魔女として殺された最も有名な人は、
フランスの英雄、聖女ジャンヌ・ダルクだろうか。
当時、フランスはイギリスと百年戦争の真っ只中だったのだが、
フランスは連戦連戦、負け続きだった。
そんな時、神様の啓示を聞いたという少女が現れたのである。
ただ、そうは言っても、たった17歳の女の子に何が出来るというのだ!
神様の声を聞いたというのも、きっと嘘に違いない。と王太子たちは思った。
そこで王太子たちは、これから会いに来るというジャンヌを、
本当に神のお告げを聞いた神がかった人物なのか試す事にしたのである。
王太子であるシャルルが本来座っている場所に、違う者を座らせ、
自分は椅子の陰に隠れた上にわざと貧相な服を着て、一般人の恰好をして見守った。
ところが、現れたジャンヌは、見事にこれを見破って、
一般人に紛れ込んでいたシャルルを言い当てたのである。
しかも、あなたはいずれフランス王になると予言したのである。
これに驚いた王太子シャルルは、ジャンヌを部隊に参加されることをした。
すると、それまでイギリス軍に負け続きで、
現在もすでに7ヶ月間もイギリス軍に包囲されて陥落寸前だったオルレアンを、
ジャンヌが参戦すると、わずか10日間で包囲網から解放する事に成功したのである。
しかも、その後も次から次へと奪われた砦を取り返していってだけではなく、
首に矢をうけたのにジャンヌは死なずに戦い続けた事から、兵士たちは、ジャンヌはやっぱり神の使いなんだと信用し、ジャンヌを、
「オルレアンの乙女」と呼んで熱狂的な支持を得たのである。
そしてこの快進撃により、シャルルは正式にフランスの王シャルル7世となり、
ジャンヌの予言は的中したのである。
ところが、この勢いでパリをも陥落させて
勝利を完全なものにしようと訴えたジャンヌに対して、
フランス王になったシャルル達は、この辺でもういいだろう、と内輪もめを始めた。
そして、フランス軍が内輪もめで休んでいる間に、イギリス軍の援軍が駆けつけるのだった。
援軍を得て盤石だったイギリス軍に、なおも戦いを挑んだジャンヌだったが、捕虜になってしまう。
この頃の戦争は、紳士的な戦争だった時代で、捕虜になった相手の兵士は、
お金を出せば返してくれるのが習わしだった。
つまり、シャルル7世がお金を出せばジャンヌを助け出すことも可能だったのだが、
シャルル7世はお金を出さなかった。
後に、シャルルはジャンヌに王にまでしてもらったのに見捨てたと責められた。
一方、ジャンヌを捕らえたイギリス軍も、ジャンヌを殺せないでいた。
特に処刑する理由が見つからなかったのである。
そこで考えたのが、ジャンヌが魔女だという事にして殺す事だった。
「お前は、魔女だろ!」
「女が戦場で戦うなどトンでもない奴だ!」
「男装する女など、怪しからん奴だ!」
「神の声を聞いたなどとウソをつくのは魔女に違いない!」
どんなに責められても、大人たちに対して言い負けしないでやりあったのだ。
こうして、ジャンヌを魔女だと決めつけることも出来ず、処刑出来なかった。
そんなある日、ジャンヌが閉じ込められていた牢屋に、宗教裁判を担当していた聖職者がやって来て、ジャンヌにこう言った。
「ジャンヌ、よく頑張ったな、若いのに立派だったよ。これにサインすれば、もう君は明日には自由の身だよ」
ジャンヌは聖職者にお礼を言ってサインをした。
しかし、宗教裁判を担当していた聖職者はイングランドの手先になっていたのである。
ジャンヌが文章を読めない田舎者だというの利用して、
私は魔女です。という宣誓書にサインさせたのである。
ジャンヌは大人達に騙されてしまったのだった。
これによって、ジャンヌ・ダルクは魔女として火刑となり、
灰になるまで何度も焼かれ、その灰はセーヌ川に流されたのである。
フランスの英雄、ジャンヌ・ダルク、
享年19歳。





