第323話 営業スタイル | らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】

第323話 営業スタイル

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『レギュラー優先』 『新人優先』


二つの優先権が重なり

ヘルプにつけられることはほとんどなく

フリーの客にコンスタントに回してもらえた。


高梨から

「フリーは二十分目安で席を抜くからね」と最初に言われた。


私は二十分後に抜かれることを意識して

時間配分をしながら自分のことを売り込むように心がけた。


高梨が「まりもさん」とコールをかけにやってくると

「ぁ~~ん! もぉ呼ばれちゃった… もっと話したかったのにぃ~」

と心残りがあるフリをして席を立った。


中にはすぐに場内指名を入れて呼び戻してくれる客もいた。


10時を過ぎると店内は満席となり

11時には店の入り口からエレベーターまで行列が出来ていた。


客足はラスト2時まで途切れることなく

活気溢れる店内で目まぐるしく時間が流れていった。


私は入店一日目にして

指名が取りやすい店だという実感を得ていた。


一日の総客数の半数以上がフリーのお客さんだったし

優先権のある私は10組以上のフリーにつけてもらえる高待遇だった。


客単価は東京のキャバクラよりも随分安い。

早い時間帯なら指名を入れても一万円で十分おつりがくる。

安月給のサラリーマンでも月に何度かは足を運べるだろう。


なによりも

私が指名が取りやすいと感じた一番の理由は

他のホステス達の接客内容にあった。


容姿は申し分のない女の子が揃っているのに

その接客には全くといっていいほど個性を感じられなかったのだ。


きちんと教育されている印象は受けるけれど

聞き手に回っている子が多くインパクトに欠ける。


客は若くて可愛い女の子にお酌してもらい

その場はそこそこ満足して帰っていくだろうが

「また逢いたい」と思わせることに成功しているようには見えなかった。


人気の出るホステスには

聞き上手と話し上手のツータイプがいる。


実際のところは

聞き上手タイプで人気を得る方が

難易度が高いと私は思っている。


十代の頃

「聞き上手になることが人に好かれる決め手よ」

と先輩ホステスからアドバイスを受けたことがあった。


だけど聞き上手は辛いのだ。


私の場合

話すよりも聞くことの方がずっと体力を使うし疲れてしまう。


話す行為は自分を解放するけれど

興味のない話を聞くのはストレスでしかない。


だから私は会話のペースを自分で作るように努力している。


とりあえず

何かのキッカケを探るためにいろいろと自分から話しを振る。


それから共通の話題や相手の得意分野を掴み

「わぁ! すごぃ!」 「それでそれで?」 というように熱心に質問して

『俺に興味を持っている』と男をいい気にさせてしまう。


真剣に相槌を打ちながら

今度は徐々に相手を自分の話に巻き込んでいく。


明らかに自分の方がいっぱいしゃべっていても

『あなたの話を一生懸命聞いてますよ』というアピールは欠かさない。


話のペースをこちらが作って会話をコントロールしていれば

客の不毛な愚痴を延々と聞き続けるような苦痛は味あわなくてすむ。


相手の言葉を引き出し

相手の心をコントロールして

最後は相手を幸せにしてあげる。


もちろん毎回うまくいくわけじゃないけれど

これが私の得意とする営業スタイルであることは間違いなかった。


他の女の子達はニコニコと相槌をうつばかりで

いかにも『お仕事している』といったかんじが見て取れる。


これじゃあ客は張り合いがないんじゃないかなという気がする。


たぶん店のマニュアル指導のせいで

女の子の個性が殺されてしまっているのだ。


それなら、と

私は逆に馴れ馴れしいくらいに自分を表に出していく。


周りの子から良い意味で浮いて

客の意表をつきドキドキさせる。


喜怒哀楽はきちんと表現して

感情の強弱を客に示した方が

真剣に向き合っているということが伝わると思う。


この店の娘達はまだ磨かれる前の宝石の原石。

これからどう育っていくのかワクワクするような素材ばかりだ。


実際10代の子が多いし

水商売デビューして間もない子がほとんどだろう。


私が経験にものをいわせれば

この店で突き抜けることはそう難しいことではないように思えた。


水商売とは

限られた時間とたくさんのライバルの中で

いかに自分を強く印象付けられるかというプレゼンのようなものなのだから。


初出勤のその日

私は田中との同伴2ポイントと、場内指名0.5ポイントを3本。

計3.5ポイントを取得した。


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