小学3年生のフィンランド留学体験記 第五章 3月 11.学校案内 | フィンランドに1年住んでみる(在外研究)

フィンランドに1年住んでみる(在外研究)

~子連れフィンランド滞在記~
1年間家族でフィンランドに住みました(2022年10月〜2023年10月)。
準備からフィンランド生活について思ったこと、
感じたことの記録
趣味の4コマを投稿中

 

登場人物

ジェミフル:転入生。2年生。

アラン:一番仲良しのクラスメイト。2年生。

ジェシアン:4年生のクラスメイト

エレナ:同い年のクラスメイト

アルティン:元クラスメイト。6年生。りくとの憧れ。

ファジル:元クラスメイト。2年生。

 

11.学校案内

 

 朝、学校に少し早く着いたので、玄関前でドアが開くのを待っていると、向こうからジェミフルがお父さんと歩いてくるのが見えた。ジェミフルも僕に気づく。「モイ(やあ)!」と話しかけると、ジェミフルは嬉しそうに笑い、お父さんに僕のことを話していた。8時15分になってドアが開くと生徒が一斉に校内へと移動した。その波に乗って僕も校内に入り、コートを脱いで身支度した。視線を感じたので見ると、ジェミフルが僕のことを待っている。「一緒に教室に行こう。」と僕はジェミフルを連れて教室に入った。それからというもの、ジェミフルは「これはどうしたらいいの?」と僕に色々質問しに来るようになった。転入初日はトルコ語だったけど、片言の英語やジェスチャーで伝えてくれるから僕もジェミフルの言いたいことが分かる。教室では気が付けばジェミフルはいつも僕の横にいた。

 中休みはジェミフルを誘って、サッカーをした。でも、外に行く途中、ジェミフルがはぐれてしまい、僕が探しに行くことになった。きょろきょろ誰かを探しているジェミフルを見つけて、声をかけると、安心したようにこちらに走ってきた。中休みはたくさんの生徒が移動するから迷子になっちゃったんだな。これからはジェミフルが近くにいるか確認しながら移動しないといけないな。サッカーではジェミフルにたくさんパスを回した。それに、「ナイス!」と声もかけた。ジェシアンやアランは全然ジェミフルに話しかけない。何でだろう。

 給食では僕が食べ終わってお皿を片付けに行こうとすると、「待って!」とジェミフルに呼び止められた。急いでお皿のものを口につめこむジェミフル。そんなに急がなくてもいいのに。ほっぺがハムスターみたいになっている。「ジェミフル、お皿を食堂に返す時はキートス(ありがとう)!って言うんだよ。」と教えると、口に食べ物をつめすぎたジェミフルはお皿を片付けながら「ヒーホース(キートス)」と言った。僕はその言い方があまりにも可愛くて笑ってしまった。給食の後、僕はエレナとプールに移動したんだけど、外国人教室を出る時、ジェミフルはとても寂しそうな顔をして僕を見つめてきた。「行かないで。」と言われているような気がして、ジェミフル大丈夫かなと心配になった。

 次の日、僕はジェミフルに学校案内をすることにした。僕が転入した日にアルティンが僕にやってくれたことだ。僕は家でメモ帳にトルコ語と絵で音楽室、体育館、食堂などを描いて簡単な学校紹介カードを準備した。中休みの途中でジェミフルが「遊具で遊ぼうよ。」と誘ってくれたので、弟とファジルとしていたサッカーから抜けて、校庭の遊具に向かった。これは学校案内のチャンス!まず校庭から案内しよう。僕は校庭を案内しながら、遊具で楽しそうに遊ぶジェミフルを見守った。それから雨が降っていて校庭に大きな水たまりができていたから一緒に入った。思ったより深かったから、面白くてジェミフルとたくさん笑った。その後はまだ時間があったので、図書館や音楽室にも案内した。用意していった学校紹介カードがとても役に立った。

 ジェミフルが転入してきて3日目にクラスメイトが自己紹介をした。お楽しみ会もあって、全員でボール回しゲームをして盛り上がった。ある休み時間、「りくと!」と誰かに呼ばれた。振り向くとジェミフルがいた。ジェミフルが僕の名前を覚えてくれた!僕は自分の胸の辺りががぽかぽかと温かくなるのを感じた。