第138話 ときめきと戸惑い
右方向からの強烈な視線は激しさを増している。
ヒカルが私の手を持ち上げ
手のひらを重ねてくる。
私たちは
手のひらを合わせて大きさを比べあう。
「ヒカルの手って大きいんだねぇ~」
私がじゃれつくと
ヒカルは私の指と指の間に自分の指を嵌め込んで
ニギニギと握ってくる。
よく恋人同士がやっている様なラブラブな光景を
右側の彼女に見せ付けているのだ。
私は小首を傾げてわざとらしく微笑む。
ヒカルはウィンクしてから立ち上がり
一本のボトルを持って戻ってきた。
私のテーブルに置かれたボトルは
28万円のコニャックだった。
ホストクラブでは
お客さん同士の見栄の張り合いで
飾りボトルというのを置く人がいるらしい。
飲んでいるボトルの他に
何本かの高価なボトルを入れて
自分のテーブルに並べる事で
上客であるとアピールするそうだ。
私のテーブルに置かれた飾りボトルは
もちろんフェイクで
ヒカルの作戦の小道具だった。
私はマジックを受け取り
ネームプレートに『まりも』と書き
ヒカルがボトルにそれをかけた。
ヒカルは大袈裟に喜んで見せ
私の頭を撫でたり肩に手を回したりしてくる。
右側の彼女がすごい形相で睨みつけてくるので
私は「いい気味」というかんじで口の端で笑い
ツンとそっぽを向いてヒカルとまた話し始めた。
それから10分程たち
彼女の席についていたヘルプの男の子がヒカルに何かを伝えにきた。
「きたかな」
ヒカルが不敵な笑みを浮かべる。
ヘルプの男の子がヒカルに耳打ちをして
肩のあたりとポンと叩く。
ヒカルは意味ありげなウィンクを私に投げ
「ちょっと待っていてね。」
と席を離れていった。
ドキドキしながら横目で様子を伺っていると
ヒカルの作戦通りに事が運んだようだ。
ヘルス嬢の彼女が
私のテーブルに置いてあるボトルと同じものを入れている。
まだふてくされている彼女の席で
ヒカルはうれしそうにはしゃいで機嫌を取っている。
ヒカルはウェイターに歌本も見ないまま番号を伝え
彼女の手を握ってカラオケを歌い始めた。
『そばにいるよ』
というタイトルの曲だった。
ヒカルは今まで聞いた誰よりも歌が上手だ。
いい歌だなぁ~・・・と私が聞き惚れていると
彼女の方もウットリとした顔で
悦に入っているご様子だ。
ヒカルの思惑通りだ。
ヒカルは私にこう言っていた。
「うんと俺にベタベタして彼女を挑発して欲しいんだ。」
「俺がまりもちゃんの席を離れないのは
まりもちゃんが高いボトルをいれたからだって思わせるからね。
嫉妬心がMAXになって耐えられなくなったら同じ手を使ってくるはずだから。」
「嫉妬心の強い女の子にはうんとヤキモチを妬かせた後で優しくしてあげるんだ。
イライラや不安といった負の感情を味あわせた後で幸せにしてあげると
感情の極端なブレが幸福感を倍増させるんだよ。」
私はヒカルの凄さに
トキメキと戸惑い
二つの感情を感じている。
そして
この作戦はまだ第一段階なのだ。
ヒカルはこの歌で女を口説いていました。『そばにいるよ』 いい歌なんだよなぁ~。w
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