第080話 力への意志
優弥から連絡が来たのは午後の3時近くだった。
「本当にごめん!」
と何度も謝る優弥から
来られなかった理由を聞いて
私は思わず笑いそうになる。
「接待でボトルを2本開けさせられてさ、
店箔したんだけど起きられなかった…。」
これが中絶手術に付き添えなかった優弥の理由だ。
優弥に対してムカつくとか
酷いとかいう感情は沸いてこない。
悲しくもないし怒りも感じない。
何も感じない自分を少し残念に思う。
「優弥!さみしかった!つらかったよ!」
そう泣きつけばいいのかもしれない。
「優弥!酷いよ!信じられないよ!」
そうやって優弥を責めればいいのかもしれない。
でも、どちらの言葉も出てこない。
心はすっかり空っぽで
感情が完全に枯渇している。
優弥はそれから
彼女とは別れる事になりそうだとか
少し落ち着いたらおいしいシャンパンを飲みに行こうだとか
いろいろ言ってくれたけれど
私の感情が二度と揺れる事はなかった。
必死に謝る優弥をなんだかかわいそうに思う。
彼女と別れたりしなくていいよ!
と言いたかったけれど
優弥の好きにすればいいか。
と思いなおし
「そっか。」とだけ言う。
もうどうでもいいし
興味が持てない。
恋の終わりを感じながら
「大丈夫。落ち着いたら遊びに行くね。」
そう平然と言う自分を不思議に思う。
私は今の状況を受け入れられているんだろうか?
それとも全ての出来事にもう自分の心が
何も反応しなくなってしまったのだろうか?
あんなに好きでたまらなかったのに…。
優弥を好きな事だけが私の生きる理由だったのに…。
一体これからどうすればいいんだろう。
もう恋なんて絶対にしたくないと思う。
人を好きになると
不安になるし傷つくだけだ。
希望は幻想に過ぎないし
約束には裏切りがついてまわる。
もっと強くなりたい。
もっと揺るぎない力が欲しい。
自分の立場を
自分の居場所を
もっともっと確実で屈強なものにしたい。
夜の街で女王様でいるだけでは全然足りない。
生きるために必要なものは男や恋じゃなく
力と強さだったんだ。
私は失くした恋の代わりに
力への意志が漲っていった。
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