第073話 診察 | らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】

第073話 診察

名前が呼ばれ診察室に入る。


最終月経はいつだったかなどを聞かれるが

私は正確な日にちを覚えていない。


だいたいこの辺りだったと思います。と

カレンダーを見ながら指差す。


とても優しそうなおじーちゃん先生で
ベットに仰向けに寝転がるように言われる。


ベットに横になると

お腹に冷たい感触があり

薬品を塗ったエコーを当てられる。


頭の斜め上に

小さめのモニターがあり
そこによくわからない白と黒の影の様なものが映しだされる。


「この小さな丸い袋が赤ちゃんですよ。
まだ心音は聞こえないかな。」


「おめでとうございます。」


「3ヶ月ですね。」


立て続けにそんな事を言われて
私は愕然とする。


当たり前の事かもしれないけれど

妊娠するとにこやかな顔で
「おめでとうございます」と

言われるんだと知り

少し驚く。


モニターの画像を見ても

何も感じない。


私には何の実感も沸いてこない。


「来週には心音が聞こえると思いますよ。
1週間後にまた来てください。」


そう言って先生は

カルテを書きはじめる。


「あの、おろしたいんです。」


私は躊躇せずに
はっきりとした口調でそう言う。


先生はカルテを書く手を止め

私の顔を見て
「そうですか。わかりました。」
と簡素に言い
看護婦に一枚の紙を持ってくるように促す。


看護婦がきびきびとした態度で

その紙を私に手渡し

手首の包帯を不審そうな目で見る。


紙には『同意書』と書いてあり
その下には「人工中絶手術」という文字が
書いてある。


相手のサインと印鑑がいるのだと説明される。


「手術はいつにしましょうか?」


事務的に聞くおじーちゃん先生に
私は答えられずに俯いてしまう。


同意書なんてあるんだ・・・。


優弥に言わないとだめなのかな。

と優弥の事が心配になる。


私は大丈夫だ。


こんな事

別にたいした事じゃない。


でも

優弥に言ったら

優弥と私の関係は

どうなってしまうんだろうと不安になる。


中絶する事よりも

優弥が離れていく事の方が

私にはよっぽど怖い事の様な気がする。


「少し考えてから
もう一度いらしてください。」


そう言われて
私は診察室を後にした。


あああ


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