前の「バンタン七不思議 テヒョン編」を書いているときに、いきなりストーリーが舞い降りました。
忘れちゃう前に書き留めます。
あくまでも自己満足の範疇ですので、童話みたいな話はノーサンキューの方は無理しないで下さいね。
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遥か遠くの雲の上、万物を統べる神に愛でられた天使たちが、穏やかに暮らしていました。
「天使の庭」通称「バンタン」で暮らし始めた時から、ジミンとテヒョンは、いつも一緒でした。
穏やかで笑顔あふれるバンタンでの生活は、とても幸せで、ジミンとテヒョンは、それが終わることなど考えたこともありませんでした。
ところが………
美しい天使が集うバンタンで、ひときわ美しいテヒョンは、ジミンの目の前で、邪悪な悪魔に連れ去られてしまいました。
悪魔は美しいものを汚すのが大好きです。純粋でキレイな心のテヒョンを、天界から連れ出せば、押し寄せる負の感情が彼を汚し、純白の羽は、やがて黒くそまる。
その間、テヒョンが絶望と挫折に苦悩する様を見て、悪魔は笑うのです。
もっと苦しめと……
テヒョンを失ったジミンは、悲しみに暮れて、毎日嘆き続けていました。
その悲しみはあまりに深く、気の毒に思った「神の使い」の小鳥たちが、四方八方 飛び回り、テヒョンを探してくれました。
それによれば、悪魔は、天界の門を破り、美しい天使を拐ったことに満足して、すぐにテヒョンを人間界に捨ててしまったそうです。
人間界………
沢山の感情が交錯し、幸せになることも、悪に染まることもできる場所だと聞いています。
悪魔がテヒョンを人間界に堕したと言うのなら、幸せなはずがない………
彼はもう、ジミンの知っているテヒョンではないかも知れないよ。諦めなさいと神の使いは言います。
でも、そこにテヒョンがいると言うのなら、ジミンに迷いはありません。探しに行くだけです。
但し、天使は神様の許しがなければ人界に降りることはできません。
そして、その許可は、なかなか降りないのです。
あるよ。それはね、その真っ白でキレイな羽に大きな傷を負うことさ。
傷ついた天使は、傷を癒すために人界で過ごすらしいよ。
自分で羽を抜いて、まんまと人間界に行った天使もいるそうだよ。
天界の門の外から悪魔が囁きます。
いつもなら無視する戯れ言ですが、この時のジミンは、藁をもつかむ思いだったので、信じてしまいました。
意を決したジミンは、自ら羽を抜き始めました。
筆舌に尽くしがたい激痛と、沢山の血が流れましたが、ジミンは震える手で羽を抜き続けました。
それを見ていた4人の兄と、弟のジョングクは、止めさせようとしますが、ジミンは大粒の涙をこぼしながら、テヒョンを連れ戻したいと訴え、羽を抜き続けます。
くる日も、くる日も羽を抜き続けるジミンは、やがて衰弱し、このままでは死んでしまうと思われました。
4人の兄とジョングクは、話し合いをして、とても辛い決断をしました。
「ジミン、おいで」
ジミンを囲んだ4人の兄とジョングクは、自分の左胸に手を当て、凄まじい苦しみの末に美しい珠を取り出しました。
「ヒョン、ジョングク、ダメだ。そんなことしたら……」
その珠は、神が天使に与えた祝福。それを手放すことは、天使でいられなくなるということです。
そしてそれは、彼らの存在すべてがこの世からなくなって消滅すると言うこと。
自分のテヒョンを探したいと言う思いが、大好きな兄たちと弟を消し去ってしまう。
ジミンは、絶望の縁にたち、生まれて初めて「憎しみ」という感情を覚えました。
悪魔が気まぐれでテヒョンを連れ去らなければ、こんなことには……悪魔が………憎い………
ダメだよ、ジミン。憎しみは心を曇らせ、テヒョンを探せなくなってしまうよ。
テヒョンは、僕らにとっても可愛い弟だから、きっと助けて上げてね。
泣かないでジミン。僕たちは7人揃わなければダメなんだ。このままテヒョンが戻らず、お前まで死んでしまったら、もうここはバンタンではなくなってしまうんだよ。
でも、ジン兄さん、僕たち二人が戻っても、皆がいなければ………
その時は、二人で神様に僕らの復活をお願いしてね。
ヒョン、本当は僕だけでも一緒に行こうかと思ったんだけど、精霊の長が、天界の門を抜けるには兄さんたちだけのパワーじゃ足りないって言ってるのを聞いちゃったんだ。
兄さんたちは、それを僕に隠して、自分たちだけ逝こうとしたんだけどさ、ヒョンが無事に人間界に行けなきゃ全部が無駄になっちゃうから、僕も兄さんたちと逝くことにしました。
ひとりにしちゃって、ごめんなさい。
グガぁ~
でもね、側にいるから。ずっと側にいて、ヒョンが危ない時は必ず守るから。
そう言っているうちに、ジョングクと4人の兄たちの姿が透き通り、やがて空気に溶けるように消えて行きました。