仕事場の客だまりに財布が落ちていた。よく使い込んだショッキングピンク(想像しにくいか。。。)の両手くらいのやや大きめの、財布。
ちょうど、私の受けたお客さんだったし、そんなヤングな色遣いの財布を60代位の女性が使っていたものだから、印象深くて、すぐに顔が思い浮かんだ。しかもそのお客さん、私を何度も見、ありがとうありがとう、ととても丁寧な方だったので、なおさらだった。すぐに連絡を取ろうと試みるが、留守。
四時過ぎくらいにようやっと、電話がつながる。
よかった!
「おさいふ。。。お忘れにならなかったですか?」
「え?あ!!・・・・・・・ない!!」
・・・ま、まじですか。聞くと、財布は二つ持ってたので、銀行を出てからも、なんら困らなかったという。・・・でもさぁ。
すぐに、来てもらって財布を手渡すと、「ありがとうありがとう」と、またまたお礼の嵐。聞くと、その財布、娘さんからのプレゼントで大切にしているものだった。
「あんた、そんなにきれいで、やさしくて、そんな子はいないよ!!窓口でも税金納付で来てるだけなのに優しいから見てたのよ!!ほんとにありがとう」
おせじも最高級のものを見せてくれる。つい口元が緩みそうになるのをこらえ、
「いえいえ」と、謙遜。
こちらにしてみれば、そりゃあいたって当然のこと。普通のことをしただけ。なのに、おなかいっぱいいいことを並べてくれて、気持ちいいのを飛び越えて、なんだか悪くなってきた。
「ほんとうに、大丈夫です。あなたのもとにお財布が戻って、それがうれしいですから気になさらないで下さい」
すると、
「じゃあ、預金するわ!!」
の、一点張り。明日月掛をすることを約束して、お帰りになった。
親切でファンになってくれたのはとってもうれしい。
今回みたいなケースはなんだか「みかえり」を要求しているみたいになるのが嫌だったし、ただ、当然とった行為に、色も付けたくなかった。だから、ほんとに、お客さんの行動に任せた。
ぴんぽぉ~~ん。
なんということか、数十分後、彼女はお気に入りのパン屋で購入したパン数十個をぶら下げて戻ってきた。
「こ!こんなに・・・!!いただけませんよ!!お気持ちだけ!!」
「あたしの気持ちだから!」パンパンに膨らんでいるそのおいしそうなパンは彼女の今の気持ちそのものだった。
そしてまたおいしそうな匂い・・・・
負けた。。。。気持に・・・いや、匂いにも・・・・
今一度、明日来ることを約束。その後職員でありがたく頂いた。自慢のそのパンは、戴きものというせいだけではなく確かにおいしかった。
明日お礼を言わなくちゃ。いただいた職員全員がそう考えていた。
そして次の日。
彼女はこなかった。
その次の日も。。。。。。
なんだか、いろんな気持ちが渦巻いた。
律儀な彼女は来づらくなったのだろうか、それともただ単に忙しいのだろうか、それとも、考えてみたら、パンでトンとん?!と、思い直したのだろうか…
なんにせよ、私の心を、やや奪っていることには間違いない。
約束・・・・やっぱりそれは、どんな形であれ、心は乱れます。週明け・・・彼女は来るのだろうか。預金はぶっちゃけどちらでもいい。このもやもやを吹き飛ばすため、そう、あなたに会いたいですぅ…