小学2年生のフィンランド留学体験記 第九章 9月 23.アイノビデオ | フィンランドに1年住んでみる(在外研究)

フィンランドに1年住んでみる(在外研究)

~子連れフィンランド滞在記~
1年間家族でフィンランドに住みました(2022年10月〜2023年10月)。
準備からフィンランド生活について思ったこと、
感じたことを書き留めていきたいと思います!

 

登場人物

アイノ:同じクラスの友達

 

23.アイノビデオ

 

 今日の体育は外で幅跳びと槍投げをする。校庭には幅跳びコースがある。走ると左膝が少し痛んだ。自転車で転んだ傷がまだ治っていないのだ。それでもできるだけ速く走って思いっきりジャンプした。記録は2.95m。膝が痛くなければもっと飛べたのになと思っているとボリスが「俺より飛べてないなー!」と馬鹿にしたように言ってきた。君はいちいち僕を意識しすぎなんだよ。その時点で君は僕に負けている。心の中で言い返すだけにして、ボリスの事は無視した。

 その後は校庭の広い場所で槍投げをした。すごく楽しかった。体育の後は自分たちで道具をしまう。槍はとがっていない安全なものだったけれど、片付けを手伝っていたアイノは自分で持っていた槍が頭に当たってしまい、泣き出してしまった。いつも通り素通りするクラスメイトたち。数人は立ち止まって心配そうにアイノを見ていた。駆けつけたのは僕だけだった。「大丈夫?」と話しかけても、アイノは泣き止まない。僕は両手の人差し指と親指で長方形を作り、その穴から目をのぞかせた。「アイノビデオ~!」と言ってアイノを撮影するふりをするとアイノは泣き止み、急に笑顔になって走り出す。僕はその後を「アイノビデオ~!」と言いながら追った。泣いた顔はビデオに撮られたくなかったアイノ。撮影用に涙もふいていつも通りのアイノに戻った。

 校舎に戻った後は給食の時間だった。僕の向かいには泣いたせいで目がまだ赤いアイノが座った。僕がまた指でビデオカメラを作り、「アイノビデオ~!」と言うと、アイノはハッとして本当に自分がビデオを撮られている芸能人のように装った。アイノはノリがいいので変な事にも喜んで付き合ってくれる。トマトを手に取り「これはトマトです。パク!う~ん美味しい!!」とコメント。一瞬で食堂はテレビ局のスタジオになったように思えて、二人で笑った。