登場人物
ファヨラ:外国人のクラスメイト
8.くっつけるマジック
先生は教室に掲示物を貼る時、画びょうは使わない。使うのは“くっつけるマジック“だ!本当の名前は粘着タックと言うらしい。初めにこれを教えてくれたのはファヨラだった。教室にはたまにくっつけるマジックが落ちている。触り心地はねりけしみたい。使い方はファヨラが教えてくれた。画用紙などの裏に小さくちぎったくっつけるマジックをつけて壁に押し当てるだけ。先生に見つかると没収されてしまうけれど、クラスメイトはこれを密かに集めて遊んでいる。ある時、ファヨラが自分のヒシャブについている綺麗で小さな飾りを僕にくれた。これは宝物だ!僕は家にあるくっつけるマジックを使って自分の部屋の壁にその宝物を貼り付けた。小さいからなくさないようにしなくちゃ。これはファヨラとの友情のあかしだ。
最近ファヨラはよく笑うようになった。一緒にフィンランド語の補習を受ける時、よくカードゲームをするのだけれど、正解すると2人で手を取り合って喜んだり、頭をなでたりしている。一緒に踊ってくれることもある。そんな時、ファヨラは声を出してケラケラ笑う。こんなファヨラ初めて見た!僕もファヨラといる時は、自分らしくいられるようになっている。そして今月は「さくと!」と初めて僕の名前を呼んでくれた。僕はその日1番嬉しかった大ニュースとしてこの事をすぐお母さんに報告した。
教室にはくっつけるマジックで魚の絵が飾ってある。その魚は登校日ごとに1匹ずつ増えていくんだ。今月ついに魚が100匹になった。そこでその日の2時間目は100日目のお祝いをすることになった。みんな教室中を走り回ったり、おもいっきりジャンプをした。机の上にのってエアギターをする子もいた。何をやっても良い時間にクラスメイトはみんな大興奮。1から100までふられた100マスの紙が配られ、みんなで先生が言う番号を塗りつぶしていった。先生が全ての番号を言い終わると100マスの上には100という文字が完成した。