていたのに、少しづつ体をくねらせ広がった
泣かせて「お願いします」って言わせたい
魔物の感情

「私・・・アブナイ女だったわ」





医仙は俺の首に両手の指先を這わせ
耳の少し後ろをその指の腹でやわく円を描いた
「腫れてないわ」
またもどかしいくらいの早さで首を伝い下ろし首の根元を同じように撫でる
「ここも大丈夫」
「なんですか、それは」
「リンパが腫れてないか確認しているのよ」
言い終わるか否か、俺の合わせを両手で力強く割開いた
先程の柔さは何処へいった
「ここからが本題だから」
「もういいです。俺は何ともない」
「あのね、健康診断に病人です!とは来ないのよ」
俺の肩を散々手で揉み「良い肩しているわ」などと独り言をはく
「もう気が済んだでしょう」
「まだまだ」
今度は俺の胸をトントンと軽く叩き顔を近づけてきた
「何をするのです」
「心臓の音を聞こうかと」
「大丈夫、動いています」
「なに言っているのよ、止まっていたら大変じゃない」
貴女の耳が俺の胸にぴたりとくっついた
その耳は、少しばかり冷んやりとしていた
「雑音ナシ」
「医仙、貴女は健康診断と言い皆にこの様な事をしているのですか?」
「してないわ」
「では此れはなんです」
「特別バージョン」
医仙の手が俺の腹の周りを撫ぜ、脇腹に差し込まれた
抱きしめられるような体勢になり、俺の鼻に医仙の髪が触れた
どこかで嗅いだことのある匂いだ

「どこにもしこりは無いわね」

貴女の吐く息が俺の腹に触れた
太腿の表面から妙な粟立ちが這い上がってきた
この感覚は

「医仙、もう良いのでは」
「そう?膝も診たいんだけど」
「膝は、ほら見てください。曲がります。ほら・・・膝が」
「なら、くるぶしは?」
「くるぶしもカクカク曲がりますよ」
「そう、ちょっとだけ」

なりません、縛られた腕から熱い血がざわめき一点に集まっていく
とても不味い
身動き取れぬ状況下で、貴女の手が俺の素肌に触れ、息がかかる

「良いわね、大丈夫・・・」

やっと解放される

「解くわね」

右手の縛めが解かれ、次は左手も・・・
起きあがろうとしたが、時は既に遅かった

「どうしたの隊長」

医仙の声が遠くで聞こえた気がした
縛められたのが、原因か
それとも貴女が俺を縛めたのが原因か
答えを早急に出せねば

「トクマン、おい。寝ているのか」

半日悩んだ末にトクマンを起こし
自らの腰紐を放り投げた
「縛ってみろ」
手首がキリキリと痛むほどトクマンに縛られたが不快なだけだ
とんでもない
俺は心の中で呟いた

「とんでもない」

だが、声は意図せず漏れ出てしまった
もっと身動き出来ぬくらいに締めあげられ攻められたら
また身体中の血が沸騰しだした