第145話 ビデオ撮影の後 | らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】

第145話 ビデオ撮影の後

ヒカルと付き合い始めてから

はじめてビデオ撮影の日がやってきた。


グラビアやTVのお仕事は好きだったけれど

ビデオの仕事は苦痛でしかない。


それでも月に一度

その日はやってくる。


5ヶ月先までの契約が

もうすでに決まっていた。


ヒカルは本当に嫌じゃないのかなと

自分の事よりもヒカルがどう思っているのかが気にかかる。


いつもより少し無口だった私に

「頑張ってな。」

と一言だけ声をかけてくれたヒカルにキスをしてから

ジイヤの迎えの車に乗り込んだ。


今回の作品はドラマ物だった。


メイクをされながら

分厚い台本に目を通す。


その頃
安達祐美が主演の『家なき子』というドラマが流行っていた。

まだ幼い安達祐美が貧乏な家の子の設定で

「同情するなら金をくれ!」

という決め台詞を吐き捨てるドラマだ。


兎にも角にも貧乏な彼女が

斜めに構えながらも健気に生きていく

されど渡る世間は鬼ばかり・・・

そんな内容だったと記憶している。


まだ直樹と付き合っている時に

毎回涙ぐみながら見ていたドラマだった。


今回の私のビデオは

そのドラマのパロディ的なタイトルだった。


『恥なき子』


サブタイトルには

「同情するならアレをくれ!!」

なんて書かれている。


ビデオの内容は

本家のドラマとは何の繋がりもないのに

タイトルだけが

取ってつけた様に時事ネタなのだった。


私としては全然笑えないのだけど

売り上げは上々だったと後から聞く事になった。


ドラマの相手役のメインは

またもや加藤鷹さんだ。


鷹さんとは何度か絡んでいたから

とくに緊張する事もなく私は自分の身を委ねる。


鷹さんが耳元で囁く卑猥な言葉を冷静に聞いていると

たまに噴出してしまいそうになる。


そういう余裕が生まれたのだなぁと

慣れてしまった自分を少し悲しく思う。


絡みよりも

ドラマシーンの演技の方が何倍も緊張したし

絶対に自分は女優にはなれないという発見があった。


最悪のだいこん演技で

絡みよりもある意味何倍も恥ずかしい思いをする事になった。


撮影は10時過ぎに終わり

私はすぐにタクシーで家路についた。


とても疲れていた。


ヒカルの事は大好きだけど

どんな顔をして帰ればいいのか

憂鬱な気持ちになる。


一人になりたい・・・。

いや、一人になるのも嫌だった。


でも

好きな人とはこんな時には逢いたくないものだ。


直樹との別れを思い出す。


あの時も私は

一人になりたくなくて

男優を家に連れ込んだのだろうか。


涙がこぼれた。


ビデオの撮影の後は

なぜかとても感傷的な気持ちになってしまうのだ。



何本もAVに出て完全に慣れてからも、終わった後はいつも感傷的になってましたねぇ。

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