第140話 自尊心
「ごめんね、 お待たせ! けっこう酔っ払ったかも~」
ちょっとおちゃらけながら
ヒカルが私の席に戻ってきた。
「まりもちゃん、今日最後までいてくれる? 一緒に帰ろう。」
「うん・・・。 でも私、明日もグラビアの仕事で早いんだ。
今日はそろそろ帰ろうと思ってたところ。」
「え! そうなのかー。 それは無理は言えないな。」
「うん、ごめんね。楽しかったよぉ、明日仕事終わったら電話するからさ。」
「わかった。じゃ、タクシーまで送るよ。」
今の私はヒカルへの感情を
どう取り扱っていいのかよく分からないでいる。
ヒカルへの気持ちが自分の中で消化不良なのだ。
今日のヒカルの一連のパフォーマンスは鮮やかで
私はとても衝撃を受けたけれど
トキメキが加速する反面
どうしても警戒心が捨てきれないでいる。
自分の気持ちを整理する時間が欲しい。
エレベーターに乗ると
ヒカルは優しく肩を抱いてくれて
私はキスをしたい衝動に駆られた。
ヒカルは
そんな私の気持ちを察したのか
唇を重ねてきた。
「今日はありがとう。」
ヒカルの瞳に吸い込まれそうになる。
「こちらこそ、ごちそうさま。 電話するわね。」
私は何事もなかった様にタクシーに乗り込み
ヒカルに手を振ったけれど
本当は胸がドキドキして
たまらない気持ちになっていた。
ヒカル・・・。
ヒカルの事を好きな女の子はきっといっぱいいる。
私が想像している以上に・・・。
ヒカルと付き合うって事は
そういう女の子達とヒカルを共有する事になるのだろうか。
今日来ていた
ヘルス嬢の女の子もエースの女の子も
恋をしている女の子特有の綺麗な笑顔を見せていた。
そこにお金が絡んでいたとしても
ヒカルがあの子達を幸せにしているのは確かな事なのだ。
私は今日のヒカルを見ていて
彼女達をだましているとは思わなかった。
嫉妬心を煽ったり
自己顕示欲をくすぐったり
女心を巧みに操りながら
ちゃんとそれぞれを幸せにしてあげていた。
作戦の全貌を知っている私としては
「ヒカルって悪い人」と思ったりもしたけれど
彼女達が満足しているのならそれでいいに違いない。
それに今日の私は
とても幸せだった。
ヒカルが私に営業の手の内を晒してくれた事や
私だけはお金を支払っていないという事実は
特別な女の子だと思わせてくれるのに充分な理由だった。
自尊心を満たしてくれたのだ。
「女の子は自己評価が低いと幸せにはなれないんだよ。」
ヒカルの言葉を私は思い出している。
今日の作戦は実は
私の事まで全て含めて計画通りだったのかもしれない。
今夜ヒカルは3人の女を幸せにしたんだ。
そこまで理解すると
たいしたもんだなぁ~と
私は苦笑した。
ヒカルと一緒にいたら
自分に自信が持てるようになれるかもしれない。
自分の事を好きになりたい。
私はヒカルと付き合う決意を固めていった。
自分を好きになるって難しい事だった。自分を許せない気持ちでいっぱいだったから。
続きを読みたい人はクリックしてね♪