登場人物
アラン:2年生のクラスメイト。一番の仲良し。
アルティン:6年生のクラスメイト。リーダー的存在。
エンミ先生:担任
ナターリア:2年生のクラスメイト
メフメット:5年生のサッカー仲間
8.こんにちは
僕のいる外国人教室の廊下の掲示板には在籍生徒の国とあいさつが貼ってある。この度、僕の母国語もその掲示板に加わることになった。日本の国旗とひらがなで「こんにちは」と書かれた紙が貼られた。「こんにちは」にローマ字はふられていないのに、アランもアルティンも「これ知ってるよ。こんにちは。でしょう?」ともう日本語の挨拶を覚えてくれている。二人ともひらがなに指をあてて。「こん、に、ち、は。あれ?一つ余った!なんだこれ?」といって「は」を指した。二人とも「こ」を「こん」だと思っている。僕は指でひらがなを一つずつ指しながら「こ、ん、に、ち、は。」って読むんだよと説明した。「は」は「ha」とも発音するけど、挨拶の時は「wa」って読むことも言うと、「なんだそれー面白いね!」と二人は笑った。色々な国の言葉の形を観察すると、ひらがなって独特の形をしているなと思った。
掲示板に日本語が貼られたことで、教室ではちょっとした日本ブームが沸き起こった。日本語や日本食が話題にちょくちょく上がった。「かわいいも日本語だよね!」とエンミ先生。日本食の話題では僕は「一番餅が好きだ!」と言った。2年生のクラスメイトのナターリアは「私は世界で一番寿司が好き!」、アランは「うどんが好き!」と言ってくれた。するとすかさず、エンミ先生が「日本食と言えばお好み焼きじゃない!?」とみんなで日本食の話で盛り上がった。
学校の帰りに玄関でコートを着ていると、隣に漢字が書かれた服を着ている男の子がいた。高学年っぽかったけれど、「それ漢字で花って意味だよ。僕日本人なんだ。」と思い切って話しかけてみた。「え?そうなの?知らなかった。」と男の子は笑った。そして、「じゃあね。」と挨拶をして僕たちは別れた。小学校ではたまに漢字やひらがなが書かれた服を着ている男の子がいる。サッカー仲間のメフメットもたまにカタカナが書かれた服を着ている。しかも、彼の場合はなぜか日本に詳しくて「こんにちは。」と僕に向かってお辞儀をすることもある。嬉しいな。なんだか親近感がわく。
フィンランドの音楽ヒットチャートを見たお母さんがBeast in Blackというフィンランドのバンドを見つけたのだけれど、彼らのプロモーションビデオにもたくさん漢字やカタカナが出て来ていた。しかも、彼らは「One night in tokyo」という歌も出している。日本語が書かれた服を着ている男の子たちはもしかしてBeast in Blackに影響を受けたのかな。