第296話 崩壊の足音 | らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】

第296話 崩壊の足音

携帯からの目次を作りました


俊ちゃんが嘘をついているようには見えない。

彼は搾り出すように真実を吐露した。


本当の話をしたのだ。


新幹線か飛行機をつかって関西へ行く。

関係性も繋がりもない人間を殺す。

警察に犯行声明文を送りつける。

それから仙台へ帰ってきて私との生活に戻る。


随分無理なストーリーに思えるけれど

有り得ない話ではない。


だとすると

俊ちゃんは動機も目的も持たない殺人を犯したことになる。


テレビで専門家が分析しているように

彼は『快楽殺人犯』ということになるのだろうか。


私にはわからなかった。


もう一切喝采なにもかも

わからないことだらけで途方に暮れた。


(このあたりから私の記憶はあいまいになっていく)



殺人の告白を受けてから

私は道しるべのない砂漠の真ん中を

たった一人であてもなくさまようことになった。


自分と世界の関係が希薄になり実感がつかめない。

自己不全感だけが募っていく。


秩序も法則性もない荒唐無稽な世界の中で

今日も私は必死で敵と戦っている。


世界と自分の溝を埋め合わせるために。


(妄想もまた荒唐無稽なものへと発展していった)


俊ちゃんは敵からマインドコントロールを受けている。

特殊な洗脳実験のせいで殺人を犯すことになった。

今はそのことを理由に脅されている。

組織での彼の役割は私の監視と報告。

一番重要な任務は私を仙台から逃がさないことだ。

しくじれば家族の命はないと宣告されている。


俊ちゃんは

家族を守るために

しかたなく敵の言いなりになっている。


――決して私への愛を失ったわけではない――

――私も俊ちゃんも被害者なのだ――


(私には、これが唯一、辻褄のあう筋道に思えた)



それから一週間後

事件の犯人が捕まった。


バラエティ番組の途中でニュース速報が入り

どのチャンネルもすぐに報道特番に切り替わった。


犯人が少年だったことで世間は激震を受けた。


私達は

その特番を茫然自失で眺めていた。


混乱に満ちた俊ちゃんの表情は恐怖に歪み

ついに頭を抱え泣き始めた。


私は

俊ちゃんが殺人を犯したという設定を変えるつもりはなかった。


敵が嘘の犯人をでっちあげたに違いないと思った。


それから

この番組事態が偽番組なのかもしれないと思った。


全てが茶番のようにも感じられた。


あるいは

彼が洗脳される段階で

『殺人のビジョン』を見せられ

自分が犯人だと思い込んでいる可能性もあると思った。


いつものように

結局真相は分からないままだ。


だけど

例え俊ちゃんが真犯人でなくても関係はない。


彼の主観的現実の中で

彼は確かに殺人を犯したのだから。


それが私の理解だった。



俊ちゃんはそれ以来

自閉傾向が一段と強まっていった。


眠剤のハルシオンを

まるでラムネでも食べるように何錠も噛み砕き

一日中ベッドの上で過ごしている。


仕事も休むようになった。


(私は何をしていたのだろう?)



私は部屋を破壊している・・・


スピードを吸っている・・・


SEXをしている・・・


黒い服の諜報員達が部屋を覗いている・・・


足音が聞こえる・・・


崩壊の足音が・・・


そしてある日

とうとう私は臨界点を超えてしまった。


難しい…。 滅茶苦茶ですね;

私の能力で言語化するの不可能で、現在視点のナレーションを加えてしまいました(カッコ内)

混沌状態も、あと少しで一段落するので、ついてきてね>< 

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