マイペースで料理上手なネコシェフ

疲れた心にそっと寄り添う物語。

 

 

一匹のサバトラ柄の不思議なネコを軸にした連作集です。

 

・専業主婦の千晶は、夫・涼馬と高校生の娘・梨央と暮らしている。就職サイトでエントリーし面接したが、商店街を歩いているとき不採用の通知が来て頭を抱え‥

「どうしたらいいのかわからない」

「たら?鱈ならあるよ」

サバトラ柄のネコが二本足で立っていた。料理上手のネコシェフがご馳走してくれる。

 

・カフェ店長の単衣が10年前に付き合っていたのは妻子持ちの男・涼馬。今は以前の店長と付き合っている。店のスタッフもその店長と交際している‥

「こんな自分から抜け出したい」

「たい?鯛めし作ってやろうか」

嗄れ声のサバトラ柄のネコの声がした。

 

・高校生の梨央は、仲のいい心羽と千砂にも本心を出せない‥

「開き直れたらいいのに」

「開き?アジを開いてアジフライにするか」

一匹のネコが二本足で立っていた。

 

・比呂乃は、娘・千晶夫婦のことを案じている‥

「このまま寝込んじゃいたい」

「ねこまんまがほしいのか?」

サバトラ柄のネコがいた。

 

・千晶の同級生の雛菊はデザイン事務所で働いている。思うようにいかない仕事‥

「〆切りに間に合うだろうか」

「〆?サバをシメて鯖寿司か」

明晰夢だろうか、サバトラ柄のネコが雛菊を見ていた。

 

 

美味しいお魚ごはんを振る舞う料理上手のネコシェフとは、いったい何者でしょう。ぶっきらぼうだけど美味しい料理に、気持ちが柔らかくなっていきます。

 

それぞれの主人公が、それぞれ悩みやストレスで疲れ果て、にっちもさっちも行き詰まった時に現れる蜃気楼のようなネコ。そっと肩の荷を下ろしてあげて、進む道を照らしてくれる感じでしょうか。

 

波の音が響く誰もいない海辺、嗄れ声で疲れた人たちを癒すネコ。みんなの心の中にもいるのかもしれません。