第093話 物欲
1ヶ月半のホテル暮らしを終え
私は引っ越しをした。
パパが私のために用意してくれたのは
目白にある高級マンションだ。
自動で開く大きな鉄製の門があり
中に入ると吹き抜けを囲う形で部屋がある。
3階建てでヨーロッパ調の
オシャレでリッチなマンションだ。
私の部屋は
3階の南側の角部屋で
日当たりも良好だ。
家具は全て
丸井インテリア館で揃えた。
革張りで7人がけのL字型ソファ。
カッシーナのローテーブル。
大理石のダイニングテーブルとカウンター。
クイーンサイズのベット。
電化製品は
組のお抱えの電気屋さんが
どれも日立の最新製品を運んできた。
テレビ、オーディオ、冷蔵庫、洗濯機、乾燥機
ビデオ、照明、掃除機、アイロンまで
引越しの日に全てが揃った。
カーテンや絨毯のオーダーに来た人が
太いサンプル帖を何冊か持ってきたけれど
あまりの量の多さに選ぶのが面倒でおまかせした。
私は全ての欲しいものを手にいれた。
最高級のものに囲まれて暮らす生活だ。
ホテル暮らしも快適で良かったけれど
やっぱり自分の城が一番。
と満足している。
パパは自分の元の家から
レーザーディスクのカラオケセットまで
このマンションに運び入れた。
仕事から帰ってくると
石原裕次郎とかを五木ひろしをよく歌っている。
早朝に家で二人きりでカラオケなんて
正直しらけちゃうのだけど
「まりもも歌えよ。」
とパパに言われるので私も付き合う事になる。
今日はパパのリクエストで
テレサテンを歌ってあげた。
「パパ~。私ね、もう物欲がなくなっちゃったみたい。
最近、買い物行っても欲しいものが何もないのよ。」
「人間っていうのは金がある時は飢餓感がないからな。
いつでも買えると思うから欲しくならないんだろ。」
「へぇ~。なるほどねぇ。そんなもんかな?」
「というより、おまえは物欲なくて当然だろ!
こんだけしてやってるんだぞ?バカ言うな。はっはっは」
「あは。それもそうね。きゃはは」
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