小学3年生のフィンランド留学体験記 第六章 4月 6.アルバニア語で男子チーム分裂の危機 | フィンランドに1年住んでみる(在外研究)

フィンランドに1年住んでみる(在外研究)

~子連れフィンランド滞在記~
1年間家族でフィンランドに住みました(2022年10月〜2023年10月)。
準備からフィンランド生活について思ったこと、
感じたことを書き留めていきたいと思います!

 

登場人物

フランチェスコ:5年生のクラスメイト。最近転入してきたイタリア人。4か国語話せる。

ジェシアン:4年生のクラスメイト。アルバニア人。

アラン:2年生のクラスメイト。一番の仲良し。クルド人。

 

6.アルバニア語で男子チーム分裂の危機

 

 ある朝、教室に入るとフランチェスコが僕にだけ「やあ!」と言って握手を求めてきた。驚いたけれど、とても嬉しかった。でも、その日僕がフランチェスコと話したのはそれだけで、後はフランチェスコにはずっとジェシアンがべったりついて、アルバニア語でずっと何か話していた。中休みもそうだった。僕とジェシアンとフランチェスコでサッカーをすることになったのだけれど、ずっと僕が理解できないアルバニア語で何か話している。途中フランチェスコが女の子の顔にボールをあてて泣かせてしまい、それがショックだったのかサッカーを抜けると言い出した。それをジェシアンから聞かされ、ジェシアンは「じゃあ、僕も抜けるよ。」と言って、さっさと2人で去って行った。なぜ、あの2人は僕にも分かるように英語で話さないんだろう?僕はぽつんと1人取り残され、腹立たしい気持ちでいっぱいになった。僕も弟も日本語で話すのは2人でいる時だけだ。みんなといる時は日本語をあまり使わないようにしている。それがみんなで仲良く過ごすために大切だと思っているからだ。僕が1人でシュート練習をしているとジェシアンとフランチェスコが戻って来て、フランチェスコがゴールキーパーになってサッカーが再開された。ジェシアンはフランチェスコがゴールキーパーになれば、もう女の子の顔にボールをぶつけなくてすむとでも考えたのだろう。ジェシアンはフランチェスコにぴったりくっついて僕とフランチェスコが話すすきを与えない。僕にはジェシアンがフランチェスコと僕の間の壁になっているとしか思えなくなった。わざとアルバニア語だけ話すようにして、フランチェスコを独占したいのかな。僕だってきっとフランチェスコと英語でならコミュニケーションがとれるのにやらせてもらえない。どうしてみんなで仲良くできないんだよ。

 次の日の休み時間はジェシアン、フランチェスコ、アラン、弟とサッカーをした。ずっとアルバニア語で話すジェシアンに我慢のできなくなった僕は「さっきから何を話しているの?僕もアランも弟もアルバニア語が分からないから、みんな一緒にいる時はフィンランド語か英語で話してくれないかな?」と言った。ジェシアンは「分かったよ。」と言って、それからはアルバニア語で話さなくなった。今までアルバニア語を一方的に話しているのはジェシアンだけだったから、ジェシアンが話さなくなって僕らの輪からアルバニア語が消えた。アルバニア語を話さなくなったジェシアンは急に無口になった。僕やアラン、弟が失敗するとすぐ「Pois(抜けろよ)!」と怒るジェシアンはフランチェスコには決して厳しい言葉は使わない。僕、アラン、弟チーム対ジェシアン、フランチェスコチームでサッカーの試合をしたら、年下の僕たちのチームが勝った。帰り際、「そっちはさ、りくと、アラン、さくとがいていいよな。こっちはサッカー上手いの俺だけだぜ。」とジェシアンが負け惜しみ発言をしたので、「ということは、フランチェスコは弱いってこと?」と意地悪な質問をしてみた。「いやいやいや。決してそういう事ではないんだけどね…。」と焦ってジェシアンはフランチェスコの方をちらちら見た。ジェシアンがフランチェスコと他の子を区別しているのは明らかだった。