第111話 私の努力 | らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】

第111話 私の努力

直樹はどこまでもバランスの良い男だった。


顔も、話す事も、SEXも全てが平均点の平凡な人。


私はこの普通の男との結婚を夢見て

実は並々ならぬ努力をしている。


夜遊びは一切しなくなったし

男友達も美咲も遊び仲間は全て切り捨てた。


直樹だけいればいい。

直樹意外は何もいらない。


私の今の原動力は

「直樹に気にいられたい」

「直樹に喜んでもらいたい」

その一心だけだった。


直樹の趣味がスキーだと言うから

私もスキー道具を一式揃え

毎週末、直樹の車でゲレンデに遊びに行っている。


関越道はいつも渋滞しているけれど

直樹と話していれば

渋滞も苦痛ではなく楽しい時間だ。


直樹はとてもスキーが上手で

私は全然ついていけないのだけど

何度も何度も転びながら

頑張って直樹の後を追いかける。


スキーで汗をかいて

雪山でビールを飲むのは悪くない。


直樹は大学時代のOB達と

社会人のバスケットチームにも所属していて

私は練習にも試合にも必ず付いていっている。


深夜にBS放送でやっているNBAの試合を見たがるから

それにもちゃんと付き合うし

「マイケルジョーダン」だとか「スコッティピッペン」だとか

チーム名も選手の名前も熱心に覚えている。


「好きな人の趣味は共有したいの。

一緒に楽しみたいから、いろいろ教えてね。」


と私は全然おもしろくもないバスケの試合を

眠い目をこすりながら最後まで見る。


それだけじゃない。


私は見た目もすっかり変わってしまった。

髪の毛も黒く染めたし

ジーパンをはく女の子になった。


ボディコンやブランド物のスーツはクローゼットの中に押し込み

ハイヒールの変わりにナイキのスニーカーを履いている。


いつもネイルサロンで綺麗に磨かれ

長く尖っていた爪は短く切り揃え

ナチュラルな桜色のマニキュアしか塗らなくなった。


直樹に好きな芸能人は誰なの?と聞いた時

「森口博子」とか「東ちずる」なんて言うから

私はゲェー!!と思いながらも

いかにも自然体で明るい女の子でいるように心がけた。


今までの男達は

CCガールズとか杉本彩みたいな女が好きな男ばかりだったから

直樹のタイプを聞いて

ありえない趣味してるな・・・と思いながらも

全然、私とはタイプ違いだ!と危機感を覚えてしまった。


だから私は直樹に好かれたくて

本当に努力しているんだ。


時々、こんなの本当の私ではないのかも

なんて思ったりするけれど

でも、本当の自分なんて私にも解らない。


よく「自分らしく」って言葉を耳にするけれど

「自分らしさ」なんて私には全然解らないや。


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