第139話 女の子の心理
私の席には太一君というヘルプがついている。
太一君はヒカルの友達で
二人はいつも一緒にディスコに来ていたから
私も顔見知りだった。
太一君はヒカルと比べるとずいぶん見劣りするけれど
背は180cmくらいあるし性格はおおらかで天然なかんじだ。
スローテンポの話し口調が程よく心地良い。
「俺ってバカだからさー」
という口癖の通り、本当に頭はあまり良くなさそうだ。
「まりもちゃんがうちの店にいるなんて不思議なんだけどぉ~!」
なんて言いながらクラッシュアイスを足してくれる。
私は太一君と話しながらもヒカルから目が離せない。
さっきまで不貞腐れていたヘルス嬢の彼女は
すっかり機嫌が直っていて
潤んだ瞳でヒカルを見詰めている。
左側のエースの彼女は
私や他の客の事など、どこ吹く風というかんじで
ヘルプの男の子2人にお酒を煽って楽しそうに笑っている。
彼女のテーブルには
見た事もないようなボトルが何本も並んでいた。
「ヒカルはまりもちゃんの事、マジで気にいってるんだよぉ~。」
太一君はそんな風に言うけれど
なんだか信用できない。
ヒカルと綿密な打ち合わせをしていて私にそう言っているのでは
と警戒してしまう。
「ホストと付き合うのって大変そうだしなぁ~・・・。太一君は彼女はいるの?」
「ここだけの話ね、まりもちゃんだから言うけど彼女と同棲中!」
「へぇ~! 彼女って何してる子なの?」
「ふっふっふ。 実はねぇ~、SMクラブの女王様なんだ。」
「えー!! 太一君って・・・そういう趣味だったんだ?」
私は思わず声を潜めてしまう。
「ぶっ、違うよ! あくまで彼女のお仕事ってだけ。 プライベートは全然普通の子だよ。」
「へぇ~~! SMクラブとかって全然知らない世界だけど、けっこう大変そうだよねぇ?」
「本人は性に合ってるって言ってるけどね。 いろいろおもしろい話は聞くよ。」
「うゎ~! 確かにおもしろい話ありそうだぁ~。」
「今度彼女紹介するよ! ヒカルと4人で飯でも食いに行こうよ。」
「うんうん。 行きたぁ~い!」
太一君とそんな話をしていたらエースの彼女に動きがあった。
「ドンペリピンクのオーダー入ったね。ヒカル、今日は絶好調だなぁ~」
太一君が少しうらやましそうに言う。
「やっぱり! ヒカルって本当凄いんだねぇ。」
「あの子はもうボトルキープしても置く場所ないしね。最近はいつもワインかシャンパンなんだ。」
「飲みきりの方が利回りいいもんねぇ~」
私はヒカルのヤリクチに心底感心してしまう。
ヒカルがエースの席に移動して
手馴れた仕草でシャンパンを抜く。
綺麗な色のシャンパンに浮かぶ繊細な泡が私からもよく見える。
これもヒカルの思惑通りだった。
ヒカルは私にこう言っていた。
「エースの子はね、自己顕示欲が強いんだ。
他の客には絶対に負けないという意地もある。
あの子は俺をNO1にする事が生き甲斐なんだよ。
つらい仕事を続けるためには理由がいるもんだ。
なんのために体張って大金を稼いでるか、その理由が明確な方がいいんだ。
俺に必要とされていると思う事があの子の存在理由になってるんだと思う。
だから俺はあの子には絶対に媚たりしないんだ。
お金を払うだけの価値がある男だって思わせてあげればいいんだ。
まりもちゃんみたいな子が高いボトルを入れてるのを見せれば
俺の株が上がるって事。
今日はまりもちゃんのおかげでピンドン3本くらいいけるかもな。」
彼女の隣でシャンパンを飲むヒカルは
とても凛々しくキリリとして見えた。
ヒカルはカウンセラーとかやらせても抜群の腕があったのではないかと思います☆
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