第329話 アフター | らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】

第329話 アフター

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トーナメント1週目。


上位4人、誰が優勝してもおかしくはない僅差で

気の抜けない戦いが続いていた。


「はぁ~ 思ってたよりキツぃよ~」


仕事が終わってから一人で立ち寄った『Moon』で

私は俊ちゃんにぼやいた。


普段はあまり飲まない私が

その日はかなり酔っ払っていた。


「別に優勝なんてしなくてもいいんじゃね? 気楽にやれよわ。

少し顔に疲れでてっぞ。 あんまり無理すんな」


俊ちゃんは灰皿を交換して

自分も一口ビールを口に運んだ。


「ダメよ! 絶対優勝したぃもん! 2位とか無意味過ぎるし。

てかさ~、来週はアフターを餌に普段来ない客呼びまくっちゃったんだ。

ぶっちゃけ面倒だなぁ… 気が重いわ」


「そっか、アフターすんのは安心できる客だけにしとけよ?」


俊ちゃんは少し心配そうに首を傾げてそう言った。


「もちろん、それは大丈夫だけどさ。 

そうだ! アフター、ここの店使おうかな? 客連れてきてもいい?」


「いいけど、おまえの客がホストクラブなんて来たいわけないだろ? 常識的に考えて…」


「でも、ここってホストクラブってよりは、ボーイズパブっぽいじゃん?

大丈夫だよ~! 俊ちゃんにも逢えるし、売り上げにも貢献できるし

一石二鳥じゃなーい! 私ったら頭いい!」


「う~ん… まぁ、うちの店は男客もけっこう来るから、浮くことはないと思うけど」


「でしょー! そうだ、俊ちゃん席についたらさ

大好きなお客さんを連れていくって電話があったんですよ、とか適当なこと言ってアシストしてよ。 

一緒に客のことヨイショして良い気分にさせてやろ! 私は酔っ払ったフリして途中で帰るからさ!」


「ははは、それはいいけど… まぁ、うまくやれよな」


「うん!」


翌週からは

連日のアフターに『Moon』をつかった。


「私の彼氏の○○さん」


客のことを俊ちゃんにそう紹介した。


客は、戸惑いと嬉しさの混じった顔で会釈をする。


「えへっ、彼氏なんて言っちゃった♪」

私はにこにこ笑って客に寄り添い、手を繋いで席に座る。


「仲良さそうですね」 「お似合いですね」

俊ちゃんも一緒になって客のことを持ち上げてくれる。


『本当は彼が私の恋人なのに』

私は自分の手管に吹き出してしまいそうになる。


なんだか楽しくてたまらない。


何故だろう。 

子供の頃から悪戯が大好きだった。


悪いことをしていると思うと気分が高揚するのだ。


つくづく『タチの悪い女だな』と自分でも思う。


私は、毎日客を変えて『Moon』にやってきては

同じ手口でアフターを楽しんだ。


誰一人として

私と俊ちゃんが恋仲などとは疑ったりはしなかった。


事情を知っている店の店員は

俊ちゃんだけではなく皆、完璧なサポートをしてくれた。


「ヘネシーロック!」


店ではソフトドリンクしか飲まない私が

アフターではばんばん酒をオーダーした。


「今日は飲み比べよ♪」

そう言って、客にはテキーラやウォッカなどの強い酒を飲ませた。


運ばれてくるヘネシーロックの中身は実際はウーロン茶で

私はシラフだった。


トイレで頬紅を色濃く塗り、酔った演技をしながら

店員と一緒になって客をべろんべろんに酔っ払わせた。


私は客との会話に上の空で

俊ちゃんの客を横目でチェックばかりしていた。


俊ちゃんはいつも指名が重なっているようで

それほど広くはない店内を忙しそうに移動している。


どの客を見ても

「ひどいブス」 「すげーデブ」 「金づるババア」

私は腹の中で悪態をついていた。


こいつら全員

金払わなきゃ俊ちゃんに優しくしてもらえないんだ。


あそこのおばちゃん、高そうなボトル入れてるなぁ。


あそこのデブス、俊ちゃん戻ってこなくてつまらなそうにしてる。


そんな様子を観察しながら

私の優越感は満たされていった。


「まりもちゃん、聞いてる?」 横から客が尋ねた。


「ん? まりも酔っ払っちゃったみたぃ。 うふふ

てかっ! 私ばっか酔ってる? もっと飲もぉ~! おかわりくださーぃ!」


店内に私の声が響き渡る。


だいたいの客は本当に酔っていて

どう扱っても大丈夫な状態だったし

酒が強くて、ここぞとばかりに口説きに入る客には

酔った私とは会話が成立しないという風に仕向けてあしらった。


「まりもちゃん今日一緒に寝る?」 とか言われても

『阿呆め! 私は酔っ払ってないんですよー!』 みたいな。


「ねーねー! あの曲聞きたいな! 歌って! 歌って!」


私は自分勝手にカラオケをリクエストして

返事も待たずにリモコンで送信する。


歌わせておくのが一番楽だ。 


周りの男の子達が

手拍子やタンバリンで勝手に盛り上げてくれる。


私はトイレに行くふりをして

影から俊ちゃんのことを手招きして呼んだ。


「そろそろ帰るけど、少し高めに料金取っていいよ。

早く帰ってきてね。 ちゅ」 


誰からも目の届かない店の奥で

二人はこっそりと唇を重ねる。


客のカラオケをBGMにして。


快感♪


 
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