朝だ。
朝なのである。
二日酔いだけど早く目が覚めて、
寝室からリビングに向かい、ソファーに寝転がる。
窓を開ける。
空気が入ってくる。
空気が入ってくるのである。
カラスが鳴いている。
ご近所さんの誰かがドアを開ける音がする。
ご近所さんの誰かがバイクに乗って出掛ける音がする。
カラスが鳴いている。
カラス。
イソヒヨドリなら美しいが、
カラスはゴミ袋を漁るから美しくない、
なんておかしい。
人間が決めただけ。
カラスも美しい。
カラスの鳴き声も美しい。
カアカアカアカア。
イソヒヨドリなら、
pるひょろりpyrょろpryh。
カラスはカアカアカアカア。
均整がとれているじゃないか。
カアカアカアカア。
昨日女の子に告白されたかもしれない。
悪い気分じゃなかった。
すべて真夜中の恋人たちを思い出した、
全然そんな話ではないけれど。
カラスと言えば夕方の鳥。
と思うけれど、朝にもめちゃくちゃ鳴いているんだなあ。
ご近所さんの誰かの子供が、雨じゃないのに、雨、雨、と言葉を発している。
ご近所さんの誰かの車の、鍵があいて、エンジンがかかり、どこかへ出掛けていく音がする。
恋(請い)とはすなわち暴力かも知れぬ。
恋を向けられると暴力を感じるし、
恋を向けて暴力だったと後から後悔(頭痛が痛い、馬から落馬する、危険が危ない)したこともある。
でもその暴力に振り回されるのが楽しかったんだよな。
今はただ、生搾りオレンジジュース自販機の600円のオレンジジュースを飲みたい。
救急車の音がする。
救急車の音が去っていった。
今はただ、スーパー銭湯のぬるま湯に浸かっていたい。
あくびが出る。
私ももう若くないなあ。
それもまた良かろう。