第271話 真夏の一夜 | らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】

第271話 真夏の一夜

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その日は天気もよくて

私は朝からウキウキと心を躍らせていた。


今回

猪苗代湖に行くメンバーは8人。

4人のホストとその彼女達だ。


仕切っているのは

ホストクラブを経営している雅夜さん。

赤鬼みたいな顔をしていて正直ホストには全然見えない。


雅夜さんの彼女は

あまり派手ではなく

どちらかというとOL風に見える明子さんという人。


私が挨拶をすると

線の細い首を傾げて「よろしくね」と微笑んでくれた。


それから

俊ちゃんと同じお店で働いている先輩ホストの二人。


彼らは

人には言えない事情があり

名古屋から仙台に流れてきたらしい。


拓也君と慎太郎君。

俊ちゃんよりも二つ年上だ。


拓也君は

スラっと背が高くてなかなかの男前。

童顔で薄い唇が可愛い印象を与えるけれど

性格はイケイケでちょっとコワモテなかんじがする。


慎太郎君は

田舎のガキ大将みたいなイメージで

やっぱり東京のホストとは違うなぁと感じた。


二人とも売れっ子ホストなのだと

俊ちゃんは教えてくれた。


すごく驚いたのは

拓也君と慎太郎君の彼女がめちゃくちゃ可愛いこと。


19歳の杏奈ちゃんと21歳の優子ちゃん。


東京にいれば

きっと人生違っただろうと思うくらいに

本当に綺麗で上玉の女の子だった。


ホステスらしいが

きっとお店ではNO1だろう。


俊ちゃんをのぞく三人は

みんなジェットスキーを保有していて

それぞれ四駆の車の後ろに

専用のトレーラーをカスタマイズしていた。


私と俊ちゃんは

拓也君の車に乗せてもらった。


はしゃぐ俊ちゃんのことを

拓也君と杏奈ちゃんはしきりにからかっていた。


最初はよそ者気分で緊張気味だった私も

だんだんと馴染んでいった。


猪苗代湖につくと

俊ちゃんは「ここだったら焼けないべ」と

木陰にシートをひいてくれた。


水着になり

丹念に日焼け止めを塗りこむ。


空気が澄んでいて気持ちがいい。


木々の緑はやけに濃くクッキリと見える。


湖は

太陽をキラキラ反射させ

岸に向って黄金の道をつくっている。


「すごく綺麗!」


俊ちゃんに寄り添いながら

私は感動して言った。


こんなに綺麗な風景を見るのは

初めてのことだった。


「ねぇ、俊ちゃん。

東京生まれにとっては、こういうのってすごく貴重なのよ。

信じられないくらい素敵だわ。 ありがとう」


「そうなの? たしかにすげー綺麗だよわ~」


俊ちゃんは眩しそうに湖を見つめてそう言ったけれど

きっと私がどれほど感激して高揚しているかはわからないだろうと思った。


太陽が降り注ぐ自然の中に身をおくこと事態

私にとっては本当に希少な体験だったから。


働いて働いて働いて

随分と身も心も磨り減らしてきたような気がする。


自分が

いかに薄暗い穴の中で生活していたのかを思い知る。


神様がくれたご褒美に

胸がじんわりと暖かくなり溜息を吐いた。


私は完璧な幸福に包まれていた。




拓也君が運転するジェットスキーの後ろに

三人乗りのバナナボートを結んだ。


杏奈ちゃんが一番前にのり

真ん中に私が

後ろに俊ちゃんが乗った。


拓也君が運転するジェットスキーに引っ張られて

バナナボートは湖をぐんぐん進んでゆく。


スピードが増して

私と杏奈ちゃんはキャッキャとはしゃいだ。


後ろで俊ちゃんがバナナボートを激しく上下に揺らす。


「キャァァァ 怖い! やだぁ!」


大きな声をだすと

拓也君が示し合わせたように

急ハンドルを切った。


大きなカーブを描くジェットと共に

すごい遠心力がかかって体を支えきれなくなった。


ジャボーーーン!!


勢いよく湖の中に体を投げ出された。


「キャァ」


私は湖の中で俊ちゃんに必死でしがみ付いた。


二人を中心に

きらめく日差しを反射させた波紋が

柔らかくひろがっていく。


大笑いする俊ちゃん。

私も釣られて笑う。


お化粧とか髪型とか

すぐにどうでも良くなった。


最高に楽しくて

クタクタになるまで遊んだ。


「俊ちゃん、

私ね、恋もSEXも頭で考えるタイプだったの。

いつもね、一つのことをすごく深く掘り下げて考えちゃうんだ。

でもさー、本当に恋をすると理屈なんて必要ないや!

幸せって感じたもん勝ちなのね!  あー! 幸せだよー!」


私は俊ちゃんの首に両手をまわしてキスをした。


湖に映る夕焼けは

言葉が詰まるほど綺麗で

せつない気持ちにさせた。


眩暈のするほど幸福なひと時が

いつまでもこのまま終わってほしくなかった。


夜が深まっていく中

満天の星空の下で花火をした。


闇の中にしゃがむ

みんなの無邪気な笑顔を

赤や黄色の炎が照らした。


「まりも大好きだー」


俊ちゃんが花火を振り回しながら大声で叫び

みんなが一斉に笑った。




この時、あたし本当に幸せだったんだよねー。

もしも過去に一日だけ戻れるならこの日を選ぶかもしれないな。

子供が春休み中につき、更新遅れ気味でごめんなさぃー! 許してね^^
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