第100回オール讀物新人賞受賞作
文化期の浅草。天涯孤独のおせんは今日も高荷を背負って江戸中を振り売りして歩く
をりをり よみ耽り
「貸本屋梅鉢屋」おせん24歳は貸本を背負って得意先を回り商売しています。いつか店を構えたい夢があり、仕事の合間に写本もしています。
おせん12歳の時、父は挿絵などの版板の彫師でしたが、禁書に携わったことで御公儀同心たちに襲われ仕事ができなくなり自死。母は他の男と逃げた。だれかが密告し、はめられたのか?
板木どろぼう
取引先から版板が盗まれた。おせんが盗人の見当をつけて探ると意外な犯人でした。
幽霊さわぎ
夫を亡くした不倫妻の相手の男を殺したのは、夫の亡霊だという。
松の糸
商家の色男若旦那が惚れた娘は出戻りだった。源氏物語の「雲隠」を見つけてくれたら一緒になっても良いと言うが、幻の本、あるはずがない。
火付け
吉原で火事騒ぎがあり、妓楼が仮宅に越してきた。事情を知っているらしい女郎が逃げ出した‥
貸本屋のおせんは、あちこちの店に出入りし親しくなり内緒の事情を知り、揉め事を解決に導きます。内情を調べているうちに危険に巻き込まれ襲われることもありますが、毅然と戦います。事情によっては小さな悪を逃す柔軟さもあり理解が早い。
明るくおきゃんな江戸町娘ではなく、深い影のある江戸っ子姐さんです。度胸が据わっていて男に脅されたくらいでは引かないし、セクハラ・パワハラにも立ち向かっていく一匹狼な鋼鉄の女。
貸本屋は裏道をいく商売だ。
若い女がひとりで、行商のような貸本屋をしている生き方も新鮮です。その貸本屋の名が『梅鉢屋』という、梅です。

