第119話 交差点
人生の交差点の上で
私は途方に暮れている。
このまま流されて
なるようになればいいのか
それとも
一縷の望みにかけて
直樹に真実を告げるべきなのか
直樹に話す事が私に出来るだろうか・・・。
考えれば考える程
そんな事できっこない!
と思ってしまう。
私にはそんな勇気はない・・・。
直樹に見捨てられるくらいなら
この手で砂の城を壊してしまった方がマシだ!
そんな風に思って落ち込んでいく。
その日は
めずらしく直樹が出張で名古屋に行ってしまい
翌日まで帰ってこないので
気晴らしに遊びに行く事にした。
クローゼットの中に押し込んでいたボディコンを引っ張り出す。
タイトスカートが体にピタリと纏わりつく感覚が
気持ち良くて背筋がピンと伸びる。
目の周りをアイラインで縁取り
何度もマスカラを重ねづけする。
ココシャネルの香水を振りかけ
金色のハイヒールを履いて外に出た。
肌を露出し格好つけて歩くと
通り過ぎる車からはクラクションを鳴らされ
道行く男達からは口笛を吹かれる。
ああ!
この快感!
私は早くも昔の感覚を取り戻し
顔つきまで変わっていく。
一刻も早く夜の歓楽街に溶け込みたいと
気持ちが急いて胸が高鳴る。
私はタケちゃんのいる
マハラジャ本店に遊びに行く事にした。
ドキドキする、ワクワクする
こんな気持ちは本当に久しぶりだ!
マハラジャに入ると
大音量の音と暗い空間に乱反射する色彩が
私の体を痺れさせる。
ここは別世界だ。
違う私 違う場所 違う空間
「タケちゃ~~ん!」
タケちゃんはVIPルームで私の事を待っていてくれた。
2年ぶりに会うタケちゃんは、ますます格好良くなっていて
私はうれしくなってしまう。
「きゃー! やっぱかっこぃぃね! タケちゃん会いたかったよぉ~!」
「おお! まりも! あいかわらず巨乳だな! 元気だったー?」
「きゃはは タケちゃんのそういう軽薄なノリ、なつかしぃなぁ~。」
「おまえ、なんか雰囲気変わったなぁ。 いくつになった?」
「もぉ二十歳になっちゃったもん。タケちゃんに初めて会った時は17だったからねぇ~」
「未成年者淫行だな!ははは エロイ響きだ。うんうん」
「きゃははは、うけるぅ~!
あ~~~!もぉぉ~!!やっぱりディスコって落ち着くなぁ~ このかんじ! 最高!!」
「今まで何してたのよ? おまえ」
「ん~・・・ シンデレラごっこ? あはは」
「んだよそれ、 まさか真面目に男と付き合ったりしてたわけ?」
「へへへ、そんなとこよ。」
「そういう似合わない事すんなよな。 はははは」
「たけちゃんこそ、ライオン丸とはうまくいってるの?」
「ライオン丸! はははは いたなぁそんなやつ!
とっくに別れたよん 俺にはおまえだけだぜ!ベイビ~」
「っとーにあいかわらずバカだねぇぇ。 きゃはははは 」
平日でお店が暇だった事もあり
タケちゃんはずっと私の席で一緒に飲んでくれて
私達は昔を懐かしんで盛り上がっていた。
「ところで今何時~?」
直樹から12時過ぎに電話がかかってくるからそれまでには帰らなくちゃいけない。
「11時くらい。 ラストまでいるだろ?」
「うーん、12時には帰らないといけないのよ。」
「はぁ? なにそれ? それがシンデレラごっこ? ははは」
「あはは、そうだね・・・。そういえばシンデレラって12時になったら魔法が解けちゃうんだよね。
馬車はカボチャに戻っちゃうし、ドレスはボロくずになっちゃうんだよ!」
「おまえのドレスはボディコン、おまえのお城はディスコだろ?
で、王子は俺ってか?ははははは」
「ぶぶっ 王子様ってのはさぁ、自分の生活の安泰を保障してくれる人なのよ!
タケちゃんみたいなヤリチンは王子様にはなれないんだもん。きゃはは」
「年食って知恵ついたらかわいげなくなったな? はははは」
「結局、いつかは解けちゃうんだね・・・魔法なんてさ。
はぁ・・・私やっぱりラストま遊んでいこうかな!」
「そうこなくちゃ! よし、久しぶりだしドンペリ出してやるよ。」
「えー!マジで! 太っ腹キタよー!やったぁ」
「そのかわり乳くらい揉ませろー! はははは」
私はまた
全てから逃げようとしていた。
続き気になる人はクリックしてね♪
